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ネットの海に流した瓶

物語を書いてます。

読んでもらえたら嬉しいです。

それほど昔ではない話、悪魔によって、その才を得た、天才ギタリストの話はそれなりに有名だ。


彼が非業の死を遂げたことも。

私が出会った悪魔主義者は、彼こそが、儀式を行うために必要なサンプルだと信じているようだった。

悪魔主義者は語り続ける。

柔らかい口調で、好きな音楽について語るみたいに。



彼の名前は知っているでしょ?

オカルティストじゃなくても彼の名を知っている人間は多い。

アフリカ系アメリカ人。

黒い肌のシンガー。

彼は自身は公言したことなかったけれど、その人間離れした超絶技巧のギターは、この世界にはない音を引き寄せているようだったため、密かに人々は言い合ったんだ。

悪魔からあの技を与えられたんだって。

君も一度、彼の演奏を彼の歌を聞いてみるといい。

録音技術が未熟な時代のため、ざらついてはいても、地の底から響くようにギターが泣き始める。

空っぽの世界を満たすように、声が溢れ始める。

現実が軋んで、しばらく消えてしまうような演奏だよ。

実際にその演奏を聞いた人々は、自分たちの魂まで悪魔に捧げられるのではないかと恐れたんだってさ。

そう、麻薬のように、人々は彼の演奏に夢中になった。

肌の色で分けられていた時代に、異なる肌の人々さえ彼の演奏を聴きにきた。

今の時代みたいに、何千人もの人間が入るような会場で演奏していたわけじゃないけれど、会場のどこにいても、彼の闇みたいに真っ黒な瞳が自分を見ているように人々は感じた。

会場から離れても、頭の片隅に彼の音楽がなるだけでも、彼が、自分の心の中を覗きけむように。

そこにはセクシャルな快楽があった、と当時の彼のファンが日記に書き残している。

彼はとびきりハンサムで、とびきり魅力的で、とびきり冷酷で破天荒。

悪魔と契約するに相応しいアーティストだったわけで、その噂はあっという間に広まった。

それは当時としては、いささか不道徳的ではあったけれど、彼のキャッチコピーにすらなった。

ただ、彼自身の口から悪魔の話が出たのは一度だけだったそうだよ。

彼の付き人をしていた青年が、日記に書き残している。

後に伝わる話を世間に伝えたのは、この青年だったのかもしれないね。

ある、演奏後の酒の席で、天才は自分と悪魔の繋がりを認め、

話したんだ。

黄昏の十字路で、悪魔を呼び出し契約したと。

これこそが、僕が探し続けていた情報だったんだ。


天才の行った儀式は、儀式と言えないほど簡単だった。

人気のない黄昏の十字路で、強く願いながら、一番大切なものを捧げ、歌っただけだった。

これでは、充分ではない。

僕がこの通り行ったところで、悪魔は絶対に現れないことは、断言できた。

僕は情報をもっと、掘り下げてみた。

天才は、その当時のその国、アメリカの多くの人々と同じく、どんなに不品行ではあっても、キリスト教徒だった。

だが、彼の言う悪魔は、キリスト教の悪魔なのか?

違う。

僕は断言出来る。

彼は、違う大陸からの信仰も受け継いだ人間だったんだよ。

彼はアフリカから連れてこられた人々の子孫だった。

アフリカでの信仰を取り上げられ、キリスト教を押し付けられはしても、彼らの中にアフリカの信仰は完全には奪われなかった。

ハイチでブードゥと呼ばれる信仰が、キリスト教と共存しているように、彼は違う大陸で信じられているものを信じていた、そしてそれを悪魔と呼んだだけだったと。

何枚か見つけた彼の写真がある。

彼の机の上に散らかされたものに、そういった御守りが見られるんだよ。

つまり、彼はそういった信仰の手順を踏んで、儀式をおこなっていた可能性がある。

その上で、もう一度、彼の話を解き明かしてみよう。




悪魔主義者の話はまだ続くが、


今日は、ここまで。



#ふしぎな話