LBO(レバレッジド・バイアウト)による企業価値毀損を防ぎたい。 | 株式会社 丸信 社長のブログ

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株式会社丸信 代表取締役 平木洋二のブログ
包装資材販売、シール・ラベルの印刷、紙器印刷加工業を営む株式会社丸信の社長のブログです。

以下、私個人の勝手な意見です。


先日、旧知のM&A仲介会社のエージェントが私のもとを訪ねてこられた。

何年ぶりだろう。別の仲介会社に転職したようだ。競業避止で1年間は別の仕事をしてたと。

 

「とある大手企業系のファンドが丸信さんをぜひ買いたいと言っています。非常に高い評価をしていますよ」

売る気はないのだが、この方はM&Aの業界人にしては誠実な印象だったので、一応お話を聞きましょうとなった。途中まで黙って聞いていたが、その買収手法が「LBO(レバレッジド・バイアウト)」であることを知った瞬間、話を遮り、即座にお断りした。

 

検討の余地すらありません。

 

なぜなら、その手法はファンドにとっては「極めて効率的な投資」であっても、残されたそこで働く社員さんや会社にとっては、「毒饅頭」になりかねないからだ。

エージェントも驚いた、私の即答

私が険しい顔で「LBOならお断りです」と伝えると、彼は驚いた顔をしてこう仰った。

「ファンド絡みのM&A はほとんどがLBOです。ただ、実は、この仕組みをよく理解されないまま、金額だけで売却を決めてしまう経営者様が結構いらっしゃるんですよ……」

 

正直、背筋が凍る思いがした。

 

自分の会社が、自分の引退後にどうなるかも知らずに、大切な「城」をお金儲けだけを目的に生きている方々に明け渡してしまう。そんな無知による悲劇が、今、日本のあちこちで起きているのではないか。

LBO、それは残された企業にとって「不条理な仕組み」

ここで、LBOという仕組みを、できるだけ平易な言葉で解説しておく。

LBOとは、一言で言えば「買い手が自分の財布を痛めず、買う対象(あなたの会社)を担保に借金をして、その会社を買う」という手法だ。

  1. 投資家(ファンド)が、買収のためだけの箱(SPC)を作ります。

  2. その箱が、「買収される会社」の資産や将来の利益を担保に、銀行から巨額の借金をします。

  3. その借金を中心に調達した資金で、経営者から株を買い取ります。

  4. 買収後、その箱(SPC)と会社を合併させます。

するとどうなるか。

投資家は、自分の資金をほとんど使わずに会社を手に入れる。一方で、残った会社側には、昨日まではなかった「買収に使われた巨額の借金」を、ドサッと背負わされるのだ。

 

もちろんSPCのエクイティ(資本)とデット(借り入れ)の比率(レバレッジの掛け方)はケースによって違うからすべてのLBOが道徳心のない取引とは言えない。この手法を使えば、小が大を飲み込むことだって可能だ。事実、ソフトバンクは経営規模がまだ小さな時代にこの手法でボーダフォンを買収している。その後のソフトバンクの大躍進を見れば国内LBOの大成功事例と言ってよい。孫さんのように、自ら陣頭指揮を執って事業を劇的に伸ばす才覚や覚悟がある買い手ならまだしも、、

 

ただ金儲けだけを目的に後継者不在の中小企業にこの取引を持ちかける方々は別だ。

企業価値を「毀損」させる取引

LBOを仕掛けたファンドは、経営者を送り込み、その経営者に当然「早期返済」「早期利益率向上」のプレッシャーを掛けるだろう。

彼らは数年後のIPOか転売(イグジット)を目的としているから、その期間内に利益を最大化し、借金を減らし、企業価値を上げたように見せかけなければならない。

しかし、借金という重荷を背負わされた企業で派遣されたコンサルや商社出身のMBA社長が何をするか?

  • 必要な設備の更新を「返済優先」で後回しする

  • 未来の種まきである研究開発費を削る

  • 教育訓練費や福利厚生が、コストカットの名の下に消える

  • 人員削減を検討する

すべては、ファンドが少ない持ち出しで大きな利益を得るため、そして「他人が勝手に作った借金」を会社が肩代わりするためだ。

丸信でいうなら「お役立ちの進化」や「道経一体」の教育などは最初にカットされるだろう。

無知は罪

エージェントさんの話を聞いていて一番悲しかったのは、「提示された高い株価」に目を奪われ、その裏にあるスキームを見抜けずに契約してしまう経営者が一定数いらっしゃるという事実だ。

 

後継者のいない経営者にとって、会社を売却することは、最後の大仕事かもしれない。

しかし、その出口で大企業の看板を背負い、スーツを着て、カタカナ言葉で経営者を煙に巻く人々に騙されないでほしい。
「LBO 失敗事例」で検索すれば私の今回の主張を裏付ける事例をいくらでも見つけられるだろう。

過去のブログでもLBOの問題点について書いている

 

 

これから検討する方、検討中の方へ

後継者不在の経営者の皆様。ファンドからM&Aの話が来たときは、どうか「スキーム」を細かく確認して頂きたい。

「どのような資金調達で買収するのか」
LBOという言葉だけ聞けば、なにか最新の経営・金融用語のように聞こえるが、ここで述べたのが実態だ。

残された会社や社員が不幸になる取引だと気づかずに契約することだけは経営者なら誰しも避けたいはずだ。

 

いくつかの大手企業が後継者不在の中小企業とLBOとの組み合わせに金儲けの機会を見出している。

言葉巧みにアプローチしてくるだろう。

 正直に告白すれば、誰もが知る大企業の名を出され、丸信を指名だと言われ、自尊心を擽られた自分もいた。しかし、その甘い誘いの裏にある冷徹な計算に気づいた時、強い憤りを感じ、このブログを書くに至った。

 

まだまだ修行が足りない、、

土曜日の朝、リビングにて