八王子スーパー強盗殺人事件考2 犯人の中にあったこだわり | 人はパンのみにて生くる者に非ず 人生はジャム。バターで決まり、レヴァーのようにペイストだ。
平成三大コールドケースの内、「世田谷一家」「柴又上智大生」については単独犯によるものであり、犯人検挙が真相解明に繋がる可能性が比較的高い。が、この八王子スーパーナンペイ強盗殺人事件については、実行犯を検挙することが出来ても真相解明には至らない可能性が非常に高いと見る。実行犯は銃の扱いや殺害に慣れている「プロ」であり、首謀者ではないと目されるからだ。この事件のみ、犯罪のプロによる犯行、残り二つは素人による犯行である。

本件は強盗を装った怨恨目的による犯行であると見るが、被害者中年女性が犯行を知っていたかどうか、或いはスーパー側が犯行を知っていたかどうかによって、その内実は少々変わってくるものである。

注目すべき事象として、21時15分に事務所のセキュリティシステムが作動し(施錠)、直後の21時16分に再び作動(解錠)している点が挙げられる。3人は一旦、事務所の外に出て階段を下りる際に拳銃を手にした犯人と遭遇、事務所へと押し戻されたわけである。この点からも単純強盗説は採用し難い。それと云うのも当日現場で度々目撃された不審者が犯人とするなら、犯人は事務所内にこの3人が居ることは知っているわけである。それなのに事務所を閉めて外に出てくるまで待っていたのだ。このことはこの3人以外に事務所内に人が誰も居ないことを犯人が確定させなければならなかったことを意味している。しかし犯人は拳銃を所持し、加えて粘着テープも携えている。もう1人や2人、中の人数が追加されたところで問題がない。時は1995年である。携帯電話は未だ一般的ではなく、ポケベルの時代だ。犯人の目を盗んだ人間によって陰でこっそりSOSを発せられる心配がない。つまり、3人以外に人が居ても別に構わないわけである。

それなのに犯人はこの3人しか事務所内には居ないことを確定させたかったのである。これは最初から殺害目的だったからに他ならない。怨恨の線をバレなくするために、中年女性の他に誰かを巻き添えに、道連れにする必要があった。しかしその人数は少ないに越したことはない。だが犯人の「努力」空しく、仮にこの3人と一緒に別の誰かが事務所から出てきたとしても、その時はその時、仕方がないと云うことになるだろう。自分の中で大量殺人回避へ向けてやれることはやったのだと云う「良心のアリバイ」が欲しかったのである。

そこまで行かなくとも、単純に考えて、中年女性が事務所の中に居ることの確証がなかったのかもしれない。犯人だってトイレに行くだろうし、或いは冷たい飲み物を自販機で購入する為に現場を離れた瞬間もあったろう。目を離した隙に中年女性が帰宅したのではとの疑心暗鬼に陥ったのかもしれない。そこで中年女性の姿を確認するまではと、外で張っていたのだ。そしてその姿を確認した瞬間、一気に犯行へと突き進んだわけである。