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 Procrastinationから抜け出す方策の続き。

 

 ④人の助けを借りる:一緒に取り組む同志や、励ましたり尻を叩いてくれるサポーターを見つける、うまくやれている人を真似てみる、など。

 →うん、これは大切。大学院の修論や査読論文は、一緒に取り組む同級生と熱意あふれるチャーミングな指導教官の存在なしには成し得なかった。でもそもそも、論文はタイヘンだけどやりたくてやってることだったからなぁ。Procrastinationって、やりたくないけどやらなきゃいけないことをやるときに生じる現象だよね…。

 

 ⑤成功体験を積む:経費精算を締切1日前までに済ます、といったProcrastinationを逆張りする成功体験を積み、「自分でも出来る」という自己効力感を培う。

 →自己効力感も、大切なのはわかる(ちなみに自己効力感とは、何か課題があったとき、それをどうやったらクリアできるかの方策を編み出す能力を自分は持っている、そしてその方策を実行に移す能力もある、という認識のこと)。

 Procrastinationは、「やっても出来ないかも」という失敗への恐れが原因であることが多い。やればできる、という根拠のない自信より、どうやれば出来るかをわかっている、という自己効力感のほうが効果的であり、そのためには実際の成功体験がモノを言う。

 但しこれは、ある種の鶏と卵。まず、最初の1歩を踏み出すためにProcrastinationを乗り越えなければならない。さらに、1歩を踏み出せても、成功できずに失敗したら元も子もない。従って、成功確率が限りなく100%の、易しいチャレンジから始めなければならない。  

 Procrastinationと無縁の人たちは、小さい頃から成功体験を積み、時間をかけて揺るぎない自己効力感を培っているように見える。でもここにも落とし穴があって、成功体験ばかりしていると、失敗を恐れてリスクテイクできなくなるというリスクも生じるのだ。

 

 いやぁ、やる気がないときは、どんなに有用な情報に触れても、ネガティブに捉えちゃうもんだなぁ、と我ながら感心する。もちろん、仕事をやる気は全然喚起されない。ググりを続ける。

 

 ここで面白い単語を見つけた。Pre-crastination。Procrastinationと反対の意味を持つ造語で、カンタンに言えば「前倒し」。2014年ペンシルベニア州立大学(当時)のRosenbaum博士らが、複数の実験を通じて、大学生たちが余計な労力を費やしてでもタスクを出来るだけ早く済ませようとする傾向を見い出し、Pre-crastinationと命名した。先送りよりはいいんじゃない、と思うが、「余計な労力を費やす」という点がミソである。早く済ませれば余分に報酬がもらえるとか、マイナスを補って余りあるプラスがあるならともかく、結果は変らないのに余計な労力を費やして前倒しをするのは非合理的ではないか。

 でも実は、Pre-crastinationは実生活の中でも日常茶飯なのだ。論文を読んだジャーナリストが挙げたPre-crastination「あるある」の一例は;

 ・受け取ったメールの質問に即レスする(結果、いくつかの質問を読み飛ばし、再度追伸メールを送るハメになる)

 ・請求書はすぐに支払う(期日まで先延ばしすれば、その分利息が儲かるのに)

 ・意思決定を早くし過ぎて、あとで後悔する(もっとちゃんと情報収集してから判断すべきだった…。

 

 言われてみれば、私自身も「あるある」である。メールに即レスした直後、おずおずと「追伸」を出すのはしょっちゅうのこと。公共料金や税金の類は全て銀行口座かクレカの自動引き落としだし、学会の年会費などの請求書は、受取った瞬間にネットバンクで手続する。

 数日前は、メルカリからの「〇〇の発送をお願いします」というメールのタイトルを見ただけで、買い手からのメッセージも読まずに即梱包してコンビニで発送して、発送通知を出そうとして初めて「間違えて購入したのでキャンセルさせてください」というメッセージに気づいた…。平謝り、寛大な買い手様は甘受してくださったが…。              ・・・(下)に続く。。。