我々4人が向かった先は、新郎席。

そこでは、産品が、我々4人を待ち構えていた。

戦闘開始である。

「まあまあ」

とか言いながら、モケダラと黴が、産品のグラスにビールを注ぐ。


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まず書いておくが、産品は下戸である。

適度に飲み干しつつ、モケダラと黴の攻撃をかわす産品。

お酌攻撃を諦め、我々4人は、産品の背後へ回って完全包囲。

そして、産品のすぐ後ろに立ったときに、私は感じた。

産品と会ったのは、今回で2度目だったが、

この違和感のなさはなんだろうか。

パブリック・スペースに入っても、嫌悪を感じるどころか、

逆に心地よい。

そしてそれは、ネット住人たちに言えることでもあった。

それはきっと、私がネット住人たちに心を開いているからであり、

ネット住人たちも、私に心を開いているのだと信じたい。

「やあ、参加賞は受け取ったかな?」

産品が、私を見ながら言う。

そして、産品を囲んでの、楽しいひとときが流れる。

この日、産品とゆっくり談笑できたのは、

そのときが最初で最後だった。

「黴に直接電話したんだって?」

私は産品に言った。

黴の話によると、参加の確認のため、

産品が直接電話してきたらしい。

「まあ、大丈夫やろ、大丈夫やろ、いけるやろ」

産品が、私、モケダラ、泥の順に指を刺しながら、そう言った。

そして、黴を指差しながら言う。

「ホンマか?」

という訳で、出欠確認の葉書だけでは、

黴の出席を信用し切れなかった産品は、重ねて黴に、

出欠確認の電話をしたという顛末である。

それはそうだろう。

私も、黴が出席するとは思っていなかった。

しかし、そうではない。

誰よりも仲間を大切にするのは、黴なのだ。

きっと黴なら、仲間のために、どこへだって飛んでいくだろう。


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つづく



コース料理(の紹介)は続く。

「5、コンソメスープ、フカヒレ」

「6、自家製焼き立てパン」

ここで、運ばれてきたパンを食らいながら、

モケダラが感嘆の声を上げる。

「うんめぇ、このパン、うんめぇ」

「うん、うまいな」

泥も同意するほどのパン。

「モケさん、パンにうるさいんだな」

私は率直にそう言ったが、言ったあとに気が付いた。

モケダラは、神戸の人間なのだと。

パンといえば神戸、神戸といえば阪神タイガース、

阪神タイガースといえば村山実と言うように、

神戸では美味しいパンを焼く。

話は変わるが、茄子の香りのお色直しのタイミングが、

どこだったのかを忘れたので、ここで書いてしまう。

退場する際、茄子の香りが同伴に指名したのは、産品の父親だった。

突然の指名に、驚愕と共に立ち上がる産品父。

「なかなか、いいキャラだな」

私が呟く。

「イメージはパーピンだな」

黴が言う。

どんなイメージなのかはさて置くとしても、誰も反論はしなかった。

茄子の香りが退場し、新郎新婦席には産品だけが取り残された。

チャンスはここだ。

ネット住人たちは、ビール瓶を片手に持ち、一斉に立ち上がった。


つづく


披露宴は滞りなく進行し、スピーチタイムに突入。

産品の上司のスピーチ。

茄子の香りの上司のスピーチ。

産品のリアル友人のスピーチ。

茄子の香りのリアル友人のスピーチ。

そう、ここで、茄子の香りの友人代表として、牧子が登場。

椅子から立ち上がり、マイクの前に立つ牧子。

緊張感が伝わってくるが、笑顔を絶やさないところは、

さすがセミプロ級。


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時折、茄子の香りの顔を見つめながら、スピーチを進める。

そして、茄子の香りが号泣するのに、時間は掛からなかった。

王者陥落の瞬間である。

一通りのスピーチ合戦が終わり、ディナータイムへと移行。

豪華で洒落た料理が運ばれてくる。

「1、三河赤鶏ローストのブーケ、香り高いミニトマトと共に」

ネット住人は、初めて見るような料理を前にして、

そいつらとの格闘を余儀なくされた。

テーブルマナーを身に着けている者など、誰もいない。

泥は職業柄、そして私は年の功か、コース料理は、

外側のナイフとフォークから順々に使用してしていくことを、

浅い知識で知っていた。

しかし、黴などは、この時点で、箸の使用を選択してしまっている。

「2、真鯛のトマト風味、ジャガイモのパンケーキ添え」

「3、特選鮪、真鯛、いか、足らい一式」

「4、特製伊勢海老の活造り、オーロラ盛」

コース料理は続く。

しかし、我々のテーブルマナーに、イエローカードが連発。

デザートが運ばれてくるまで、ピッチに立っていられるのかどうか、

誰も知る由もなかった。


つづく


リアル友人との応対は、意外にもモケダラが率先して行っていた。

ひきこもりのくせに、社交性が高い。

「モケラッタっす!」

リアル友人から、IDネームについての質問を受けたモケダラが、

胸を張りながら堂々と応えた。

「星のかびるん・・・です」

「え? 星野?」

「星の・・・かびるん・・・」

そして、黴は悶死した。

「王ドロボウ!です」

この辺りでは、もうリアル友人のほうも、

IDネームなんてどうでもよくなっていたのが、あからさまだった。

「パンダ調教師です」

心配された「パンダの調教師なんですか?」的な返しもなく、

ここからしばらく、リアル友人とネット住人の交流は途切れた。

「しんさんに会いたかったわぁ」

モケダラが、残念そうに呟いた。

「しんさん」とは遠く北海道で、胃カメラを飲むことを

ライフワークにしている405のことである。

そして黴は、405と会ったときの感想を語り始めた。

「普通にめぐはかわいいんだけど、その隣に、

あのチンピラみたいなデカイ男が立ってて・・・」

「うん、しんさんってデカイんよね」

「そう、もう、チンピラなんだよ」

確かに見た目は怖いが、あまりにも惨すぎる言われ様。

ドンマイ、405と言うほかない。


つづく


マンハッタンは、白と黒を貴重にした会場となっていた。

「俺のために、この会場にしてくれたんだな」

感慨無量だった。

「自意識過剰でしょ?」

泥の声なんて、聞こえやしなかった。

座席表を見ながら、ネット住人席を探す。

ネット住人席を探し当てると、そこには先客が3名。

そこは、ネット住人席という訳ではなく、つまり表向きは友人席であり、

その先客3名は、産品のリアル友人だった。

まあ、ネットの住人だって、リアルな友人だけどね!(茄子の香り談)

「はじめまして」

リアル友人のひとりが、我々を眺め回しながら声を掛けてきた。

なんとなく、こちらの代表者を探している感じだったが、

こちらは烏合の衆。

代表者など、存在しない。

「小・中と一緒だった○○です」

そう言いつつ、スマートな感じで自己紹介をする3名。

「そちらは、どういった関係で?」

核心に触れてきた。

話は遡るが、ネット住人が顔を合わせたとき、牧子が書いてきた、

友人代表のスピーチ原稿を見せてもらったのだが、

どうやら、産品と茄子の香りの出会いがネットであることは、

秘密裏にされているようだった。

当事者や友人、そして親族の理解を得ても、会社の上司や同僚には、

それを理解し難い人間がいるかもしれない。

その秘密工作が、彼ら友人にまで及んでいるのか推測できなかったので、

なんとなく、我々ネット住人は顔を見合わせながら、間を計っていた。


つづく


ホットコーヒー等を飲みながら、軽い感じで談笑する5人。

「めっちゃ気になるぅ」

そう言いつつ、モケダラが参加賞の封筒をいじくりまわす。

そして、我慢のできないおっさんは、参加賞の封筒を開封。

中から出てきたのは、「3筒ストラップ」と「茄子ストラップ」だった。



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私は封筒を外から触り、中身が同じであることを確認した。

決して、開封したりはしない。

それが、大人の嗜みというやつだ。

そんなとき、館内アナウンス。

産品と茄子の香りの披露宴の参加者は、

5階の「マンハッタン」に集合らしい。

みんな、急いでホットコーヒー等を飲み干す。

しかし、黴。

「俺、猫舌なんだよ・・・」

そう言いながら、懸命にホットコーヒーを飲み干そうと頑張る。

萌えてしまう。

「猫舌も、鍛えれば治るよ」

泥が、スパルタクスなアドバイスをする。

「いや、治さんでええし・・・」

黴は、猫舌と共に生きていくことを、とうの昔に決意していた。

エレベータに乗り込み、5階へ。

「ハリウッドだっけ?」

泥が私に尋ねるが、正解はマンハッタンである。

近いようだが、不正解。

残念。


つづく


新郎新婦の乗った白いリムジンを送り出し、

我々は再びマイクロバスに乗車。

こいつで出雲殿に戻る。

車中では、胃下垂の話で盛り上がる。

泥と黴と私は、いくら食べても太らない。

3人とも胃下垂だった。

あの気高き、胃下垂トリオの誕生である。

出雲殿に戻り、披露宴の開始まで、エントランスロビーにて、

しばし待つ。

コーヒーが無料で飲めるようだったので、そいつを飲みながら、

座って談笑することにした。

泥は現在ウェイターの仕事をしていて、それらしく、

じつに卑猥な感じで、みんなのコーヒーを注いでいく。

ドエロである。

テーブル席を確保し、座る。

しかし椅子が4つしかない。

泥、黴、モケダラ、牧子、私。

足りない。

ここでモケダラが、隣の島の座席に手を掛ける。

隣の島には若い女性。

「椅子動かしてもいいですか?」

変態的な微笑を浮かべつつ、モケダラは若い女性に声を掛ける。

「あっ、使ってます・・・」

若い女性は困ったように、そう言った。

しかし、モケダラが手を掛けた椅子のテーブルの上には

荷物が置いてあり、誰かがその座席を使用していることは、

誰の目にも明らかだった。

そして、その島以外のテーブルは空席ばかりで、

椅子なんてどこからでも取り放題だったのである。

結論として、敢えて言おう。

モケダラは変態おやじであると。


つづく


記念撮影を終え、次は外に出ての、超個人的写真撮影会。

外は雨だったが、そこはピロティになっていて、全天候対応型。

日頃の行いの悪い2人にも安心な、名古屋聖グロリアス教会。

通路には赤絨毯が敷かれており、

その両脇に各々適当に並んで新郎新婦を待つ。

待っているときに、花弁をこんもりと受け取る。

こいつを、新郎新婦に投げつけるわけだ。

当人のブログにもあったが、モケダラはだらしなく、

花弁を大量にこぼす始末。

そして、新郎新婦の登場。

みんなが、花弁を優しく宙へ放つ。

そこへきて、ネット住人4人衆。

基本的に、産品の顔面めがけ、花弁を全力投球。

産品は、じつに嬉しそうだった。

そのあとは、白いリムジンを待たせ、

その前での超個人的写真撮影会。

親族やら友人やら、新郎新婦に馴染みの深い人々が、

新郎新婦と共に写真に納まる。

そこへきて、ネット住人4人衆。

新郎新婦との関係性が特殊だからか、

はたまた単純に消極的だからなのか、

新郎新婦に接近できずにいた。

そんなときだった。

「そこの4人、こっちへ来なさい」

そこで分かった。

我々が新郎新婦を求めていただけではなく、

それ以上に、産品が我々を求めていたのだと。

ネット4人衆は、ぎこちなく新郎新婦を囲む。

そして奇跡の記念撮影。


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そのとき、産品が私を見て言った。

「参加賞は受け取ったかな?」


つづく


フラッシュを浴びながら、ゆっくりと祭壇へ向かう新郎産品。

「アレがモケラッタかと思ったら、笑いをこらえるのに必死だった」

後に産品から聞いた、彼のこのときの心情である。

産品が祭壇に到着すると、今度は新婦茄子の香りの登場である。

茄子の香りの父、通称マッチャンに連行される茄子の香り。


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そして、祭壇の前で待ち構える産品に、茄子の香りは引き渡され、

無事に納品完了。

で、なんやかんやありまして、永久の愛を誓って式終了。


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新郎新婦の退場と相成りました。

そのあと、参加者全員で写真撮影。

見知らぬ親族や友人の後を、ノコノコと付いていく、

ネット住人4人組。

「ベストテンみたくやりますか?」

移動しながら、モケダラが言う。

「こうやってか?」

はしゃいだように両手を挙げ、少し飛び跳ねながら、

私がそれに応える。

つまり、大昔に放送が終了した、ベストテンという歌番組の最後に、

恒例の記念撮影コーナーがある訳だが、

必ずジャニーズ系のグループ(特に諸星和己など)が、

後方ではしゃいで写り込むのだ。

それをモケダラは言っているのであるが、

それにしても分かりづらいことを言う。

立ち位置に調整に調整を重ねていると、

脇から新郎新婦がサササッと入場。

先ほど、荘厳な感じで退場した新郎新婦の再登場に、

ここは仕方がありませんねという、大人の諦めを見た気がした。

撮影中、モケダラも私も、大人しく立っているだけ。

決して、両手を挙げて飛び跳ねたりしなかった。

否、できるはずもなかった。


つづく



時間軸を少しだけ戻す。

新郎産品入場までの待ち時間。

することと言えば、カメラチェックである。

私は、デジカメなんぞ所有しておらんので、

携帯電話のカメラを起動。

左側のモケダラは、手馴れた手つきで、

デジカメのセッティングを開始。

聖堂内は蝋燭の灯りしかなく、

露出度のセッティングに苦しんでいる模様。

そして黴は、ここで神となった。

私の右側で、おもむろにデジカメを取り出す。

本皮風のデジカメカバー。

気合が違うのだよ、気合が。

デジカメカバーのボタンを外し、デジカメを起動させる。

そして黴は、昇天した。

「あれ、やべっ、電池が糞だ・・・」

デジカメの画面を覗き込むと、電池残量が1目盛りしかない。

肝心なときに、こんな状況に陥ってしまう黴。

私が、心の底から萌えたのは、言うまでもない。

これから先、披露宴もある。

その長く貴重な時間を、黴はどう乗り越えようと言うのか。

すべては、始まったばかりなのだ。

「単三電池とか、入らねえの?」

思わず尋ねてみる私。

「デジカメに単三は・・・」

黴は、画面の電池残量目盛りを覗き込んだまま、固まっていた。



つづく