ご注意;幕間17 幕間17(続き) の関連話です

(ウンスが高麗に帰ってくる直前 ヨンが近衛隊員に惚気る話 ←酷いまとめ方)

 

 

 

 

 

 

「・・・・・っ」


彼自身 柄でもないことを言ったという自覚はあったのだが、小さく息をのんだようなそんな小さな反応があった方へと顔を向けると 彼の腹心と呼べる部下が 顔を真っ赤にしていた。
そのせいか、元々下がり眉であるものが 普段よりもより下がって ますます八の字に見える。


「なんだ? 聞こえたか?」


柄でもないことを言ったという自覚はあっても それを言った相手以外に聞かれたからと 照れるような性格ではない。
チェ・ヨンは 未だ顔を赤くしたままのチュンソクを伴って 奥の席に落ち着いた。


「・・・あのようなことを 大護軍が仰るとは 思いませんでしたので・・・」
「まぁな。柄ではないのは承知しているさ」


『俺の女の代わりには 妓生ではとてもなれない』


先ほど チェ・ヨンが若手の近衛隊員に言った言葉だ。
王のお傍を離れ国境に赴任していることで気が緩んでいたのか 若手(と思われた)が軽口をたたいていたので 鍛錬量を増やす代わりに『慰労会』だと宴会を開いてやったら 『無礼講』を言葉通りに受け取った若手が 不在だったチェ・ヨンを『妓楼に行っているに違いない』などと言い出したところに チェ・ヨンが居合わせたのだ。


チェ・ヨン自身は彼女の帰還を全く疑っていなくても 天門の向こうに戻ってしまったとされる天女を もう四年も待ち続けていることは 奇異というか一種の哀れみさえ覚えられているのだろう。
チェ・ヨンとしては 彼女自身の言葉と 彼女との最後の夜に受け取ったその覚悟を知っているため 全く疑ってはいないのだが、彼にはそのことを周囲に漏らすつもりはない。
だから ただ『四年経っても女を忘れられない情けない男』という ごく一部で囁かれている蔑称は 言わせておけばいいと思っているのだが、どこかで『彼女は自分のものである』という主張をしたかったのかもしれない。
それを 古くからの仲間であるチュンソクに聞かれたのは やや気恥ずかしくはあるが、それを表情に出すチェ・ヨンではないのだ。


「・・・もう四年にもなる」
「・・・はい」
「いい加減 俺も待ちくたびれた。 早く帰ってきて欲しいのかもな」
「大護軍・・・」
「まぁ、開京に嫁を残してきているお前も 今は同じ気持ちかもしれんな」
「テ、大護軍っ!」


チュンソクが 元武閣氏のソンヨンと婚姻してもうすぐ二年になる。
実は 北の国境地帯に行ったままの(直属の上司である)チェ・ヨンにちゃんと報告するまでは、と なかなか婚姻に踏み切らなかったチュンソクのせいで 一時は破談危機にさえあったというが しびれをきらした武閣氏の長であるチェ尚宮が 甥を直々に呼びに来て 一時的に帰京する算段をつけたのだ。
そうして チェ尚宮とチェ・ヨンを事実上の仲人として ようやくチュンソクとソンヨンは婚姻にたどり着いたのである。
付き合いは長かったようだが まだ新婚とも言える時期のため、『お前も遠距離だな』とチェ・ヨンは揶揄うことにしたらしい。


「・・・実直はお前の長所だが お前もあれくらいは口にすべきだな」
「さ、左様でありますか…?」
「ああ。 口が重いからと 言いたいことも言えぬことで 時間を無駄にした俺からの助言だ」
「・・・・・」


若手はガンガン飲んでいるため 比較的安い酒をあてがっているが、古参組はやや高めの異国の酒を ゆったりと口にしている。
琥珀色の蒸留酒は どこか彼女の髪の色を思い出させ チェ・ヨンの口を普段よりも軽くしているのかもしれない。


「・・・チャン・ビンやトルベに 幾度となく言われたのだ。 『素直になれ』とな」
「・・・・・」


天界へと続く天門などというものは 信じてはおらず、祈祷しろという腰ぎんちゃくチョ・イルシンのことを馬鹿にしていさえいた。
だが 天門は開き チェ・ヨンは王命によって 足を向けた。


青い渦の向こうは 正確には天界ではなかったようだが、高麗とはまるで異なる世界だったのは事実だ。
そこで 医員だという女人を無理にさらってきたのは自分だ、約束したのだから 帰さなければならない、と 自分に言い聞かせていたのだ。
・・・彼女に 彼女の気持ちを聞くことさえせずに。


もの言いたげな顔をしてきた者たちは多くいるが、チェ・ヨンに幾度もその話をしてきたのは あの二人だ。
その二人を失って ようやく自分の想いを告げることができたのかもしれない。


もっと早く想いを告げていたとしたら 今頃彼女は自分の腕の中で笑っていてくれたのだろうか? とは 幾度となく考える。
今の試練に負ける気はないが 時折『いつまで続くのだろう』と苦しくなるのも事実だ。


・・・だから 言葉を惜しむのは やめた。
面倒くさがりの自分は 多分彼女に関することだけ、という限定的なものになるだろうとは思うけれど。


「・・・早くご本人に お伝えできるといいですね」
「ああ、全くだ」


いつまでも待つという思いは偽りではないが 一刻でも早く会いたい。


チェ・ヨンはチュンソクの言葉に頷いて 琥珀色の酒をまた一口 飲んだのだった・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

猫しっぽ猫からだ猫からだ猫あたま 熊しっぽ熊からだ熊からだ熊あたま 黒猫しっぽ黒猫からだ黒猫からだ黒猫あたま ビーグルしっぽビーグルからだビーグルからだビーグルあたま 牛しっぽ牛からだ牛からだ牛あたま

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何となく 幕間17のチェ・ヨンのセリフを チュンソクが聞いてて 顔を真っ赤にする構図が浮かんだので 今さら書いてみました。

短いけど ブランクありすぎて 今はこれでご容赦くださいゲロー