21世紀中国におけるドキュメンタリー映画の極北を
切り開いてきたワン・ビン監督の新作である。
舞台は上海の近くにある浙江省の織里(ジィリー)。
おびただしい数の衣類加工工場が密集し、
子供服の生産は全国の8割近くを占める。
中国の経済発展のモデルとされる町である。
映画は、この町をめざしてはるか2200キロ離れた雲南省から
出稼ぎに行く16歳の少女を描くところから始まる。
家族との団欒のなかで、これから始まる出稼ぎ生活への不安と
興奮が示されるが、ぴんと張りつめた肌と血色のよい顔には
中国を支える若い人の希望が見えている。
だが・・・・。
日本経済新聞(NIKKEI STYLE) 映画コラム
「シネマ万華鏡」 2018.2.2.夕刊より
( 映画評論家 中条省平 )