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昼と夜とを往復していた20代前半。
この頃、両親は離婚をした。
元々仮面夫婦だったが、
スッパリと。
その頃私は
とある街の飲み屋で働いていた時に出会った
ひとつ年上の女の子と仲良くなった。
私はすぐに店を辞めたが、
その後もその子との関係は続いていた。
働いて、疲れて、引きこもる、を繰り返し、
精神的に回復すると職探しをしていた頃、
その子に「バイトを探している」と言うと
「うちのお父さんのお店で働かない?」
と誘ってくれた。
場所は、オフィス街にある個人経営の居酒屋。
毎日サラリーマンが集い、料理は美味しかった。
飲食店のホール経験はあったので、
仕事はすぐに慣れ、毎日その店で働いた。
サラリーマン客の中にその人は居た。
会社御一行で定期的に来るその人は、
私に好意を寄せてくれているようで、
周りの同僚たちからも応援されていた。
ある日、連絡先を渡された。
正直、タイプではなかったが、
悪い気はしなかったし、
そろそろ彼氏がほしいと思っていた頃だったので
バイト終わりに連絡をしてみた。
メールのやりとりを重ねて
デートをしてみることになった。
相手が好意を寄せてくれていることには、
元々気づいていたが、
日に日に猛アタックをされ、
付き合うことにした。
22歳の時だった。
その頃には、
夜の仕事でいくらか経験があったし、
いろいろな男性を知っていると思っていたので、
その人を「女性経験がない人」だと思った。
相手も、私を「男性経験のないウブな子」と
思っていたらしい。
私は、元々地味な顔立ちで、
夜の世界に無縁のように思われやすい。
付き合ってしばらく経つと、
その人が既婚者で子持ちだということを
暴露してきた。
不倫か…と思ったが、
昔から遊びの恋は出来ない不器用な私。
先はないと分かりつつも、
どんどんと、のめり込んでいった。
後に、不倫男というのは、
「奥さんと別れて一緒になろう」と
口癖のように言う生き物だと知ったが、
当時22歳の私はその言葉を間に受けていた。
いつになったら別れてくれるんだろう。
そう思いながら月日が経っていった。
いつまでも別れない彼に苛立ち、
どうすれば私だけを見てくれるか
考えた結果、
「子どもを作ろう」
という、なんとも馬鹿げたことを思い付いた。
今になって、
命を何だと思っている!と思うが、
当時は周りが見えていなかった。
そうして、妊娠した。
23歳の時のことだった。
私の母に話すも、もちろん大反対。
彼は気性が荒く、
何かにつけて機嫌が悪くなると、
命が宿っているとわかっている私のお腹を
殴った。
最終的には、相手の気が変わり、
望まれない命となった子。
私は1人ででも育てようと思ったが、
母に「親か子どもを選べ。
子どもを選ぶなら縁を切る。」
と言われ、泣く泣く決断を下した。
手術が終わってもまだ
納得がいかない決断だった。
順調にいけば、出産予定日は、
3月4日だった。
3月4日は、強姦にあった日として
ずっと心の中にあった。
やっと3月4日をいい日だと
思えるチャンスが来たのに
自らの過ちで、また嫌な日にしてしまった。
それから、彼とはもちろん別れた。
彼のことはどうでもよかったが、
下ろした子どものことで、
毎日毎日泣いた。
泣いても戻ってこないとわかっていたが、
取り返しのつかないことをしてしまったと
後悔の気持ちで、くる日もくる日も泣いた。
罪のない命が奪われるくらいなら
私が死んだ方がマシだ、と何度も思った。
自分のことを責め続けた。
妊娠中はつわりがひどく、
バイトも辞めていたが、
その後しばらくは塞ぎ込み、
引きこもり生活を送ることとなった。
インターネットは、
某動画サイトの生配信全盛期だった。
しばらく塞ぎ込んでいたが、
ごく僅かな登録者がいるチャンネルで
雑談放送を始め、
少しずつ人と話すようになっていった。
しばらくして、
近所の大型ショッピングモール内のスーパーで
働き始めた。
24歳くらいのことだった。
スーパーのレジ打ちでは、
パートのおばちゃんに可愛がられ、
少しずつ気持ちは回復していったが、
やはり心のどこかに子どもの存在はあった。
ショッピングモール内で出会った
ある人の一言で、人生が変わったのは
また別の話。