別れ話(5)
「何か食う?」
「いや・・・あんま食欲無いんだ。」
「じゃあ、とりあえず飲み物頼んどくか。」
宮本さんと私は、それぞれ1杯の飲み物を注文し、話の続きに入りました。 周りには恐らくオール明けであろう若者や、夜勤上がりと思しき集団、朝食を摂りに来たジョギング夫婦などがいて、店内は早朝にも拘わらず割と賑やかでした。
「もう別れたんだろ? 同棲も解消って事になるんだよね?」
「うん。 あ・・・でも、私が出て行かなきゃいけないんだ。」
「出て行くにしても、当てはあるの?」
「うちは実家が遠いからなぁ・・・実家に身を置くわけにも・・・。
うわ~・・・私馬鹿だ。 考えてなかった・・・!」
「おいおい・・・マズイんじゃないの・・・?
あの彼ママじゃ、今すぐ出て行けって言いかねない。」
「だよね・・・。
引っ越せるだけの貯金も無いし・・・。
貯金が貯まるまではあそこに居るしか無いか。」
「いざって時は俺ン家使ってもいいよ。
俺はその間、実家から会社通えばいいし。
ミサミサは俺の定期使えばいいし(笑)。」
「マジで? ありがとう。
でも、なるべくなら迷惑掛けない方向に進めたいから、
もう少し相手の出方を見て考えてみるよ。」
宮本さんは本当に友達想いな人です。
「宮本さんに・・・」
「会社の外では “さん” 付け禁止な(笑)。」
「あ、そう? じゃあ宮本で。」
「野郎じゃねーんだから! まぁイイけど(笑)。」
「宮本に話を聞いてもらって、パニックから抜け出せたよ。」
「だろうな。 なんかメールとかテンパってる感じだったし、
思い余って変な行動に出るんじゃないか心配だったよ。」
「あはは(笑)。 そっか、ありがとう!
でも、もう大丈夫。
まだショックは癒えないけど、時間が経てば・・・」
「まぁ、俺ならいつでも話聞いてやれるから。
でもさ、今の家にしばらく居なきゃいけないってのは・・・
更に傷が深くなるだろうから、なるべく止めた方がいいよ。」
「うん、分かってんだけどね・・・。」
「泊めてくれそうな、信頼できる友達いる?」
「うん。 高校の頃の女友達が一人。
でも分かんない。 まだ何も話してないから・・・。」
「どこ当たっても駄目だったら俺の部屋貸すから。
とにかく今の家は早目に出る!
本気で別れたければ、彼や彼ママとの接点を消さないとな。」
宮本さんのアドバイスで、私がこれから何をすべきか見えた気がしました。 しかし、私の心の中にはまだ不安要素がありました。
「それなんだけど、さっき彼が家を出て行ったじゃん?
多分ね、実家に行ったんだと思うの。
でさ、当然ママに今日の事を報告すると思うんだけど、
なんかすんなり別れられないような気がするんだよね・・・。」
「なんで?
だって、浮気して決定的な問題作ったのは向こうだろ?」
「そうなんだけどさ、今までの向こうの出方を見ると、
自分の非は棚上げで、周りを都合良く扱おうとするの。
だから、もし彼が “別れたくない” ってダダをこねたとして、
ママが息子の肩を持った場合が怖いよね・・・。」
「なるほど・・・。 別れるなら慰謝料よこせ、とかね。
言い掛かりつけて邪魔して来そうだもんな・・・。」
「婚約関係だったのは事実だし、十分ありえる。」
こんな感じで私の不安を打ち明け、2時間くらい話を聞いてもらいました。 一通り話を聞き終えた宮本さんは、帰り際にまたジュースを買ってくれて、 「また何かあったらすぐ連絡ちょうだい。」 と言って、マンションの駐車場まで送り届けてくれました。