僕は欲しいものなんて、昔から、そんなになくてね、
彼は語り始めた。
欲しいものがない、っていうよりもね、大概の欲しいものは自分の能力で手に入れられる自信があったんだよ。
ほら、僕、それなりに優秀だから。
だから、僕がこの地位を、何らかの力によって手に入れたなんて思って欲しくはないんだよ。
大体、僕の社会的地位は、僕の願いではなかったんだよ。
君が知りたい、契約とやらの話の中では。
僕がここにいるのは、何もなかったとしても確定していたことだった。
僕がね、そういったことに興味を持ったのはね、
君なら分かるかもしれないな、
それが人外のパワーだったからだよ。
ねぇ、思わないかい?
どんな権力を持ち、どんなにお金を持っていても、人間なんて脆弱なものだと。
どんなに鍛えた達人でも、丸裸でサハラ砂漠のど真ん中に置き去りにすれば、1日で死ぬ。
どんなお金持ちでも、権力者でも、寿命からは逃れられず、彼を暗殺するのはたまたま部屋に漂った、目に見えないウイルスかもしれない。
人間が出来ることなんて、たかがしれている。
この地球と言う水槽の中で、鑑賞魚が暴れているだけさ。
所詮、漂っているだけ。
僕はただ、思ったんだ。
人間にはどうしようも出来ない力に、何らかの方法でアクセス出来ないかと。
すべてはただの興味だったんだ。
で、呪術に興味を持った。
呪術とは、人間が、人外の力にアクセスする方法だったからね。
君も色々調べているなら分かるだろ?
これがまぁ、あらかた偽物だってことが。
世の中に知られている呪術や霊能力は、偽物だって言っても良い。
良く売られている幸運のペンダントと同じようなもんだ。
そして本物の呪術だって、呪術が信じられている世界にしか存在しないんだってことを。
昔ながらの伝統的な生活を送る人々の間では、今でも呪術は現実に介入するものとして存在している。
それは、現実だ。
でも、信じるものにしか現れない力って、どうだろうか
それが僕には不満だった。
僕はもっと圧倒的な力が知りたかった。
信じる信じないなど関係なく、発揮される力の存在に憧れた。
ただ、誤解しないで欲しい。
僕はその力をどうこうしようとは思わなかったんだ。
ただ、その力に触れたかった……。
水槽の魚が、水槽を外から眺めたいと思ったんだよ。
力の来る場所が知りたかったんだよ。
僕が科学者なら、この望みは正しい欲求だと思われただろう。
僕が数学者なら、ある世界を探求することは敬意を得られただろう。
僕が天文学者なら、ロマンさえ人は感じてくれただろう。
でも、僕はオカルティストだったから、秘密裏に色々調べていくしかなかった。
僕は探しているだけで、信じているわけではなかった、正直、盲目的に信じている人間に危険性と脆さしか感じなかった。
でも、僕はオカルティストだった。
だって、僕が触れたい力はそういう力だったから。
それは、君もそうなんじゃないかい?
彼はそう言った。
でも今日は、ここまで。
#ふしぎな話