またまた朝日新聞土曜日朝刊の
本の紹介コーナーで興味が湧いて
北海道のアッチェ水素さんに話した
そして またすぐに
千歳図書館から借り出してくれた
呪いの人形というタイトルだったが
ぼくの頭の中では
呪いと聞けば
すぐに出てくるものは
化け猫
子供の頃に母親から聞いた
佐賀藩の鍋島騒動
番町皿屋敷に登場する化け猫
でもそれは
よく考えれば呪いというより怪談話
怪談話といえば
鶴屋南北の東海道四谷怪談のお岩さんの方が有名かもしれないし
呪いであれば
天神様の菅原道真とか
白髭神社の崇徳院とか
なのに何故か
ぼくは化け猫を思い出してしまう
で この小説
主人公は お梅 と名付けれれた日本人形
人形が意志を持ち
人格を持ち
呪いの人形として名を馳せ
有名になりたい
との強い願望を持っている
その設定が
はなから面白く
意外でもあったから
ぼくの好奇心を強く刺激してくれた
読んでゆくと
これは普通の怪談話ではなく
一種のお笑い噺だった
愉快なエンターテイメント小説
それもそのはず
筆者はお笑い系芸人だという
それにしても
38歳と若い年齢にしては
様々なことを知っていて
また研究もしたのか
勉強熱心な作家さん
という印象
実に愉快で笑わせてもくれるし
飽きさせもせず
時に涙を誘うような展開もあるし
次も読んでみたいと思わせる
五百年前の戦国時代の話から始まって
いきなり現代に飛んで
今を生きる若者達に見つけられ拾われしながら
その者達を呪い殺そうと試みるのだが
なぜか思うように上手くいかない
五百年の時の差で
お梅の呪いの力が及ばなくなっている
それでも呪いの人形として有名になりたい一心で
現代のことを学びながらひたすら努力する
ひたむきな姿勢が
とても可愛いものに思えてしまって
お梅ファン
になってしまいそうなぐらいだ
お梅を持ち帰った人間で
呪いの対象にされるのは
売れないユーチューバーの成年男子
スポーツジムの受付女子
ぐうたらやる気ない男子
初老のばあちゃん
老人介護施設の死を目前にした入居者
今風な話も歴史的話も
よく研究され考えられてる
途中 おうめ街道とか
ちょっとしたダジャレも交えたりして
とにかくお笑いネタ的に楽しませてくれる
お梅の持ち主が変わる時に
お梅は前の持ち主の所から自分の意思で脱出して
歩いたり走ったりして逃げるのだが
その途中
街の通りで猫に発見され
猫と戦いながら逃げる様子も可愛らしい
お梅は何としても呪いの人形として名を馳せたいのに
相手を弱らせるための瘴気を振りまいてもまるで効かず
相手の負の感情を増幅させて
混乱させて破滅に向かわせようとするのに
何故かその全てが的外れとなり
却ってその相手を幸福に導いてしまう
だから
そんな時には
その人間達に
幸運の人形
なんて思われてしまうのだが
そう思われることは
呪いの人形であるお梅にとっては最大の侮辱
耐えられない屈辱になるのだ
だから そこを脱出して
猫に追いかけられながらも必死に彷徨って
次の持ち主に拾われてゆくのだった
そんなひたむきなお梅はやはり可愛い
なんて言ったら
お梅は侮辱されたと感じて酷く傷つくに違い無い
ハハハハハハハハ
楽しいけど厄介な奴だ
ぼくは本来
お笑いが苦手なのだが
作者の努力のおかげか
この本の笑いは大いに愉快だ
実に楽しめる一冊だった