それは、『 古生物食堂 』を上梓した直後のイベントでのお話でした。
知人から「食べるの前に、飼う、じゃないの?」とのご指摘をいただいたのです。
…
……
………ごもっっとも。
そこで、すぐさま編集さんに相談し、「どうせなら、 古生物食堂 の料理監修のように、動物園と水族館のプロにも監修していただき、古生物を飼育するためには、どのような施設が良いのかをめざそう」と方針が決定。
当初は、動物園だけだったのですが、「あ、これ、水族館もやった方が良さげでは?」ということで、『 古生物動物園のつくり方 』と『 古生物水族館のつくり方 』の2企画を始動させました。
まだコロナ禍前のお話です。
かねてより、岡山理科大の林さんに「動物園と水族館によく知っている人がいますよ」とお聞きしていました。そこで、林さんにご紹介いただきまして、
・『 古生物動物園 』は、天王寺動物園の獣医師である佐野さんに、
それぞれご監修いただくことに決まりました。
本書の制作は、以下のような流れです。
まず、林さんを含め、総勢17人の古生物学者のみなさんに、それぞれの専門分野の古生物について取材。可能な限りわかっている生態や参考になるであろう現生種などの情報を頂きます。
その情報を整理して、佐野さんと伊東さんに
「こんな古生物がいるのだけれども、飼育するとすれば、どのような施設・方法・餌などがふさわしいです??」と逐次取材を行いました。
このとき、「予算と面積は問いません」との条件付きです。
このとき直面した問題が、野生動物として、現代に“出現”した古生物を、動物園や水族館で捕獲して飼育するという、その“大義名分”です。
『 古生物動物園 』と『 古生物水族館 』の”世界線”では、『 古生物食堂 』と同じく、絶滅した古生物が現代に”出現”します。
ただし、『 古生物食堂 』のときよりも、時間的には少し経過していて、”出現”した古生物は人類活動にも大きな影響を与えるようになっています。
つまり一部は捕獲され、愛玩化されていますが、一部は家畜を襲うなどもするようになりました。
ここに至って、世界は「国際自然史保護連合(IUCNH)」なる組織を国連に設立。
ときには軍事力も使って、古生物の保護等を統括することを決断。
……とはいえ、その保護にも優先順位を決める必要があり、「国際古生物保護条約」も定めて対象古生物をカテゴリー分けし、そのカテゴリーに応じた対応をとることを決めました。
本書の動物園と水族館は、IUCNHの指定組織として活動することになります。
古生物は、謎の多い生物ばかりです。
いや、そもそも生態が完全に判明している古生物は、ほとんどいないといえるでしょう。
”こちらの世界線”でも、多くの研究によって少しずつ明らかにされています。
その意味で、「古生物と相対するためは、まず、古生物をよく知ること」が大切となり、IUCNH指定の動物園と水族館では、日夜研究が進められています。
その意味で、本書に登場する動物園と水族館は、研究組織でもあり、そして、もちろん、普及啓蒙の最前線を担う組織でもあるのです。
……という“大義名分”でさまざまな情報を構築し、『 古生物動物園 』では、『 古生物食堂 』でもお世話になりました漫画家の黒丸さんにイラスト原案をつくっていただきました。
その後、そのイラスト原案をもとに、筆者の妻である土屋香が清書を担当。
一方、『 古生物水族館 』では、ツク之助さんがイラストを全担当しています。
コロナ禍の中、取材に応じていただきました皆様に重ねて感謝申し上げます。
本書は、いわゆる”子ども向けの「飼えたら楽しいね」の本”ではありません。
「古生物を飼うためには、何がどのように必要か」という点に絞った1冊です。
こうした思考実験がお好きな方々、「飼う」ということに知的好奇心をくすぐられる皆様に、お楽しみいただければ幸いです。
監修担当の複数の研究者から
「こんな動物園や水族館があったら、そこで働きたい」
とお言葉をいただきました(感謝)。
そんな世界をみなさんもいかがでしょうか?
こちらは、hontoへのリンク。
あわせて、こちらもどうぞ。
姉妹本です。
”似た世界線”の本で、こちらは日本の古生物と観光に特化しています。