楓は拒否反応もなく、どんどん回復していった。楓自信不思議な感覚だった。自分の身体なのに自分の身体じゃないようなそんな感じだった。それがわかるのはずっと先のことになる
ママ「明日退院だって。楓なんかすごい元気みたいだし」
心臓病がわかってからずっと入退院を繰り返し、ほとんどをベッドの上で過ごしていたのが今はベッドどころか病室にさえ居らず、看護師がどきどき探すほどだった
楓「ねえママ」
ママ「なに?」
楓「私に心臓をくれた人にお手紙書きたい」
ママはその一言を聞いて一瞬顔が曇った
ママ「そ、そうね。お手紙ね」
楓「うん」
楓は退院してすぐかわいいレターセットを買って、心臓をくれた女の子に手紙を書いた
楓「ポストに入れて来る」
ママ「楓、住所も書いてないし切手も貼ってないからそれじゃ届かないよ」
楓「そうか」
ママ「ママが出して来るから」
楓「うん、お願い」
楓はお手紙をママに渡した。しかし、その手紙はポストに投函されることはなかった
6年が経って楓は高校生になった
母「楓、大丈夫?」
楓「大丈夫だって、京子だっているんだから」
楓の高校は電車で30分のところにある。母はいまだに楓の病気のことが心配だった。近所に高校はあるが、楓が少し離れた高校を選んだのには訳があった。それは、陸上をやりたいと思っていた。尾行京子(おぎょうきょこ)は陸上の推薦でこの高校に合格したことは母には内緒である
楓「それじゃ行ってくるね」
楓は希望に胸をふくらませ、家を出た
ふたり~設楽楓の章~3話目終わり