はじめに、私はパニック障害を克服したというわけではないです。
ただ、克服に限りなく近づくことはできたかな、というだけです。
ほぼほぼ薬を飲まない状態で数年、パニックにほとんど悩まされることなく仕事を続けていたんですが・・・
現在、数年間続けた仕事を数か月前に辞めて、なんと辞めることによって、逆に生活リズムが極端に乱れ、鬱とパニック障害、予期不安が再燃してしまったという形。
これは予想外で仕事という労働のツラさから離れることによって、心の安定を手に入れられると思ったものが、まるで逆という。
不労状態を安楽に過ごすことができず、逆にツラい生活を送っているという、もはや笑うしかない状態です。
現在、パニック障害を治すということを目標に、失業保険をもらいながらのリハビリ生活となっています。次の就労に向けての準備期間といったところでしょうか。
ひとつ言えるのは、つらい労働から解放されたからといって、それが必ずしも心身の安定や幸せにつながるのかというと、必ずしもそうとはいえないということです。
この際、治療に専念して、治療のためにできることはやってみたいという気持ちで過ごしています。
そしてここでは、この2か月ほどで、インターネットや書籍から集めた情報を元に、自身の20年にも及ぶパニック障害の経験談から考えた、パニック障害克服方法を研究していこうと、私の考えのまとめを書いていこうと思った次第です。私見も存分に入っていることをご了承ください。
とはいえ、これだけは言っておきたいです。
なにも病気を完全に克服することが全てというわけではありません。
要は病気をもっていたとしても、総体として人生を楽しく過ごせていたらそれでいいわけです。
克服することに越したことはありませんが、まあそういうことです。
では、パニック障害の克服までについて、この数か月に収集した情報と、自身の20年の経験談から克服までのアウトラインを書いていこうと思います。
まずパニック障害を克服するために、最終的に最も必要な要素として、私は「脳の自立」が重要だと思います。
経済的自立もさることながら、もっとも大切なのは脳の自立です。
脳の自立とはどういうことのなのか。
ここでいう脳の自立とは、薬物を使わなくとも、自力でセロトニンなどの脳内物質を安定させることが脳の自立ということになります。
我々は、もともと薬なしでも正常に生きてこられたからです。
それがある日、パニック障害になることで薬が必要になった。
もともと我々は、薬なしでも発作は起こらず、鬱状態にもならず、不眠にもなっていなかったはずなのです。
このように私の中のパニック障害の克服は、薬のない状態、「脳の自立」が最終目的となります。
とはいえ、私は昔の脳みそに戻ることはもはや不可能だと考えています。
脳は常に変化を起こしているからです。
そこには不可逆的な部分もあります。
一度覚えた不安や恐怖は、完全にもとには戻せない。
脳を元に戻すという表現より、脳に上書きする、という表現が正しいと思います。
一度学習してしまった不安や恐怖の上から、新たに不安や恐怖を感じなくて良い情報を学習させてやればいいのだと考えています。
つまり、不必要な不安や恐怖を感じなくてもいい脳を新たに作り上げるのです。
パニック障害・予期不安の克服には、3つの段階が必要だと考えます。
①脳内物質の安定化
②苦手場面の克服
③段階的減薬
この3つのプロセスをえて、パニック障害の克服は進んでいくと考えています。
まず土壌となるのが①「脳内物質の安定化」です。
これができていなければ、まず準備段階に至っていないと考えます。
①がキチンとできていなければ、②「苦手場面の克服」の場面で簡単に 予期不安→パニック発作 と至ってしまうからです。
①が安定化したうえで②に取り組まねばならない。
①を達成させるために、中心的になるものは、自分の脳内物質であるセロトニンを主とした、ノルアドレナリン、ドーパミン、エンドルフィン、GABAなどの物質です。
これらの脳内物質を整える必要がある。
特にセロトニンは幸せホルモンとよばれ、放出することで幸せな気持ちになれます。また他の脳内物質の量も調節するといった、最も重要な脳内物質といわれています。
セロトニンは「日光」「リズム運動」「咀嚼運動」で刺激され、放出が活発化する。
医学博士でセロトニン研究の第一人者:有田秀穂先生はそうおっしゃっています。
パニック障害患者の第一選択薬となっているSSRIは「選択的セロトニン再取り込み阻害薬」とよばれており、いかにセロトニンがパニック障害に関係する脳内物質かということがわかると思います。抗うつ効果にも非常に関係します。薬名でいえば、パキシル、ジェイゾロフト、レクサプロ、ルボックス、デプロメールなどが有名ですね。
まず①「脳内物質の安定化」です
①を達成するためには、薬物療法を中心とした、規則正しい生活、運動を行うことが重要です。
なんだ、また目新しいことのない、よくある普通の治療法だなと思うかもしれません。
めっちゃ普通です(笑)
しかし、この普通が本当に効果あるんです。
昔から繰り返し言われてきたこと、そこにはやはり意味があるんですね。
これに勝るものは無いと思います。
この20年間の経験からも、そして最近特に思います。
私は仕事を辞めてからというもの、生活の不規則、運動をしなかったことによって、一気に悪化しました。
本当に痛感しております。
ところが反省して、この2か月くらい私は薬をしっかり飲み、早起きして朝散歩をはじめました。
これが本当に非常に良い。
ほんまか!?ってくらい改善してきました。
特に朝散歩の威力はすごいですね。
私は半分ランニングで半分ウォーキングといったかたちで行ってます。
朝の日光の光を目から吸収することによって、脳内のセロトニン器官が活発化します。
プラス思考になってシャキっとするイメージですね。
朝日にはそういう効能があります。
精神科医で有名な樺沢紫苑先生は、だいたい15分から30分の朝日の下での散歩で十分に効果が出るとおっしゃっています。
そのことによって脳内のセロトニン器官にスイッチが入るそうです。
また、週に3回程度の朝散歩でも良いらしいです。
もちろん数多くこなせば、それだけ効果があることでしょう。
散歩が終わったら、または散歩の途中からでも、不安や抑うつ傾向が弱まっていることに、多くの人が気づくことでしょう。
ただ散歩を始めだして、1日で効果を味わえるようになるかといえば、それは難しいかもしれません。(私はたまたまなのか、1日目から効果を感じましたが、そこは病状の程度や個人差によって違うものだと思われます)
週に3回程度でもいいから散歩を始めだし、10回目の散歩くらいになるまでに、次第に効果を実感しだしてくるはずです。
ただ病状が良くなくて、セロトニン量が極めて少なくなってしまっている人は少し注意です。1時間以上とか朝散歩して疲れてしまっては、脳内のセロトニン器官が疲れてしまうので、逆効果になりかねなく、そこは注意だということです。
また、朝の光を目に受けることで、体内時計がリセットされることによって、放出されたセロトニンを触媒にメラトニンという睡眠物質が夜に活発化し始めます。つまり朝散歩するだけで、生活リズムまで自然ともとに戻ってしまうわけです。一粒で二度おいしい。
さらに、薬物効果と運動は相乗作用を起こすということで、さらに病状が改善しやすくなります。
散歩というリズム運動を含めた朝散歩は、非常に効率が良い行動だということがわかると思います。
そして、人間の習慣というものは、だいたい3か月ほどで安定化・定着するといいます。
定着化したら、面倒なことも面倒と思わなく、普通に一日のリズムとして、起きたら外に出ていることでしょう。
規則正しい生活と運動も、脳内のセロトニン器官も、だいたい3か月行うことで安定化・定着を実感するということです。
筋トレして、だいたい3か月をめどに筋肉が定着しはじめるというイメージと似ていると思います。
そして②「苦手場面の克服」です
②の目的は先に述べたように、苦手場面が、実は苦手ではないと脳に上書きしてやることです。
成功体験の再学習を積み重ねることによって、苦手場面を克服する新たな脳を作り上げます。
①「脳内物質の安定化」を達成することによって、日常生活で予期不安や発作がだいぶ遠のいていることに気づくことでしょう。
しかし、①を達成しただけで克服できているわけではないのです。
これはあくまで下地です。
①の達成が前提で、次は②「苦手場面の克服」に臨みます。
ただし②を行う際には①と並行して行うことを強くお勧めします。
①が安定していないと、②が安定して行えず、難航することも考えられる上に、逆にマイナスに働くこともありえるからです。
②「苦手場面の克服」は、われわれパニック障害患者が攻略すべき本丸といえるかもしれません。
「広場恐怖、場面恐怖」に向き合います。
「広場恐怖症とは、強い不安に襲われたときにすぐに逃げられない、または助けが得られそうにない状況や場所にいることに恐怖や不安を抱く状態です。多くの場合、そのような状況や場所を避けたり、多大な苦痛を感じながら耐えたりします」(MSDマニュアルより引用)
時間的・空間的に拘束されている状況において、不安や恐怖を伴うことですね。
この苦手状況は「電車内、船、飛行機、歯医者、美容室、会議、面接、会食」などの場面が多いと思われます。
そして広場恐怖には、「他人に見られている、他人に迷惑などをかける」ということが拘束と感じ、苦手場面として深く関係していることが多々あります。
重症化すると、「コンビニやスーパで会計できない、外に出られない、部屋から出られない」など悪化しえます。
私もそういう状況になったことがあります。
部屋の天井をぼーっと見つめ、ふるえて眠ることしかできない。食事がほとんど喉を通らない。などです。
なんとBMIが13.89という値を示し、死ぬかと思いました。
これはもはや広場恐怖という段階ではなく、生きているだけで恐怖です。ここまでなってしまったとしても、①「脳内物質の安定化」の項で述べたようなことを行っていくことで、ある程度は必ず改善してくれます。私がそうですから。
では「広場恐怖」はどうすれば克服できるのでしょうか。
これは20年間いろんな療法を試してきましたが、ほとんどの場合は対処療法にすぎず、根本的に改善させていくためにはもはや一つです。
それは「曝露療法」です。
曝露療法とは、不安の原因になる刺激に段階的に触れることで、不安を消していく方法です。つまり簡単に言うと、不安が伴う場に慣れていくということです。
かなしいかな、もうこれしかないのです。
曝露療法は痛みは伴うけれど、結局は遅かれ早かれ、ここにたどり着くことになろうと思います。
後延ばしにしたら、症状の期間が延びるだけで、結局はこれです。
どうせ行うならば早いほうがいいです。人生は有限ですから。
私はパニック障害を克服した、もしくは寛解したという多くの方にお話を伺ってきましたが、だいたいほとんどの方が曝露療法を機に良くなっている人ばかりです。安静にしたままで克服した人というのは一人も知りません。治った人はなにかしら曝露療法に関係した行動を行っている人でした。
以下は極論でファンタジーですが想像してみてください。
「あなたは船に広場恐怖を感じる人です。ある日、長い船旅に出なければなりません。世界がほとんど沈没してしまったから船旅をするしかないのです。最初の1・2週間は強い予期不安におそわれ、パニック発作を繰り返すことでしょう。
ところが1か月、2か月と船の中での生活が続くことで、あなたは発作の頻度が減り、次第に船への広場恐怖は治ってしまっていることでしょう。」
人は良かれ悪かれ、「慣れ」「適応」という性質を持っています。
神様が与えてくれた、「慣れ」という人間の特技を使わない手はありません。
乱暴に言うと、この「慣れ」こそが曝露療法の根本といえるわけです。
ただし、治療として行うためには、必ず段階的に難度のレベルを定めて、難度の低い行動からはじめてください。
荒療治で強制的に難度のきついイベントに向き合うことも、人生にはあることでしょう。
生きていれば災害や事故、試験や面接、手術、歯科治療、結婚式、嫌でも行わなければならないこともあります。
それらを乗り越えられればいいですが、乗り越えられないときは心的ダメージとして、手痛いダメージを受けることもあるでしょうから。
成功したときは最強の経験値となるでしょうが、失敗すればトラウマになりかねません。
だから曝露療法は計画的に、難度の低いレベルからできるだけ多数行って、小さな成功体験をたくさん集めて、徐々に難度の高いものへと挑戦することが望ましいでしょう。
始めるにあたってオススメな方法は、まずはイメージトレーニングです。
体が少しでも調子がよく、余裕があるときに行うのがいいと思います。
苦手場面を具体的に想像し、自分がその場所に行っていることを想像してみてください。
それだけでも気持ちが悪くなるかもしれません。
ですが、それを数日にわたって想像することで、ある日「あぁ、今日なら実際に行けそうかも?」と思うときが来る瞬間があります。
私は「瞑想」や「朝散歩」を行いながら、脳内のセロトニンスイッチが入ったときイメージトレーニングを行うようにしてます。
始めたころは「これはキツイわ!」となることが多かったです。
ところが、徐々に「今日なら行けそうかも!」ってなる頻度が増えてきていることに気づきます。
そして、そのときの不安の強度を1~10段階くらいで定めてみて、「今日は不安レベルが4くらいだった」とか、「今日は電車に一駅なら乗れそうだ」とか、実際にノートに書き残してみてください。
実際に書き残すことが大事です!
精神科医・樺沢先生によるところの「アウトプット」というやつです。
イメージトレーニングをしていて、あまり気持ちが悪くなることが少なくなって自信がついてきたら。
次は行けそうなタイミングを見計らって、実際に行動してみます。
たとえば電車に乗ることが苦手な人の場合だったら
レベル① 最初は駅に行くだけ。それで家に帰る。
レベル② 次は駅の構内に入ってみるだけ。それで帰ってくる。
レベル③ 次は駅の改札口まで。
レベル④ 次は駅の改札の中に実際に入ってみる。
レベル⑤ 次は駅のホームで行きかう電車を見続けるだけ。
そのように段階を自分で決めて行動してみてください。
難易度を1~10くらいまで、細かにレベル分けして、行けそうなタイミングでその難易度に挑戦してみる。
そして家に帰ってきたら、その模様をノートに書き残してください。
『今日はレベル4「駅の改札口まで」に挑戦した。若干心臓が高まり、呼吸が乱れてきたので引き返してきた。』
という具合に書きます。
書くことで、実際に頭の中で、自分の状況がまとまってくるし、自分が今どの治療段階にいるのか、ハッキリと認識することができます。
また書き残すことで、自分がチャレンジしているんだという実感が得られます。
自分が努力してきた過程が、目に見えるカタチとして記録されていることに、強い実感を得られます。
そして、自信と誇りが生まれてきます。
ノートを見返すたびに、「私はチャレンジできている!えらい!」という風に自分を褒めてあげてください。
挑戦できていることがすでに偉大なんですから。
次に必要な課題も見えてくるようになります。
自己洞察が深まっている自分に気づくことでしょう。
私の場合は、ホームでずっと行き交う電車を見ていて、何度も何度も電車を見送っているときに、ある日「あぁ、今のタイミングなら乗れそうだ!」というような、そんな瞬間がなんとなく訪れました。
実際に乗ってみたら、意外となんともなく乗れてしまったのです。
乗れるときは、意外とあっさり乗れてしまうものです。
このときの喜びたるや、何物にも代えがたいものがありました。
大事なのはその挑戦心です。
とはいえ、決して無理するのは避けてください。
無理だと思ったら、レベルを下げて、またできそうなことからやっていく。
私はその繰り返しでした。
必要なのは「小さな成功体験を積み上げていくこと」なのです。
これは認知行動療法の基本です。
とここまで述べてきましたが。
一方で違う選択肢があることを視野に入れることも、必要だと思います。
対象となる広場恐怖を克服する必要性が低い場合です。
その広場恐怖の対象が、あなたの人生にとって、ほとんど対峙することがない場面であり、低頻度な場面であるなら、無理して心労を重ねてまで曝露療法に取り組む必要はないと思います。
電車に乗るのがダメなら、クルマに乗ればいい。
飛行機がダメだとして、一生飛行機に乗らなくても余裕で生きていける道もあるでしょうから。
代替方法があるならそれを選べばいい。
最初に言いましたが、人生は総体として幸せであればいいからです。
※ ②「苦手場面の克服」は、①「脳内物質の安定化」と並行して行うことが望ましいです。①が不完全ならすぐにつまづいてしまう要素となりえるので注意が必要でしょう。
そして最終段階として③「段階的減薬」です
最初に書いたように目的はパニック障害の克服であり、「脳の自立」を取り戻すことにあります。
パニック障害を初めて起こす前は、薬もいらなかった自立した脳であったはずです。
私たちの脳は自力で安定した脳内物質を産生させていたはずなんです。
自然と本来できるはずなんです。
その自然の力を取り戻します。
ただし、①「脳内物質の安定化」と、できれば②「苦手場面の克服」とを並行して③を行っていくことをお勧めします。(投薬状況以外)
また、減薬には細心の注意が必要です。
脳をだましだまし、薬を減らしていかなければならないため、医師の指示・協力のもと、減薬を成功させていきましょう。
医師と相談し、薬の調整をしてもらいましょう。
急に減らしたら、脳に減らしたのが感づかれ、手痛いしっぺ返しを食らうからです。
これには私もそうとう悩まされました。
半錠減らしただけでも、ものすごく禁断症状が起こってしまう薬もあります。
特にベンゾジアゼピン系列のお薬がそうですね。
したがって、1錠を4分の1錠にしたり、6分の1錠に割ったりして少しずつ減らし服用します。
月単位、年単位でだましだまし減らしていくくらいで良いでしょう。
ネットでお薬を切るためのピルカッターが売ってますので、それをご利用ください。
無理がない減薬をすれば、体は適応していくはずです。
ただ例外はあって、たとえば、会社で強いストレスにさらされたとか、長期旅行などイベントがあって不安に思う場合は、迷いなく頓服薬を飲みましょう。
そのためにも、もしものための頓服薬を処方してもらっておきましょう。
そうじゃなくても、体調に異変を感じたときは、躊躇しないでお薬を増やす覚悟も大事です。
失敗して、激しい発作を起こしてしまい、せっかくの治療段階が大きく引き戻されることもありえるからです。
とはいえ予期不安や発作が起きてしまっても、そんなにショックには考えないでください。
治療過程では、必ずと言っていいほど不安定な波が来るし、それを何度も乗り越えないといけないからです。
身体的な病気と違って、精神的な病気とは、直線グラフで良くなることは、ほぼほぼ無いからです。
必ずといっていいほど、まるで経済の景気の波のように、ゆっくりとグラフ曲線が上がったり下がったり、波のように繰り返すからです。
それを繰り返すことによって、グラフ曲線は底上げされていき、安定した波へと変化していくイメージですね。
だから不安定な波が来たときは、「よし、不安定な波来たな~、でも想定内や!」てなぐらいに考えてください。
我慢しながら減薬するのではなく、自然に負荷なく減薬することが肝要なのです。
慎重に時間をかけながらでも、ときどき再発するときもあるでしょう。
そのときは躊躇なく薬を増やしてください。
もちろん医師にも相談するようにしましょう。
長い減薬生活の中で、症状が全く出なくなっていけば、脳が自立してきたといえるのではないでしょうか。
段階的減薬によって、薬の副作用である肝臓の数値も良くなっていくでしょうし、性機能障害なども良くなっていきます。
体重が適正体重に戻りやすくなる人もいるでしょう。
病気が治るから幸せになるとは限りませんが、症状がなくなることは本当に嬉しいことです。
最後に
パニック障害を患って苦しんでいる方は多いことでしょう。
でも、パニック障害のマイナス面にばかり捉われる必要はないのではないでしょうか。
もしかしたら、プラス面もあるのかもしれません。
たとえば、私たちはパニック障害を患ったことによって、すでに「パニック障害を治す」という大いなる目的をもって生きていくことができると思うからです。
考えようによっては、目的をもたずに生きているような人生よりもいいかもしれませんよね。
目的意識をもつことは素晴らしいことです。
目的意識をもっているというだけで、きっと私たちの脳はすごく前向きで、良い脳内物質が出ていると思うのです。
身体障碍をもちながらも、イキイキと生活をおくっておられる人を見かけたことはないでしょうか。
私はそういう方々を数多く知っています。
パラリンピックに出場するくらいまでの人とかになると、その人たちすごく輝いて見えませんか?
すごくイキイキしておられるし、パラリンピックで活躍する、その目的意識のすごさ、人間的な強さというものに感動します。
彼らの根底には、障害を受容したうえで、目的意識を持って生きるという、人間の強靭さがあります。
おそらくそこには、障害受傷時から数段階もの試練を乗り越えて、自身の生き方を磨いてきたドラマがあるものだと思います。
ある意味、悟りの境地を経て、新たなステージに到達する精神をもっていると言っても過言ではないでしょう。
私も願わくば、そのようにありたいものです。
どうせ受けた障害なのならば、それをポジティブに自己成長に生かしていけたらと思います。
私たちパニック障害患者は、自身が最高の被験者であり、研究対象であるわけです。
予期不安や発作が起こっても、ただマイナスに感じ取るわけではなく、「なるほどー、こういう場面はこうなるのかー」てな具合に、むしろ治療研究のための良い材料がそろったと喜んでみるのはどうでしょうか?
自分が自分のパニック障害の一番の理解者であり、研究者なのだと。
発作が起きても、それを研究材料にして研究を進めていけたら。
自分で研究した行いで、病気が改善していったら嬉しいですよね。
大げさな話、もうそれが生きがいくらいに思い込んだらいい。
そう思い込んで生きたら、不安も多少休まるし、有意義に人生を送れるのではないでしょうか。
パニック障害は脳の病気といわれています。
とくに不安や恐怖を感じる場面でもないのに、不安や恐怖におびえてしまうスイッチが入ってしまう、脳の誤作動ともいわれています。
コンピューターでいうバグのようなものなのでしょうか。
過度な恐怖体験などが引き金になっている人もいるかもしれません。
誤った認識を正していかねばなりません。認識を正すには認知行動療法がそれですね。曝露療法も当てはまります。
要は脳の中で起こってしまっている現象であり、厳密にいえば脳内物質の乱れによって起こるものだと言えるでしょう。
健常な人でも、ドーパミンが増えすぎれば統合失調症のような症状が出ますし、逆に少なすぎればパーキンソン病のような症状が出てしまう。
パニック障害も脳の扁桃体が誤作動で興奮し、ノルアドレナリン・アドレナリンが過剰に分泌されることに原因があると言われてます。
健常な人が「乳酸」を注射したら、パニック発作が起きるという実験報告もある。乳酸は過労に伴い蓄積されたりする疲労物質です。
私たちはそういった脳内物質(脳内ホルモン)のさじ加減一つで、さまざまな病的症状に悩まされるし、あるいは人生における感動や幸福感を味わうことにも繋がります。
私たちの人生は、脳内物質に支配されている人生だといえるでしょう。
仕事や学業で集中したり、遊びでリラックスしたり興奮したり、本や音楽や映画に触れることで感動したり、恋愛で楽しんだり思い悩んだり、睡眠の時でさえも、喜怒哀楽からすべての活動にわたって脳内物質が関わっているわけですから。
だからこそ、私たちは脳内物質を逆に制御して利用してやれるくらいに、自己を高めていく必要があるのではないでしょうか。
脳内物質に振り回されて不幸に感じる人生ではなく、セロトニンなど幸福物質の恩恵を受けることで、豊かに感じられる人生に変えていくこともできるはずです。
そのためにはまず、「脳の自立」から手に入れて「脳内改革」を行い、より豊かな人生にしていきたいものです。
ともに「脳活」していきましょう!
みなさまと、ともに治していけたら嬉しく思います。