私が出会った悪魔主義者は有名人だっ た。
だけど、彼は悪魔主義者で、オカルティストでありながら、そんなことは信じていなかったと言ってのけた。
彼は語り続ける。
人間が奇跡を起こすために生まれたのが呪術だとするよ。
だが、大体が偽物だ。
考えてみたらわかるでしょ。
地面に図形をひいて、呪文をとなえれば、ほら、角の生えた悪魔が現れる。
邪神の祭壇に、生け贄の子供を捧げれば、ほら、邪神が降臨する。
そんな簡単なことで異界異形のものが現れるなんて、有り得ないでしょう。
そうなら、生け贄だらけの戦場には、どれだけ邪神が降りていなければいけないか。
むしろ、そういう行為をしている人間こそが悪魔や邪神のようになっているとしか思えないよね。
ただし、そいつらには超常の力はないけどね。
シンボルに力がある。
呪文に力がある。
数字に力がある。
それは確かかもしれない。
だけど、誰もが行っても同じ結果が出るとまではいかなくても、何んにも起こらないなんておかしいでしょう?
真にそれらに力があるならば。
実際、僕は実験してみたんだ。
いや、人間を生け贄にはしてないよ。
実験ごときに、そこまでリスクは犯せないでしょ。
彼は、生け贄と言う実験をしなかった理 由を、リスクの有無で説明した。その考え方に私は恐ろしさを感じた。
それは、儀式の何が信じられるか、何を信じないかと言う説明よりも、彼が悪魔主義者だと言うことを強く感じさせた。
ヌメルような人間とはあきらかに違う質感の皮膚に触れたような感覚だった。
術を行う人間にこそ差があると言うならば……、僕は逆に考えた。
人間こそが、そういう術を行うために必要な道具で、むしろ他は飾りなんじゃないかと。
まぁ、本当に、そういった術が存在するならばだが。
じゃあ、人間が、その術を発動させるためには、どのような条件が必要なのか、僕はそこにこそ、秘密があると思ったんだ。
霊能力、超能力、なんて怪しげなものではない、確実な条件があるんじゃないかと。
全ては仮説の話だ。
だって、こういったものは最早科学ではないから、仮説しか立てようがない。
でも、僕なりに納得がしたかったんだよ。
僕は考えた。
じゃあ、成功した人間から、成功の条件のデータを集めれば良いんじゃないかってことを。
でも、誰が【本当に】成功したかなんかわかるわけがない。
だから考えて、一つの基準を作った。
オカルティストではないこと。
霊能力などを仕事にしていないこと。
それを公言していないこと。
にも関わらず、儀式を成功させることが出来た人間を探すべきだと
世の中には沢山、儀式が成功したと言われている人間はいるけれど、この条件にすると、面白い位該当者はいなくなったよ。
何人かは該当してはいるようだったけれど、公言していなかっただけあって、どのような方法が行われたかわからなかったり、彼らからではなく、向こう側からの接触だとされていたりするんでね、
参考にはならなかったね。
ただ、その人々達には、面白い共通点はあった。
彼らのほとんどが、芸術家だったことだ。
たまに、戦士も存在していたが、彼らも自分に殉じると言う意味では芸術家と言えないこともなかったと言う点だ。
今だって、過去にだって悪魔のような指導者や権力者はいる。でも、彼らは本当ににはそういった力とは接触せず、
己の為にのみ生きる芸術家が、向こう側と接触出来るのは、実に興味深いとは思わないかい?
まぁ、あくまでも、僕にとって信じられるケースを探しているわけであって、本当にはそういった力を振りかざした王もいたかもしれないけれどね。
僕は考えた。
あえて宗教家は外したが、芸術家は宗教家並みに、自分の中に深く潜れる人間のことだ。
そして、自分の中から人間の普遍的なものを見つけ出して拾ってくる連中だ。
多くの人間が共通の想いを抱ける何かを作り出す連中だ。
そこにこそ、ヒントがあるんじゃないかと。
全ての人間が、共通の意識を持っていると言う説もある。
彼らはそこまで潜れるダイバーなんじゃないかと、僕は思った。
そこから必要なものを抱えて上がってくるんだ。
でも、もっと深いところがあるんじゃないか?
人間全体の意識があるなら、もっと深い意識が、そう、地球、もっとこの世界全体とつながる場所があるんじゃないか、
そして、多分、悪魔と呼ばれるものはそこからやって来るのではないかと。
万が一、そこまで潜ることができたなら、そこにいるモノに呼びかけることが出来るのかもしれない。
そこまで凄い場所からきた割には、彼らが、見返りに与えたものはあまりにもささやかだとも思いもしたけれど。
だって、彼らが与えたのはただの【才能】だよ?
あるものには画力。
あるものには音楽の才。
あるものには剣の才。
国でも、権力でもなく。
もっとも、望んだのは呼びだした方
なんだけれどね。
全ては仮説だ。
でも、仮説としては魅力的だと思わないかい?
とにかく、僕はこの考えにとりつかれた。
で、僕なりの答えを探し続けた。
その片手間で、この社会的地位を築いていたわけだよ。
で、一人のギタリストのケースにたどり着いたわけだ。
彼の話は続くが、今日はここまで。
#ふしぎな話