こころで食べるパン | 高橋貴子の飛常識なパンお菓子料理教室開業集客:横浜東京

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$あなたのパンが7倍おいしくなる!「パンニーダー de おいしい生活」


今日は、「tea break」ということで、少しプライベートなお話を。

3月上旬、わたしの主人方の叔母が病院に緊急入院しました。

胸が痛いということで、以前からそんな話はしていたようだったのですが、
容態が急変して、入院。 そして、検査の結果。。

「ガン」でした。余命3カ月。

胸ではなく、肺で、もう片方が機能していない状態で、膵臓肝臓にも
転移が見られるということで手術が不可能とのお話でした。

義父から連絡をもらって、「まだ話せるうちに会っておいた方がいい」と
言われて、駆けつけて叔母と話をしたら、
確かにチューブとかで鼻に薬を送り込んだりしていましたが、
私が想像していたよりもはるかに元気で、
「もしかしたらこのまま治ってしまうんじゃないか」とおもうぐらいに
話ができてました。


その後、間隔を詰めて、通っていたところ
おばから私にお願いがあるの、と言われて、なあに?と聞いたところ

「あなたの作ったバゲットが食べたいの」

とちょっと照れくさそうに言われました。

パン教室を新年から本格スタートさせて、
もともとパン好きだったおばからもよかったね~、がんばってね~って応援されてました。

「え?バゲットってさ、硬いよ。食べにくいでしょ?
もっとやわらかいとろけるような食パンとかさ、作ってくるよ」

  「いいの。だめだめ。そんなにふわふわのパンじゃ食べごたえがないの。
  フランスに1人旅してたときに、よく食べてたの。バリッとした皮にもちっとした中身が
  おいしいのよ。」

「ん、わかった。まぁ、フランスのもののようにはおいしく作れないけどさ(笑)
作って今度持ってくるよ。じゃ、バターとオリーブオイルと塩も持ってくるよ」

叔母は海外も色々と1人旅をしてとてもハイカラな人でした。
絵もうまいので、海外の風景のスケッチもよく見せてもらいました。
その土地の風景が感じられるようなあたたかいタッチでした。


ーーーーさて、依頼を引き受けてみたものの、バゲットは久しぶり。
しかもリクエストのパンをなれば、気合も入ります。
もともと作る予定じゃなかったタイムスケジュールに無理やり組み込んで
夜の何日かかけて、作ってみていたのですが、なぜかこういうときに限って満足のいく
パンを作ることができない。

味はまぁまぁだけど、形が悪い。
形はいいけど、味が悪い。

なぜか、自分の中でOKが出ない。。。
出来上がったパンを見て、ため息をつく私をみて、不憫に思ったのか、旦那が言いました。

「いいじゃん、そこらへんでさ、ちょっと形のいいバゲット買って
自分が作ったんだよって言って渡せばさ」

「それじゃダメなんだよ。おばさんは”私の作ったバゲットが食べたい”っていうんだから
作ったものを持っていきたいの」

ーーーそして、また作る。。作る。
駄作なバゲットの山が築かれる。。

そうして、ようやっと2本、やっとあげてもOKというものが出来上がったのが
お見舞いに行く予定の前日。

お見舞い当日、おばに直接バゲットを手渡しました。
量は食べられないということもあって、目の前で小さく切り分けて
渡しました。

病院食と言う観点から言えば、バゲットは本来許される種類の食べ物では無いのですが、
病院側ももう、これ以上どうにもならないということで
ある程度好きなものは何でも食べていいよということになっていたようです。

おばはすごく喜んでくれました。

  「いや~、すごいわね~。お店で売ってるみたいよ」

「そう?よかった。喜んでもらえて。あとで感想聞かせてね」

※その時はちょうど食事が終わったばかりで、今はおなかに入らない
ということでしたのでまたあとで食べてもらう予定でした。


そして、それが、私と叔母が交わした最後の会話になりました。


叔母と別れて義父に会ってたときに尋ねました。

「バゲットなんてさ、硬いパン消化に悪そうだけど、大丈夫なのかな?」

すると義父はいいました。

「パンそのものを食べたいというよりは、貴子のパンを心で食べたかったんだよ。きっと」


ーーーーー泣けました。

おばさんに喜んでもらえるパンを作れる自分になっていてよかった。ということに
感謝するとともに、やっぱり自分で作ったものを渡せてよかったとその時思いました。


そして、私たちも容態が落ち着いているという安心感もあり、
少し間隔をおいて、今週末ぐらいにお見舞いに行こうかなと思っていた矢先の
昨日未明。叔母は他界しました。

あまりにもあっけなく、あんなに元気そうだったのに(実際は薬でそうなっていたことを
あとで義父にききましたが)と思ったりもしましたが、
反面、ガンで苦しむ事もなく、往生できてよかったのかなとも思いました。

享年85歳。

とてもハイカラでお洒落な女性でした。

明日おばとお別れします。

天国でも自由にあちこち海外を旅するんだろうなって思ってます。
そして、その時もやっぱりフランスに行って、バゲット食べるのかな。

私のバゲットはまだまだ完全なものじゃなかったけど、
これからもきっとバゲットを焼く時には、そんな叔母の事も思いだしながら
焼いていきたいと思っています。