春が来た | ぱね便り(旧:V町便り)

ぱね便り(旧:V町便り)

スウェーデン暮らし12年目。おかしいな、いつの間にそんな時間が経ったのだ?と、毎年同じことを考えています。

スウェーデンに暮らしていて、春の到来を痛感するのは、朝っぱらからその絶叫で人々を叩き起こすあの白い迷惑な海鳥が姿を現した時である・・・

 

 

(これは去年の8月にハルムスタHalmstadで撮った写真。ハルムスタは海辺の街なので、彼らは年中そこに暮らしているはず。海辺の街なら当然よね。でもここね、内陸部・森林地帯のド真ん中なんですわ。なんでアンタたちが来るんだよう)

今年の春が突如出現したのは、3月24日(日)のことでした。

朝起きて、自分の部屋でコンピュータに向かっていたら、

キョワーキョワキョワキョワーキョーワー

という、あの独特の絶叫が聞こえてきた。

・・・・・
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・・・・・気のせいだったと思うことにしよう、と決めるぱね。そりゃもう、3月もおしまいで、次の週末は復活祭連休で、おまけに時計が夏時間に切り替わる。春分はもう過ぎてるし、ここからは6月の夏至に向けて、日はどんどん長くなっていくのだ・・

・・・・つまり、いやがおうでも、確かに季節は春なのだよ。

でも、あの白い春の使者は・・本当にただただ、うるさいだけなので、来なくていいんだよ・・

と、気のせいだと思うことにしてぱねがやり過ごしてから15分後。

今度は、

「・・・ウソだろう・・・ウソだよな・・・」

と言いながら、J兄が自分の部屋から出てきた。

そして、居間の窓から外を眺めている。

「なに?どうかした?」

と聞いてみると、

「・・・・・・聞こえたんだよ、アレが」

・・・・・
・・・・・
・・・・・

瞬時で悟るぱね。ああやっぱり、気のせいじゃなかったのか・・来たか。今年も。春が。orz

つまり、彼らの到来がB集落で確認されたのは先週の日曜日だったのですが、翌日の月曜日にV市内に出たJ兄によれば、V市内でもすでに彼らの姿は確認され、

さらにその翌日・火曜日に、今度はV町に出かけたぱね(今年の春学期は日本語講座が成立・開講されていたのだ)も、V町中心部で彼らの姿を確認。

本当に不思議なのだが、彼らはどこに出現するにしても、申し合わせたかのように「同時」に出現するように感じられるのだ。なぜなのだ?どうして春から夏にかけて、定住地(であるはず)の海辺を離れ、わざわざ内陸部の森林地帯の、人間が住んでる街中(まあB集落は町ではないが)にやってきて、ヒナが車にひかれるリスクを犯してまで道路の上で子育てするのだ?

彼らのヒナは、確かにモーレツにかわいい。しかし、ご両親の皆さんは、

ただただ、うるさくて、凶暴で、迷惑なだけなんですけどー!!(涙)

というわけで、春が来たのです。

スウェーデンの春を告げるもう1つの行事は、

轟音をたて、ホコリを巻き上げながら、道路の砂利を除去する特殊車両

の襲来。

冬の間、歩道に雪が積もると、そうした歩道には即座に細かい砂利が撒かれます。雪が凍りついてしまっても、砂利が顔を出していることによって、それが「滑り止め」になるという仕組みね。すなわち、冬の間、雪が積もった屋外を歩く全ての人間の靴(ブーツ)の裏には、この「滑り止め砂利」がびっしりくっつきます。スエの人たちは季節を問わず玄関では靴を脱ぎますが、特に冬の間、この「靴を脱ぐ」習慣がなかったら、家の中は大変なことになってしまったであろう・・と思われます。

で、春が近づいてきて、雪が消え始めると、歩道にはこの「元・滑り止め用砂利」がどっさり残されるわけです。それを除去するために、春の始まりには「砂利除去用特殊車両」が街中(集落内)を走り回るのだ。

V町に住んでいた頃も、この車がやってくると(たいがい、朝早くやってくる。スエの人たちは総じて早起きであるよ)あまりのうるささに飛び起きたものですが、

B集落でその車が走り回ったのは午後のことでした。

うちの目の前の道路を、

ゴゴゴゴーーーーー

といいながら、なんと5往復ほどした特殊車両・・・

なんでこんなに繰り返し来るんだ?迷子にでもなったのかっ?

と思ったけど、要するに、それだけ大量の砂利が道路に撒かれていたものと推測されます。

あの白い鳥の絶叫が始まって、砂利除去車両がやってきて、

そして、復活祭(イースター)。

水曜日にあった「家族イベント」で、復活祭用の簡単なデコレーション作りを学んできたぱね、今年は初めて、「復活祭の飾り」らしきものを作ってみました。 

 

 

普通は、卵型の何かとか、ニワトリのモチーフとか、色とりどりの羽根(特にこれが多い)を枝にぶら下げるのですが、ぱねは色紙で作ったぼんぼり(みたいなやつ)と、あとは折り紙作品(風船)、そして、数年前にLidlで買ったトリさんの飾り物をくっつけてみました。手先の不器用さと飾りつけのセンスのなさには定評のあるぱね。しかし、伝統行事を片っ端から無視し続けてきたぱねが、そもそも「復活祭の飾り」を作ってみようと思っただけでも偉いのだ!

これも、「家族イベント」に参加した賜物である。:-)

その「家族イベント」。ぱねは参加者の中で明らかに一番若かった。他の参加者は平均年齢70歳前後のみなさんでした。彼らは(年齢から判断して)ぱねのように「認知症の親がいる」わけではなく、おそらく、配偶者が認知症か、子供やきょうだいに重い障害・依存症があるか・・という感じなんだろうなと想像しました。この「家族イベント」は、お互いに身の上話をするわけではなく、「一緒に楽しい時間を過ごす」ためのもの。ぱね以外の参加者は、もうそれぞれ顔見知りみたいでした。そこに(白髪頭ではあるが)際立って若く(そりゃぱねだって70代の人から見たらまだ若い)、おまけにあからさまな外国人顔をしたぱねが飛び込んだわけです。ぱねも、話したことがある・会ったことがあるのは「家族コンサルタント」のカミッラだけ。

ぱねは「人見知り」だけは絶対にしないし、そもそもお年寄りの相手は得意(??)でもある。それに、目の前には「色のついた紙」が置いてある。

そうなったらアレよ。当然、アレを作ることになりますよ。:-)

というわけで、急遽、参加者の皆さんに「ツルの折り方」も伝授したぱね。みんな苦労しながらも、楽しそうに折っていました。

自分から積極的に「外に出る」ことは(必要がない限り)めったにしないけど、いざそれを「しなければならない」段になったら、「女優ぱね」が発動する+人見知りしない+人前でもアガらない、という特質を持っているおかげで、どうにかなるというのは本当にありがたい。それに、スエの人たちが平均して持っている「絶妙な距離感」は、まさにぱねにピッタリである。日本人ほど「しゃちほこばっている」(目上だの目下だの、敬語だの謙譲語だのetc)わけではなく、カジュアルではあるけど、お互いに「強引に踏み込まない」「グイグイしない」暗黙の了解があるのが、本当に快適。:-)

うちに帰ってきて、この簡単な色紙デコレーションを追加で作りながら、いい時間だったな、としみじみかみしめました。仕事のつながりでもなく、友人・知人でもないけど、でも、色々な困難な「問題」を家族に抱えた人たちが集まって、何かを一緒に作り、一緒にお昼を食べ、コーヒーを飲んでお菓子を食べながらおしゃべりして過ごした3時間半。参加費は無料。

税金てね、こんなふうに使うんだよ、って、やっぱり思ったのであった。