黄 昏 ハ ン ド メ イ ド 。 -3ページ目

黄 昏 ハ ン ド メ イ ド 。

耕 せ ば ま た よ み が え る 星 だ か ら ぼ く ら は 両 手 を も っ て 生 ま れ た

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「鑑定士と顔のない依頼人」

原題:La migliore offerta
公開:2013年
製作国:イタリア
監督:ジュゼッペ・トルナトーレ
脚本:ジュゼッペ・トルナトーレ
出演:ジェフリー・ラッシュ
         ジム・スタージェス
         シルヴィア・フークス


美術鑑定士として絵画に全てを捧げてきた男が、姿を現さない依頼人に次第に惹かれていくという物語。


「ニュー・シネマ・パラダイス」のジュゼッペ・トルナトーレとエンニオ・モリコーネの黄金コンビによるミステリー。

あまり前情報を入れないようにしていたので、なかなか楽しめた。


何よりジェフリー・ラッシュが凄い。

生身の女性に全く興味のなかった偏屈じいさんが初めて恋に落ちる様子を、顔の筋肉をめいっぱい使って表現している。

おそらく誰もがオープニングとラストの彼の顔つきの違いに驚くだろう。

顔つきだけでこれだけの事を物語れるのは、さすがとしか言いようがない。


そして脚本がとても文学的だなと感じた。

きっと小説で読んでも面白いと思う。

もちろん「ナイト&デイ」の装飾など、映画ならではの演出も素晴らしい。

文学的要素を壊さずにうまく映像化していると思う。


絵画オークションやオートマタなど、ワクワクする要素はたくさんあるのだが、観た後に何が残るかと言われるとあまり残るものは無い。

気軽に謎解き映画を観たい時にはぴったりだと思う。


余談だが、ジム・スタージェスがかっこよすぎて、私はずっと「この人が悪人じゃありませんように」と、祈りながら観た(笑)

祈りが届いたかどうかは…映画を観てのお楽しみ。





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「灰の記憶」

原題:THE GRAY ZONE
公開:2002年
製作国:アメリカ
監督:ティム・ブレイク・ネルソン
脚本:ティム・ブレイク・ネルソン
原作:ミクロシュ・二スリ「アウシュヴィッツ」
出演:デヴィッド・アークエット
         ハーヴェイ・カイテル
         ミラ・ソルヴィノ


1944年、アウシュヴィッツ強制収容所。

ゾンダーコマンドとして働く男たちと、ガス室から奇跡的に生き残ったひとりの少女の物語。


原作は劇中にも登場するユダヤ人医師、ミクロシュ・二スリの手記である。

「サウルの息子」でゾンダーコマンドを知り、同じくゾンダーコマンドを描いたこの映画の存在を知った。


ゾンダーコマンドとは、強制収容所で同胞たちをガス室に送り、死体処理をしていたユダヤ人たちだ。

彼らがその仕事と引き換えに得ていたのは、食事とたった4か月ほどの延命だった。

特別待遇ではあるが、待っているのは他の者達と同じ「死」だ。

4か月経てば、新しく来たゾンダーコマンドたちによって処理されるのだ。

それでも彼らは、いちばん憎い相手に忠誠を誓い、いちばん大事な人たちを裏切り続ける。

そこにはどんな思いがあったのだろう。


彼らは最後の抵抗として、死体焼却炉の爆破を企てる。

どうせ死ぬのだという諦め、もしかしたら生き残れるかもしれないというほんの少しの希望、そして、生き残っても家族に合わせる顔がないという罪悪感が入り乱れる。

そんな中でひとりのゾンダーコマンドが、ガス室に送られながら一命を取り留めた少女を見つける。

そして少女を生かそうと必死になる。

少女にわずかな希望を託し、自分たちの罪の償いを託す。

そうすることで自分は悪魔ではなく人間なのだと、自分自身に言い聞かせていたのかもしれない。


二スリ医師は収容所で人体実験に加担したことで、収容所から生還した。

彼が同胞を裏切り続けなければ、この物語が世界に知れ渡ることは無かったのだ。

そんな二スリ医師は、1956年に55歳で亡くなっている。

その死因は老衰だそうだ。

この事実だけでも、彼がその後どんな苦しみを抱えながら生きていたのかがわかる気がする。


生還者の貴重な証言を元に、細部までリアリティこだわり作られたこの作品は、とても意義のあるものだと思う。

その一方で物語の軸が無く、何をいちばん伝えたいのかがぼんやりしてしまっている。

そして、ここまでリアリティにこだわりながら、英語で作られていることが非常に残念。




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「霧の中の風景」

原題:TOPIO STIN OMICHLI
公開:1988年
製作国:ギリシャ、フランス、イタリア
監督:テオ・アンゲロプロス
脚本:テオ・アンゲロプロス
         トニーノ・グエッラ
         タナシス・ヴァルニティノス
出演:タニア・パライオログウ
         ミカリス・ゼーナ
         ストラトス・ジョルジョグロウ


ギリシャで暮らす幼い姉弟が、「ドイツにいる」という唯一の手がかりだけを頼りに、名前も顔も知らない父を探して旅をする物語。


なんという美しさ。なんという儚さ。

テオ・アンゲロプロスは、子どもが父を探して旅をしたという新聞記事からインスピレーションを受け、自分の子に聞かせるお話としてこの物語を生み出した。

まさに美しいおとぎ話だった。

子どもに聞かせるには残酷すぎるかもしれないが、おとぎ話というのは総じて残酷だ。


小さい頃、遠くに見えるビルを見て、いつかあそこまで行ってみたいと思った。

自転車に乗れるようになり、思い切ってその場所を目指してみた。

ワクワクしながら、必死の思いでたどり着いたその場所には、なんてことないマンションが建っているだけだった。


世界に線が引かれているなんて思ってもみない姉弟は、旅をする中で容赦ない現実を知る。

お父さんに会えると期待でいっぱいだった胸に、現実という杭が次々と打ち込まれる。

幼い2人は、懸命にそれを受け止め、吸収していく。

2人は戻れない。進むしかない。

それこそが、大人になるということだから。


子どもの世界は狭い。狭いからこそ夢を見る。

世界を知っている私たちは、夢を見ることも忘れている。

すべてが夢のように美しく、すべてが現実のようにざらつく。

意味を考察することほど無意味だと言うような、完璧なラスト。


個人的には大好きな重機、バケットホイールエクスカベータが出てきて、嬉しいサプライズだった。

重機はおとぎ話に合うね。