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株式会社 丸信 社長のブログ

株式会社丸信 代表取締役 平木洋二のブログ
包装資材販売、シール・ラベルの印刷、紙器印刷加工業を営む株式会社丸信の社長のブログです。

以下は自分の為の読書忘備録です。長文につき、さらっと流してください。

 

今月の社内輪読会の課題本に山口周氏のベストセラー『人生の経営戦略』を選んだ。50代半ばの私にとってさえも非常に多くの発見があり、稀に見る自己啓発の良書だと感じた。特に20代、30代の方々には強くお勧めしたい一冊だが、人生の後半戦に差し掛かった私たち50代にとっても、これからの人生をもっと豊かに生きるためのヒントが詰まっていると思う。

 

 

 

 

できる限り網羅的に本書のエッセンスを記録しておきたい。あまつさえ、同じ時代を生きる誰かの人生にとって、何らかの参考となれば望外の喜びだ。

 この本は経営戦略理論を人生の戦略に応用しようという試みだが、改めて山口周氏の深い教養と洞察には恐れ入った。とても一つ年下とは思えない。基礎教養が違い過ぎて、絶対友達にはなれないだろうなー

 

・目標設定

 

経営戦略を立てる上で、まず定めなければならないのは「目標」である。企業の目標が「永続」や「人づくり」であるとすれば、私たちの人生における究極の目標とは、一体何なのだろうか。

 

・究極の目標「ウェルビーイング」

本書を読んで私がハッとさせられたのは、人生の目標を、地位や資産といった「点」での成功ではなく、「持続的な幸福感」、すなわち「ウェルビーイング(Well-being)」という「状態」で捉える視点だ。いつ人生の幕を閉じても「自分らしい、良い人生だった」と穏やかに微笑めること。それこそが、私たちが目指すべき究極のゴールだというのだ。

これは、未来のために今を我慢する、という考え方からの決別を意味する。そうではなく、一日一日、「いつも幸せ」な状態を目指すことこそが、人生という長い旅路における、最も優れた目標設定であると著者は主張している。自らを省みると、いつ来るか不明な未来の為に「今」を犠牲にし、自分にも周囲にもストイックにやってきてしまったものだ。

・ウェルビーイングを支える3つの柱

では、その「ウェルビーイング」という状態は、何によってもたらされるのか。本書では、以下の3つの要素がバランス良く満たされていることが重要だと述べられている。

  1. 自己効力感 (Self-Efficacy) 自分には物事を成し遂げる力があり、その能力で誰かの役に立っているという感覚。自分の人生の舵を、他ならぬ自分が握っているという実感。

  2. 社会的つながり (Social Connections) 家族や友人、同僚など、他者と良好で安定した人間関係を築けているという感覚。困難な時に支えとなる信頼関係の存在。

  3. 経済的安定性 (Economic Stability) 高収入や莫大な資産を指すのではない。日々の生活において、お金のことで過度な不安を感じることなく、穏やかに暮らせるという主観的な安心感である。

人生とは、唯一平等に与えられた資源である「時間」という資本を、これら3つの要素へとバランス良く転換していく、壮大な「経営ゲーム」だというのだ。

 

・ 価値創造の源泉となる「3つの資本」

 

ウェルビーイングを構成する3つの要素は、経営学の言葉である「資本」に置き換えることができる。本書が提唱する、時間資本を元手に築き上げるべき3つの資本について3つに分類している。

  1. 人的資本 (Human Capital) 知識、スキル、経験、健康など、自分自身の中に蓄積される無形の資産だ。これが、他のあらゆる価値を生み出すための、全ての土台となる。

  2. 社会資本 (Social Capital) 信頼、人脈、評判といった、他者との関係性の中に存在する無形の資産。これは、確かな人的資本があって初めて、本物として築かれるものである。

  3. 金融資本 (Financial Capital) 収入や預金、資産といった、目に見える金銭的な資産。これは多くの場合、高い人的資本と豊かな社会資本がもたらした「結果」としてついてくるもの、と位置づけられるべきだろう。

私が本項で最も重要だと感じたのは、資本を築き上げる「順序」である。

人によっては、金融資本、つまり「お金」を直接的に、そして何よりも優先して追い求める方もおられるだろう。私自身も、若い頃はそうした価値観から自由ではなかった。しかし、本書はそのアプローチを、戦略として「筋が悪い」と断じている。なぜなら、スキルや知識という人的資本の裏付けがないままでは、他者からの本質的な信頼(社会資本)は得られず、結果として得られる金融資本も砂上の楼閣のように脆いものになりがちだからだ。

人生の経営における王道は、まず「時間資本」を「人的資本」に集中投資することだ。自分の時間を投じて良質な経験を積み、スキルを磨き、知識を深める。そうして人的資本が高まると、自然と社会資本(信頼・人脈)が形成されていく。そして、その信頼がお金に換わる機会をもたらし、結果として金融資本が安定的に蓄積されていく。

この「時間 → 人的資本 → 社会資本 → 金融資本 → ウェルビーイング」という価値の変換プロセスこそ、持続的な幸福を実現するための、基本にして最強の戦略であると山口氏は主張しているが、我々の世代の多くの方は共感してもらえるのではないか。最初からお金だけ目指してはダメで、まずは何よりも自分を仕事や自己啓発で磨かねばならないということだ。

 一方で仕事のできないうちからワークライフバランスを振りかざし、できるだけ働かない、自己啓発もやらないという若い世代の方には警笛を鳴らしておきたい。(自社にも多少いそうだ)

 

・どこで戦うか

 

我々のような後継経営者は戦う場所を選べない場合もあるが、優れた経営者は、まず自社が置かれている市場、つまり「外部環境」を冷静に分析するものらしい。同様に、私たちがどの業界、どの場所で戦うかという「ポジショニング」は、その後の人生を大きく左右する。

・ポジショニング戦略とファイブフォース分析

経営戦略の大家マイケル・ポーターは、「業界の構造が、その業界の平均的な収益性を決める」と喝破した。これは、個人の努力だけでは覆しがたい、構造的な優劣が存在することを示唆している。(未だに構造的不況業種に拘泥している私には耳が痛い)

その業界構造を分析するツールが、有名な「ファイブフォース分析」。これは、以下の5つの力(Force)が、その業界の魅力度(個人で言えば、価値を発揮しやすく、報われやすいか)を決めるとする考え方だ。

  1. 業界内の競争の激しさ: 同じようなスキルを持つ人が大勢いる分野は、熾烈な競争に陥りやすい。

  2. 新規参入の脅威: 参入障壁が低く、誰でも簡単に始められる仕事は、常に新しい競争相手に脅かされる。

  3. 代替品の脅威: 自分の仕事が、AIのような新しい技術やサービスに取って代わられてしまう可能性。

  4. 買い手の交渉力: 買い手(雇用主や顧客)の力が強く、自分の価値が買い叩かれやすい状況。

  5. 売り手の交渉力: 自分の専門性が高く、供給者が少ないため、有利な条件で取引できる状況。

【人生戦略への応用】 このフレームワークを個人のキャリアに当てはめてみると、多くのことが見えてくる。例えば、自分が今いる場所、あるいはこれから行こうとしている場所は、構造的に「儲かる」場所なのか。代替品の脅威に晒されていないか。自分の交渉力は強いのか、弱いのか。こうした冷徹な外部環境分析なくして、闇雲に努力しても、それは報われない徒労に終わる危険性があるのだ。

・ブルーオーシャン戦略:「レアな人材」になるには

ポジショニング戦略が既存の市場から魅力的な場所を選ぶという考え方であるのに対し、競争のない市場(ブルーオーシャン)を自ら「創造する」というアプローチが「ブルーオーシャン戦略」である。

これを個人のキャリア戦略に応用した「複数のスキルや専門性を掛け合わせることで、代替不可能な『レアな人材』になる」という考え方は、本書の重要な指摘の一つだと思う。

一つの分野でトップに立つのでさえ至難の業だ。しかし、「3つの異なる分野で、それぞれ上位20%に入る」ことは、より現実的な目標と言えるだろう。単純計算で、1/5 × 1/5 × 1/5 = 1/125。これだけで「125人に1人」の稀有な存在となり、競争の土俵から降り、自分だけの価値を提供できるポジションを築くことができる。私自身、まったく意識せず、この歳まで来てしまった。もはや日暮れて道遠しだが、これからは少し意識すべきだろう。

 

・何で戦うか

 

外部環境(どこで戦うか)の分析と同時に、自分自身の強み、つまり「内部環境」を深く理解し、磨き上げることもまた不可欠だ。自分だけが持つ独自の資源(リソース)こそが、持続的な競争力の源泉となるからである。

・リソース・ベースド・ビュー(RBV)とVRIO分析

「企業の競争優位の源泉は、外部環境だけでなく、その企業が持つ独自の内部資源にある」とする考え方が「リソース・ベースド・ビュー(RBV)」だ。

そして、その資源が競争力の源泉となりうるかを評価するフレームワークが「VRIO(ヴリオ)分析」である。

  • V (Value: 経済的価値): その資源(スキルや経験)は、そもそも市場で価値があるか?

  • R (Rarity: 希少性): その資源を持つ人は、他にあまりいないか?

  • I (Inimitability: 模倣困難性): 他の人が、その資源を簡単には真似できないか?

  • O (Organization: 組織): その資源を活かすための、働き方や環境が整っているか?

【人生戦略への応用】 このVRIOフレームワークは、強力な自己分析ツールとなる。私たちが自分のキャリア資本を棚卸しする上で、特に注目すべきは「模倣困難性」ではないか。価値があり希少なスキルでも、簡単に真似できるものでは、優位性はすぐに失われる。習得に長い年月を要する専門性、他の誰も経験したことのないようなユニークな原体験、あるいは天賦の才。そうした、他人が簡単には模倣できないものこそが、人生における長期的な競争優位の源泉となるのだ。

私自身のスキルをこのような視点で観たことはなかったが、若い頃からこう考え、行動し、自己啓発すべきだったとも言える。もっと尖った経営者に成れたであろう。

・打率より打席数

では、どうすれば「模倣困難」な人的資本を築けるのか。その有効なアプローチとして本書が示すのが、「圧倒的な量の試行錯誤」である。

質の高いアウトプットは、天才的な閃きから生まれるのではない。「質」は、膨大な「量」の実践から生まれるのだ。これは、私が本書で最も感銘を受けた視点の一つである。ピカソも、エジソン、バッハも、例外なく驚異的な多作家・多産家だった。

アウトプットの量を増やす過程で経験する、無数の失敗や試行錯誤。その泥臭い積み重ねこそが、誰にも真似できないユニークで深みのある経験やスキル、すなわち「模倣困難」な人的資本を形成していく。完璧な一打を狙ってバットを振らない選手になるのではなく、打率を気にせず、とにかく打席に立ち続けること。その勇気こそが、結果として自分だけの強力な内部資源を築き上げることにつながるのだ。山口氏は失敗のリスクよりも1本のヒットから得られるベネフィットがいかに大きいかを説いている。

 実はこれに関し、私において一点だけ挙げるとしたら、これまで社内に様々なユニークな仕組みを導入してきたことだろう。「委員会制度」「お役立ち」「直接申告書」等々、沢山のものを試し、うまく行ったものだけを残している。組織づくり、仕組みづくりにおいて「打席」には誰よりも立ったはずだ。

 

・オプション・バリュー

 

「オプション・バリュー」とは、一言で言えば、「将来何かを“選べる”という権利そのものが持つ価値」のことである。重要なのは、それが「義務」ではなく、あくまで「権利」であるという点だ。

未来がどうなるか正確に予測できないからこそ、いざという時に「AだけでなくBも選べる」「この道がダメでも、別の道がある」という状態に、大きな価値が生まれる。つまり、オプション・バリューとは、不確実な未来に対する「保険」であり、人生の「自由度」そのものだと言える。

一本道しか用意していない人生は、その道が絶たれた時に行き詰まってしまう。この戦略は、未来を正確に予測するのではなく、「予測できない未来」に柔軟に対応するための、賢明な備えなのである。

 山口氏は「成功者」ほどオプション・バリューを持ちながらリスクをコントロールしている、失敗者は大胆にリスクを取り過ぎていると指摘してます。ビル・ゲイツも、Googleの創業者もミック・ジャガーも大学に籍のある状態で起業して、成功を確信してから大学を辞めていることを指摘しています。

 一つのことに全てを賭ける潔さも美しいが、変化の激しい現代においては、リスクを抑え複数の可能性に賢く投資する戦略眼こそが、豊かな人生を経営する上で不可欠なのかも知れない。

・成長の機会をデザインする(仕事は最も成長する人に)

内部資源である人的資本を、継続的に強化し続けるためのもう一つの重要な戦略が「常に成長できる環境に身を置き続ける」ことだ。

「仕事は、それを最も安定してこなせる人ではなく、その仕事を通じて最も成長しそうな人に任せるべきだ」という。これを個人のキャリアに当てはめれば、自分が楽にこなせる「コンフォートゾーン」に安住していては、成長は止まってしまう、ということだ。

もし今の仕事に「慣れ」や「飽き」を感じているなら、それは危険なサインかもしれない。勇気を出して、少し背伸びが必要な「ストレッチゾーン」の仕事に挑戦する。あるいは、得意な仕事は後進に譲り、自らは新たな役割に挑む。常に自分を「学習者」「挑戦者」の立場に意図的に置き続けること。それこそが、自身のVRIOを高め続ける上で、極めて有効な戦略だと。自分を省みると、最近少し安住しちゃってるかもと反省させられた。

 

・社会性

 

ここまでの戦略は、市場での競争という側面が強かった。しかし、現代の経営学では、企業は社会の一部であり、社会との共存なくして持続的な成長はない、という考え方が主流となっている。その代表的なコンセプトが「CSV」だ。

・CSV(Creating Shared Value:共通価値の創造)

CSVとは「社会課題の解決を事業の核心に据えることで、社会的価値と経済的価値を同時に追求する」という経営戦略である。利益の一部を寄付するといった、従来の「企業の社会的責任(CSR)」とは一線を画す。社会課題の解決そのものをビジネスチャンスと捉え、事業活動を通じて利益と社会貢献の両立を目指す「戦略」だ。

【人生戦略への応用】 このCSVの考え方は、私たちのキャリアや生き方を考える上で、非常に重要な示唆を与えてくれる。それは、「自分の仕事が、社会をどのように良くしているのか」という問いを持つことの重要性だ。

  • 自分の利益(経済的価値)を追求するだけでなく、

  • 自分の仕事を通じて、誰かの課題を解決したり、社会に貢献したりする(社会的価値)

この二つの円が重なり合う領域に、自身のライフワークを見出すこと。それこそが、第1部で述べたウェルビーイングの重要な柱である「自己効力感」や「社会的つながり」を、最も深く、そして根源的に満たすことにつながるのではないだろうか。

自分のためだけに働くのではなく、誰かのために、社会のために働く。その結果として、経済的な報酬も得られ、自分自身も幸福になる。これからの時代のキャリア戦略は、このような「共通価値の創造」という視点なくしては語れないように思う。

これまでも「お客様へのお役立ち」をベースにして様々な取り組みを行い、「病児保育」の地域への提供では一定の評価を得たが、学び続けている「道経一体経営」をさらに真剣に学び、実践せねばと思った次第だ。先程のユニークなポジションを築くと言う視点からも道経一体思想を深く学ぶ事が重要だ。

 

・人生の晩秋に差し掛かった私の進む道

 

本書によれば人生を四季に例えるなら、50代は豊かな実りの「秋」らしい。この時期の戦略は、これまでのように自分のために資本を「築く」「集中する」といった夏の戦略から、築いた資本を、次世代や社会のために「広げる」「与える」という方向へと、緩やかにシフトしていくべきだと。

自分がエースとして輝き続けることに固執するのではなく、後進を導き、彼らが活躍する舞台を整える。自らが光り輝くのではなく、他者を照らす「ライトワーク(Light Work)」に喜びを見出す。山口氏が「引き際の美学」と呼ぶこの姿勢は、決して「引退」や「敗北」ではない。それは、CSVの考え方にも通じる、より成熟した社会貢献のフェーズへと、自らの役割を徐々に変化させるということかもしれない。とは言え、そういう境地に至るのは結構難しいぞ。

 

・最後に

 

ここに書かれていることが絶対だとか、妄信をお勧めするつもりはない。私など、この本とはまるで違う、行き当たりばったりの生き方をしてきた。長期的な戦略など持ち合わせていなかった。

この『人生の経営戦略』が教えてくれる最も大切なこと。それは、人生には「正解」などなく、自ら問い、考え、実践し、そこから学ぶ。この「一連のプロセス」そのものに価値があるということではないか。

 

もしも、このブログ自体、あるいはこのブログきっかけでこの本を手にした方が、あの時、読んだあの本のお蔭で、、、と晩年にでも思い返してもらえるような方が一人でもいたら嬉しい。

 

当然、丸信の後継者候補の皆さんには経営戦略の復習も兼ねて、この夏、読んで欲しい一冊です。

 

朝のオフィスにて