『モンテレッジォ 小さな村の旅する本屋の物語』 内田洋子
を読みました。

最近、本屋さんの店頭でよく見かける本。表紙がなぜか印象的で気になっており、ついに手に入れることができました!

 

 

 

 

この本は、イタリア在住の筆者が、ベネチアにある行きつけの古書店に行くところから始まります。

そこの店主の祖先がモンテレッジォという小さな村の出身で、筆者はそこで本売りを生業としていたという、その小さな村の存在を知るのです。モンテレッジォは北イタリアの山間にあり、ミラノから電車を乗り継いで、それでもまだ行くのが難しいという辺境の地。山に囲まれているため農業で生計を立てることが難しく、特産品となるのは「石」と「栗」だけ。なぜそのような所が「本」を売るようになったのか。。。

筆者のモンテレッジォ訪問の体験を語ったのち、イタリアの歴史、文化を紐解きながら、モンテレッジォにおける「本」の行商人誕生の秘話に迫ります。神聖ローマ帝国の時代から中世を経て、イタリア建国、果てには近代まで。イタリアの交易、言語、文化、戦争の歴史から、本がどのように生まれ、発達し、広まったのかを考察しており、イタリアやヨーロッパの歴史に興味がある人は間違いなく楽しめる本です。また、ヘミングウェイやダンテなど、(残念ながら読んだことはないけれど)有名な文豪の名前も出てきており、文学好きもなるほどと膝を打つエピソードが多いのではないでしょうか。

 

本を題材にしている本は、装丁などのデザインにも非常にこだわりがあります。

この記事の冒頭でも少々述べましたが、表紙からまず惹かれました。タイトルが大きく書いてあるのはもちろん、タイトルの行間にも小さな文字で要旨が書いてあり、また別の行間には筆者の名前が書いてあります。加えて、タイトル・筆者名・要旨それぞれの文字の大きさも異なり、通常の表紙と比べ無秩序だといえます。そういう「ちょっと違う感じ」というのが、またそそるものがあったのかな、という気がしています。また、表紙以外にもこだわりが見えます。本を真上から見た場合の最上部「天」が凸凹になっているのです。最下部の「地」が平らであることを考えると、これも態と作られたものだと思いました。凸凹していることにより、凸のページの出っ張りが少しだけ曲がります。その様子がまたいい味を出しているのです。本の題材にもなっている「古書」のイメージに近づけるための工夫なのではないかな、と思いました。

 

 

 

 

文字も小さすぎず、また綺麗な写真も多く挿入してあり、モンテレッジォの歴史を想像する大きな助けとなってくれるのです。

本好きの一人として、ここまで本に寄り添い、本の発展に尽くしてきた人々へただただ感謝を送るのみです。

また、筆者の内田洋子さんにも、この名もなき人々が紡いだ歴史を再発掘し、遠く離れた日本に紹介してくれたことに感謝を。

 

いい本に出会えました。