旅する英国家具・大西洋を渡ったメイプル社
ヴィクトリア時代、繁栄を極めた英国家具業界。
Furniture on display at the Great Exhibition 1851
その中でも特別な輝きをはなった数社があります。
ワーリング&ギロー社はキャビネット・メーカーから出発し成功した会社。作る品物は最高品質でクラフトマンシップ溢れる傑作。
http://pancada.net/particular/cat77/post_958.html
シュールブレッド社は生地屋から出発し、家具まで手を広げました。しゃれたセンス、趣味の良さが特徴。
http://pancada.net/particular/cat77/post_695.html
リバティ社はオリエンタルな品揃えとアーティスティックなセンスでまるでギャラリーのよう。
http://pancada.net/item/bookcase/liberty.html
そして、メイプル社。
恐らくその時代の英国家具業界の中で、最も商業的に成功をおさめたのではないでしょうか。
ロンドン、トッテナムコートロードに巨大な店舗を構え、ロンドン名物となっていたメイプル社はブリテン島南岸、リゾート地のブライトン、及びボーンマスに支店をもち、ロンドンを離れて静養中の富裕層を取り込みました。
Maple&Co Tottenham Court Road London- Facade 1902
そしてパリはオペラ座の近くにも店舗を構え、フランス上流階級に英国家具を売り込みます。
やがてはアルゼンチンのブエノスアイレス、そして隣国ウルグアイのモンテビデオに支店を持ちます。
さて、ここで疑問。
・・・パリはともかく、何故ブエノスアイレス?そしてモンテビデオ?
ちょっと、推測してみましょう。
アルゼンチンは1816年にスペインからの独立を果たします。
それ以来、ヨーロッパ各地からの移民を積極的に受け入れ、多くの人々がヨーロッパからアルゼンチンへと渡ってゆきました。
Plaza de la Constitución in Buenos Aires in 1900
1880年代以降、冷凍技術の発達により急速に英国を中心としたヨーロッパとの貿易が盛んになり、特に英国は大量の資本をアルゼンチンに投入し、実質的に経済を支配していた、という背景があります。
また隣国ウルグアイのモンテビデオも、英国の強い影響を受けながら発達した街であり、どちらも南米を代表する貿易港でもあります。
Buenos Aires port circa 1912
ブエノスアイレス、そしてモンテビデオから英国へ出港する船には大量の食肉等の消費物資が積まれていたことでしょう。
もちろん、南米原産のマホガニーをはじめとする木材も。
そして、英国から積まれてくる物資のひとつとして、クオリティの高い英国家具があったのではないでしょうか。
経済成長を続ける両国の富裕層に、英国製・舶来の家具はたいそう魅力的な品物であったことは、想像に難くありません。
その窓口のひとつが、メイプル社だったのではないでしょうか。
メイプル社としてみれば、その航路を抑えておけば、自分たちで木材の調達までできる、というメリットがあったのかもしれません。
パンカーダには、そんなメイプル社の家具が数点ございます。
Maple&Co Tottenham Court Road London- Entrance 1900
商業的な成功の理由には、確かなクオリティと素晴らしい意匠性があったことは、一目瞭然。
http://pancada.net/particular/cat77/maple_2.html
世紀を超えた古艶と、大英帝国を代表するキャビネットメーカー・大西洋を股にかけたメイプル社の歴史を、どうぞ共にお愉しみください。
http://pancada.net/item/desk/maple_5.html
*メイプル社については当店スタッフブログにて、いままでに数回ご紹介しております。よろしければ、こちらからご覧ください。
アンティークで旅するヨーロッパ : パリ・オペラ座近くのブドロー通り
http://ameblo.jp/pancada/entry-12079754221.html
今はなき キャビネットメーカー Maple&Co.
http://ameblo.jp/pancada/entry-10571984907.html
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