八王子スーパー強盗殺人事件考1 強盗目的か、怨恨目的か | 人はパンのみにて生くる者に非ず 人生はジャム。バターで決まり、レヴァーのようにペイストだ。
以前から散発的に記述してきたが少しまとめてみることとしたい。発生から四半世紀が経過した八王子スーパーナンペイ強盗殺人事件。「世田谷一家」「柴又上智大生」と並ぶ平成三大コールドケースの一つにして最古の事件である。しかしながら犯人逮捕に最も近い事件でもあり、何人もの「被疑者」が浮上してきた。が、検挙には至っていない。

事件概要はウィキペディアに於ける記載に譲るとして…
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%85%AB%E7%8E%8B%E5%AD%90%E3%82%B9%E3%83%BC%E3%83%91%E3%83%BC%E5%BC%B7%E7%9B%97%E6%AE%BA%E4%BA%BA%E4%BA%8B%E4%BB%B6

本件は強盗説と怨恨説の二通りの見立てがある。今夏もフライデーには強盗説産経には怨恨説に基づく記事が掲載され、依然として絞り切れていないことが分かるものである。フライデーの記事に於いて興味深いところは、本件が従業員殺害へと至ったのが偶然の産物であった点にある。金庫を開けようと打ち込んだ銃弾が跳ね返ってリーダー格であった被害者中年女性に当たってしまったのだ、と。中年女性が死亡してしまうであろう以上、残り二人の被害者女子高生も顔を見られているわけだから殺害せざるを得なかったことになるものである。

これまでの流れからすれば、実際のところその順序は分からないのだが、最初に女子高生が殺害され、中年女性はその後に殺害されたものと目されてきた。怨恨説であれば、先に「足手まとい」となる女子高生の始末をつけてから、じっくりと「本命」の中年女性をいたぶりつつ殺害。実際、手数も多い。強盗説であれば、中年女性が口を割らないことに激昂して殺害、その後、顔を見られているために女子高生についても殺害と云う線よりも、先に女子高生を殺害した方が中年女性の口を割らせるには有効なのかなと云うところ。しかしこのフライデー掲載の説に則るなら、その順序が入れ替わる可能性も出ることとなる。偶々、中年女性が被弾してしまったが為に、女子高生もその巻き添えを食ったのだ、と。

しかし、いずれにせよ、女子高生が巻き添えになったことは、どちらの説を採ろうが不変なのである。

強盗説が弱いと感じる理由、それは犯人の金に対する執着の薄さにある。金庫には鍵が差し込まれていたが、ダイヤルの暗証番号が分からなかった。そこで金庫へと発砲したことになるわけだが、しかしそれは1発だけなのである。中年女性は暗証番号を知っていた筈である。また事務所内、被害者の私物等、一切物色の跡が見られず、その足取りは非常に直線的で、うろつくことさえしていない。中年女性はなぜ暗証番号を教えなかったのだろうか。狼狽してまともに口が利けなかったのか。しかしホステス、そしてスナック経営と云うキャリアを持ち、周辺との間には喧嘩も多かったとされるこの中年女性の性格からして、その線は余り考えられないところでもある。

本件が深刻なトラブルを抱えていたこの中年女性に対する怨恨に基づくものではなかったとする理由としてよく挙げられるのが、仮に怨恨目的であった場合、中年女性がレジでの勤務を切り上げて事務所に戻ってから、閉店時間を迎えた女子高生が事務所に戻るまでの間の小1時間、中年女性は独りであったのだからこの間に犯人は犯行に及ぶだろうと云うものである。しかしそれは有り得ないだろうと見る。そんなことをしてしまったなら怨恨目的がバレバレとなってしまい、犯人若しくは黒幕が容易に特定されかねない。怨恨目的だからこそ、中年女性以外の人物も同時に殺害される必要性が生じる。犯人らしき不審者が継続的に現場をうろついていた。したがって寧ろ、深夜営業ワンオペ時に強盗被害が多発したことも踏まえれば強盗目的であった方が、中年女性が独り事務所に佇んでいた時間に押し入るであろう。確かに閉店後に押し入った方が多額の売上金を奪うことが出来るわけだが、中年女性が一人の時であっても既に、コンビニ強盗をする際よりも多額の売上金を奪うことが出来たのだ。そして犯人が現場をうろついていた理由はレジに居た女子高生二人、殊にこの日は非番であった方の女子高生に対する監視と云うことになる。