「サンタクロースって、何だか知ってる?」
小さな女の子同士の集合の中で、突然、この言葉が現れ出た。質問を投げ掛けられた側は、“謎掛け”に違いない、そう、誰もが受け止めたにせよ、何故、このタイミングなのかが察せられず、戸惑い、瞬き程度の動きすらも止まってしまった。唯、質問を向けた一人は戯けた様子も無く、真剣な面持ちだった。
「え? それは、、、、知らない人が居るかも知れない、という想定を以て、訊いてるの?」
質問を受けた側の一人が慎重に気遣いながら、恐る恐る、聞き返した。
「やっぱり、皆、知ってるんだね・・・」
気遣われた感じから、質問者は悟って、自らが結論を下した。
「ひょっとして、知らなかった、、、、とか?」
漸く、一人が核心に触れた。
「うん・・・」
質問者の返答に、彼女以外の一同は、全員、抑制された驚きを見せながも、又、一応の疑問が解けたので、安堵もしていた。
「でも、何で、この時期に、そんな確認?」
“何故、サンタクロースを知らないのか”の理由よりも、“脈絡も無く、何故、この質問を打つけなれけばならないのか”の意図について、少々、ひねた方向から、一人の女の子は興味を抱いたらしい。
「昨日、お父さんが使っている地下室に、こっそり入ってみたんだ。立ち入りは禁じられているんだけど、、、、この時期になると、毎年、お父さん、地下室に籠りっきりになって、年が越えるまで、あたしに構ってくれなくなるし・・・、寂しいし、何でだろうって・・・、我慢できなくて、お父さんが出かけている隙に・・・。そしたら、中には、沢山の玩具と、色んな種類のラッピングペーパーとリボンが在って、、、、壁には、温かそうな赤い服が幾つも掛けられていて・・・」
話の途中だったが、一同は、ある程度の予測を元に、早く、結論に行き着きたくなって、ひそひそし始める。
「それって、、、、まさか・・・?」
一人は、相手の言葉を遮ってしまう。
「ちょっと待って、、、、あなたの家では、クリスマスのお祝いはしないの?」
今や、話題の中心となっている女の子は、幾分、後ろめたそうに答える。
「赤い服の事で、色々、調べている内に、12月25日、、、24日? のイベントについても、初めて知ったの・・・」
「イベント、、、、間違いじゃないけど・・・」
「お父さんが、そういう、ビジネス関係の仕事なんだよ」
「だったら、隠す必要は無いんじゃない?」
「それに、幾らなんでも、こんな時期から準備しないでしょ? 一人で遣ってんなら、別だけど・・・」
「あの、、、、お父さんの、表向きの仕事って何?」
一人が痺れを切らし、プライベートな領域に踏み入った。
「一度、聞いた事が有るけど、、、、何か、世界中の子供達に、贈り物を届ける仕事なんだって・・・」
一同、沈黙・・・。やがて、それを、一人が破る。
「え? サンタクロースについて、その辺りの事は、全然、詰めてきてなかったの?」
騒動の首謀者は、無頓着に答える。
「ん? だから、“サンタクロースって、何だか知ってる?”って・・・」
そりゃあ、サンタクロースの家では(家族が在っても)、クリスマスを大々的に祝う事は無いのかも、、、、サンタクロースを演じてくれる人が居ない訳だしね(盛り上がらないもん。その日、父親が居ない事の、合理的な説明をするよりは、最初から、クリスマスイベントに関して、一切、無関心を装った方が楽ですし)。
え? 学校に通っていれば、クリスマスに関しての情報を、一切、知らずにいるのは有り得ない? 不自然? でも、実際、僕がそうでしたけど・・・?