黄 昏 ハ ン ド メ イ ド 。 -4ページ目

黄 昏 ハ ン ド メ イ ド 。

耕 せ ば ま た よ み が え る 星 だ か ら ぼ く ら は 両 手 を も っ て 生 ま れ た

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「夜と霧」

原題:NUIT ET BROUILLARD
公開:1955年
製作国:フランス
監督:アラン・レネ
原作:ジャン・ケイヨール
音楽:ハンス・アイスラー


第二次世界大戦中、アウシュヴィッツで行われたホロコーストの映像記録。


「夜と霧」というのは、ヒトラーが愛聴していたワーグナーから名付けられた総統命令の名だ。

この命令によって「処理」された者達は一切記録がなく、その名の通り夜の霧のように闇に紛れて消えていった。


終戦の10年後に作られた本作は、初めてホロコーストを描いた作品とも言われている。

映画では戦時中のアウシュヴィッツと10年後のアウシュヴィッツが交互に映し出され、ジャン・ケイヨールの詩的な言葉と、ハンス・アイスラーの壮大な音楽が、不気味なほどに美しく流れる。

ドキュメンタリーではあるが、そこに見事な演出がなされていることも、この作品の素晴らしさだ。


世の中には戦争やホロコーストを描いた素晴らしい映画がたくさんある。

それらは私たちに「知る」きっかけを与えてくれる。

しかし、実際の記録からしか伝わらないことというのが、必ずある。

そういう意味でこの作品は、永遠に伝えていかなくてはならない映像遺産だと思う。


それでも、声は自問自答する。

「映像はここで起こったことを見せることが出来るのか?」

きっと10分の1も、100分の1も伝わらないのだろう。

しかしその10分の1を、100分の1を知ることが、私たちの第一歩だ。


この作品を観た多くの人の感想の中に、「授業で観た」と書かれていたことが嬉しかった。

より多くの学校で、これを観て、話し合ってほしい。

誰もが観るべき、知るべき映画だと思う。


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「籠の中の乙女」

原題:kynodontas
公開:2009年
製作国:ギリシャ
監督:ヨルゴス・ランティモス
脚本:ヨルゴス・ランティモス
         エフティミス・フィリップ
出演:アンゲリキ・パプーリァ
         マリー・ツォニ
         クリストス・パサリス


両親から独自の教育を受け、生まれてから一歩も自宅の外に出たことのない3人の子どもたちが、成長とともに自我に目覚めていく物語。


映画は多くを語らないまま、ある家族を映し始める。

一見するとどこにでもいる普通の家族だが、何かが違う。何かがおかしい。

観客は垂れ流される彼らの日常に違和感を感じ、その違和感はやがて驚きに、そして恐怖に変わる。

それを説明せずに体感させるところがいい。


プール付きの豪邸という大きな鳥籠の中で飼われている、3人の子どもたち。

徹底的に外界と遮断されている彼らは、言い換えれば徹底的に守られているとも言える。

外界にいる私たちからすれば彼らには自由がないが、生まれてからずっと籠の中にいる彼らには、自由も不自由もない。


しかしすくすくと育った子どもたちは、性欲も生まれ、好奇心も生まれる。

そして入り込んだ外界の異分子は、無菌状態の部屋に侵入したウイルスのように、あっという間に侵食していく。

さて、悪い菌は外側にいるのか、内側にいるのか。


決して心地の良い映画ではないし、「これ良かったから観て!」なんて笑顔で勧められない(18禁だし)

でも私はこの映画が好きだ。美しい映像も歪んだ空気も、その徹底っぷりが好きだ。

その最高到達点とも言える長女のダンス。最高すぎる。


長女を外の世界へと誘う外界の異分子が「映画」であることもいい。

終わらせ方もベストだと思った。

人には勧めないけれど、多分私はまた観てしまうと思う。



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「Mommy/マミー」

原題:Mommy
公開:2014年
製作国:カナダ
監督:グサヴィエ・ドラン
脚本:グサヴィエ・ドラン
出演:アンヌ・ドルヴァル
         スザンヌ・クレマン
         アントワン=オリヴィエ・ピロン


2015年、障害児の親に対し、育児を放棄し施設に入れる権利を保障する法律が制定された、もうひとつのカナダ。

その法律によって運命を大きく左右される母と子の物語。


音楽の使い方が良く、映像もポップだが、描かれる物語はかなりヘビー。

発達障害の息子を女手ひとつで育て、生活もかつかつ、頼る相手もいない母親のダイ。

息子は思春期に入り精神的にも難しく、身体は母親では太刀打ちできないほどたくましくなっていく。


母は息子が大好きで。息子も母が大好きで。

だけどどうにもならない思いが、時々刃のようにぶつかり合う。

私も思春期の息子を持つ母親だが、母と息子というのは良くも悪くも濃いと感じる。

その濃さというものが本当によく描かれていると思う。


アンヌ・ドルヴァル演じる母親・ダイの、なにかに追われているような焦燥感がとてもリアル。

いつ何をしでかすかわからない息子。周りからの視線。何も見えない将来。

そういったものにいつも怯えながら、そんな弱さを誰にも見せられず、ただ、毎日に急かされている。


そんなピリピリしたダイの空気は、繊細にスティーヴに伝わる。

そんな2人の間に入り込んだ隣人・カイラの存在は、親子にとって救世主だった。

濃すぎる母と子の間に必要なのは、お金でも時間でも距離でもなく、笑い飛ばしてくれる存在なのだ。


広がる世界とWONDERWALLにはやられた。

でも広がった世界がまた小さくなっていく時の、なんとも言えない寂しさのようなものが、いちばん心に残った。