手相物語~被災地にて | 和顔工房(わげんこうぼう)

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和顔という言葉は、「大無量寿経」 の言葉「和顔施」「和顔愛語」に由来。穏やかで温和な表情、顔つきや言葉遣い。穏やかで親しみやすい振る舞い。のこと。どんなに苦しい時でも、「和顔」がその状況を突破する鍵になる。

その手相家の名前は、安倍吽馬易(あべのうんめい)という。

手相を観るという事は、「相手の方の人生の可能性を引き出すことだ」と
吽馬易は、常々、想っています。

ある日のこと、その日は、仮設住宅をボランティアで訪問する機会を頂いたのでした。
手相で、私に何ができるかわからないけれども、
ただ話しを伺うだけになってしまうかもしれない。
それでも、何かお手伝いしたいといつも想っていた吽馬易にとって、
今回の訪問は少なからずの緊張が見受けられました。
この日は、肌寒く、見上げると、曇がどっぷり空に居座っていました。

この地域は、未曾有の災害に遭い、家や大切な家族や友、大切なモノを

一瞬にしてなくしてしまった方が暮らしていらっしゃる仮説住宅でした。

この仮設住宅には、40世帯ほどが暮らしていました。

1世帯1世帯、1人1人と時間のある限りお話をしながら、
「手相を手がかりになにかしら、お話したい」
吽馬易は、そんな気持ちを胸に、まず、一番手前のお家へうかがいました。

吽馬易:「こんにちは。はじめまして安倍吽馬易と申します。」
こんな風に、何人の方が尋ねてこられたのだろうか?
こうやって、見ず知らずの私に、
訪れてこられるということは、どんな気持ちなのだろうか?
吽馬易は、
吽馬易:「私などが、被災された方の気持ちに寄り添うなんて、・・・」
吽馬易:「そんなえらそうなこと云えないけれど、・・・」
吽馬易:「せめて、・・・」
吽馬易:「私と出逢ったことで、その一瞬でも、笑顔になって笑ってくれたら、」
吽馬易:「そんなことしかお手伝いできないかもしれない。」
そんな気持ちで、3回、ゆっくり、やさしくノックをするとその音と同時に扉が開きました。
扉の向こうには、笑顔で山下さん(仮名)が出迎えてくださいました。

山下さんは、津波で家も思い出も、そして、大切な家族を亡くされていました。

私は被災された大変な状況にある方としてでなく、
1人の人生を精一杯生きていらっしゃる先輩の方のお話を聴かせて頂く
という気持ちで、接したいと想っていました。
同情や共感なんて、生意気なこと云えませんが、
その方の人生をリスペクトすることはできると吽馬易は考えていました。

山下さんとお逢いして、吽馬易はまず、握手を両手でしました。
これは、吽馬易がいつもお逢いした方に行う、挨拶でした。
吽馬易は、手の平には手相があり、その手相はその方の人生や存在そのものであり、
その手の平と手の平を合わせる握手は、
その方の人生(歴史・存在)と私の人生(歴史・存在)のハグだ、
と想っているからでした。

握手の際に、伝わることがたくさんあります。
温かい手、冷たい手、分厚い手、か細い手、その方のオーラやエネルギーといったものまで、

言葉では表現できないコミュニケーションがそこにはあります。

握手をして、山下さんをじっと見つめていると、なぜか、山下さんの眼が潤んでいるように見受けられました。
吽馬易は、もしかして、強く握りすぎたのかと想い、はっと握っている手を緩めようとすると、

グッと握り返してくれている山下さんのエネルギーを感じました。

しばらく、吽馬易は、言葉にならない、山下さんの気持ちを手の平から受け取ろうと
静かに、握っていました。

そして、
吽馬易:「実は、私は手相家でして、・・・」
握っている手の平を両手で包むようにして、
吽馬易:「手の平には、山下さんの人生が刻まれているんです。」
なので、
吽馬易:「手の平は、山下さんの人生や今まで歩まれた歴史、など」
吽馬易:「山下さんの存在そのものだと想っているんです。」
吽馬易:「握手は、山下さんの人生と私という存在のハグ」だと想っているんです。

山下さんは、そんな風に握手のことを考えているなんて、
不思議な方だなぁと吽馬易をみながら、話し始めました。

山下:「あの日から、今までいろいろなことがありました。」
山下:「大切な息子を亡くし、家も思い出も失くしました。」
山下:「今は、この仮設住宅に住んで、日々を一生懸命生きています。」
山下:「ふと、なんともやるせなくなるときもあります。」
山下:「生き抜くことを考えています。それが、亡くなった息子との約束だからです。」
山下:「手相家の吽馬易さんでしたね。どうして、震災に私たちはあってしまったのだろうか?」
山下:「自然だから仕方ない。」
山下:「仕方ないことなのは、わかっているんですが、・・・」
山下:「仕方ない、でもね、・・・」
言葉を詰まらせながら、ゆっくり吽馬易に問いかけます。
山下:「手相って何がわかるのですか?」
山下:「もし、あの日の意味を、・・・、納得できる意味を教えていただけるのなら、・・・」
山下:「教えてほしいのです。」
山下:「前に進みたい、けど、心のどこかにどうしても穴があいているんです。」

静かに、ただ、うなずきながら、
じっと、山下さんの手の平を、肉厚でぷにゅぷにゅした手で包みながら、
吽馬易は、聴いていました。

おもむろに、山下さんに話しかけました。
吽馬易:「手相は、未来からのメッセージです。未来の可能性を教えてくれます。」
吽馬易:「過去の出来事は、どんな風に感じていらっしゃるかが手相に刻まれています。」
吽馬易:「手相には、山下さんの今と未来のメッセージがあります。」

吽馬易:「手相は、今、もっとも伝えたいメッセージを教えてくれます。」

もし、良ければ、両手の平を観させてもらってもいいですか?
山下さんは、さっと、いすに座り直し、
どちらの手を差し出したらいいのか、困惑しながら、手のひらを吽馬易の前に近づけました。
山下:「右手ですか?左手ですか?」
吽馬易は、ゆっくり差し出された手の甲を包むように支えながら、
吽馬易:「両手とも大切なので、まず、両手を一緒に観させてください。」
吽馬易:「うんうんうん、・・・。」
とうなずき、
吽馬易:「左手を観させてください。」
大きく、うなずきながら、
続いて、
吽馬易:「右手を観させてください。」
手のひらを覗き込むように無言で観入っている吽馬易...。

もう一度、両手の平を観させてください。
(これが、吽馬易の手相を観させていただく際のいつもスタイルです。)

まず、両方の手の平を観た最初の印象を伝えますね。
吽馬易:「う~ん、なんと言葉にしたらいいか、とっても、あったかい方ですね。」
吽馬易:「山下さんは・・・。手相が泣いているように感じました。」
吽馬易:「手相が泣いているというのは、変な表現ですが、喜んでいるんです。」
吽馬易:「喜んで泣いているんです。」

吽馬易:「なぜかは、私にもわかりませんが、喜んで泣いていると感じます。」
吽馬易:「何か心当たりありませんか?」
吽馬易:「もうひとつ、両手の平からのメッセージとして、ごめんねって聴こえてきます。」
さらに、続けて吽馬易が語りかけます。
吽馬易:「あの日のことを、山下さんの手の平に聴きました。」
手の平からのメッセージは、
吽馬易:「くやしい」と云っています。
それと同じくらい「憎い」と云っています。
吽馬易:「何にくやしいのか、何が憎いのかはわかりません。」
吽馬易:「もしかしたら、そんな気持ちをずっとこの手の平に握り締めていた。」
吽馬易:「それでも、未来を掴もうと必死だったということを手の平が訴えてくれているのかもしれません。」
吽馬易:「私はただ、手の平からのメッセージを伝えているだけなので、本当のところは私にはわかりません。」
吽馬易:「もしかしたら、あの日のことを、憎まないように、くやしいと想わないように、って、

ご自身の気持ちにフタをしてこられたのであれば、おもいっきり、憎んであげてください。おもいっきりくやしがってあげてください。」
吽馬易:「私は、そんな山下さんのそばにいることしかできないかもしれない。」
吽馬易:「ちゃんとそばにいますから。」

吽馬易のいつもの癖で、手の平からメッセージをもらったら、
我を忘れたように、早口で、話していました。

山下さんは、どっと抑えていた気持ちが高ぶったように、
ただただ、静かに眼に光るものを浮かべて、下を向いていました。

吽馬易は、ただただ、じっと、温かいまなざしで、見つめているだけでした。

山下さんが、ぼそっと
山下:「くやしがっていいんですね。」
山下:「憎んでいいんですね。」
山下:「助かっただけでも幸せなはずなのに、私なんかよりもっとたくさんの家族を亡くした方だっている、・・・。」
山下:「そんな方が笑顔で、話しかけてくれた。」
山下:「私なんかがくやしがってはいけない、憎んではいけない、・・・。」
山下:「ずっと、そう思って生きてきた。」
山下:「・・・」

うんうん、とうなずきながら、
山下さんの声にならない言葉を受け取ろうと身体全身で聴いている吽馬易。

吽馬易は、山下さんの心の奥の柔らかいところに触れているようでした。
吽馬易:「くやしい。」「憎い。」
吽馬易:「その気持ちがあっていい。と私は想います。」
吽馬易:「だって、大切な家族、物、人をいっぺんに失ってしまったのだから。」
吽馬易:「よく、くやしい気持ち、憎しみを持ったままだと、前に進めないって云われるかもしれない。」
吽馬易:「でもね、私は想うんです。」
吽馬易:「持ったまま、一緒に前に進めばいいじゃない。」
吽馬易:「必ず、その先には、未来が待っているのだから。」
吽馬易:「そんな未来が手相には書いてあるんですね。」
吽馬易:「あなたの左手のこの線です。」
吽馬易:「これは一般に太陽線と呼ぶのですが、この線があなたの未来を教えてくれています。」
吽馬易:「どんな意味があったかは、今、何度、山下さんの手の平に問いかけても返事がありません。」
吽馬易:「ただ、その意味を見出している未来の山下さんがいるってことは教えてくれています。

右手だと、この線です。生命線から縦に伸びる線、・・・。」
吽馬易:「今、おいくつでいらっしゃいました?」  
吽馬易:「45歳でしたね。」
吽馬易が中指で、生命線を小さくなにやら刻みながら、
吽馬易:「50歳のところですね。ちょうど縦の線のはじまりの生命線の場所は・・・。」
吽馬易:「あと、5年です。私の手相では、運気の始まりを誕生日から1年としています。」
吽馬易:「確か誕生日が今月ですね。3月30日、で46歳ですね。」
吽馬易:「正確には、あと4年ですね。」
吽馬易:「私が想うに今は、意味を考えるタイミングではないだけなのかもしれない。」


山下さんは、吽馬易の言葉を聴きながら、
自分の手の平をそっと覗き込みながら、うなずいていました。

山下:「こんな胸のうちを話したのは、はじめてです。」
山下:「最近でこそ、少なくなりましたが、たくさんの方のボランティアの方に助けてもらいました。」
山下:「助けてもらうたび、優しくしていただくたび、私たちも下を向いていてはいけない。」
山下:「前に向いて進まなきゃって、気持ちをおこしていたんです。」
山下:「立ち止まってもいいんですね。」

吽馬易は優しく微笑みながら、
「うんうん」と口の中で言いながらゆっくり大きくうなずいているだけでした。



ふと、時計を観ると、1時間以上もおじゃましていました。
吽馬易には、あっという間でした。


最後にもう一度、握手をして、山下さんをお別れをしました。

吽馬易は、少しでも悲嘆のケアのお手伝いができたのであれば嬉しいなぁと想いながら、
自分がどれだけお役に立てたか?反省しながら、

隣のお家をノックするのでした。


(この物語は、すべてフィクションです。登場する人物、その他、すべて架空のものです。ただし、手相に関する記述については、できる限り鑑定の際に用いる内容に準じております。)

 

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