ガバナンス | 株式会社 丸信 社長のブログ

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株式会社丸信 代表取締役 平木洋二のブログ
包装資材販売、シール・ラベルの印刷、紙器印刷加工業を営む株式会社丸信の社長のブログです。

私は3月が最も忙しい。

25卒向けの会社説明会も数回開催する。早期選考の面接も始まった。

2月決算なので3月から新しい期(57期)に入った。早いもので社長業も15年目のシーズンだ。

19日には経営方針発表会を開催。この資料作成には土日も出社した。

正式な決算書が上がってくるまで、あと1か月弱掛かると思うが、前期は連続増収は維持したものの、減益で着地する模様。

前期に思い切った賃上げを実施したが、インフレで製品出荷量が減ってしまい、工場の稼働率が下がったのが響いた。

 さらに今期は新工場が完成し、夏にかけて既に発注済の多くの設備投資が粛々と実行される。そんな中、予定通りにお仕事を頂けるだろうか、世間や社内が賃上げ機運が高まっている中、今年も思い切った賃上げをすべきか、難しい選択を迫られる。

 

14年前に会社を引き継いだ際は既に多くの投資が行われていて、自己資本比率も20%未満。決算報告に行った銀行で、当時地銀の支店長以下だった私の役員報酬の削減にまで言及される始末。

いかに固定費を回転させつつ、BSを改善していくかが課題だった。まあ、シンプルに売上増だけを考えていればなんとかなった。

事実BSも改善していった。ところが10年くらい経つと工場に空きスペースがなくなった。このままだと成長にブレーキを掛けざるを得ない。土地もなかったが行政と数年越しの交渉の末、隣接地の農地転用が許され、今回の新工場建設となったのだが、交渉が長引いて着工が遅れたところにロシアの侵攻に起因して建設資材が高騰。当初予定の1.5倍の建設費となってしまった。

 

それでも、この会社の歴史上もっとも大きな投資に躊躇はしなかった。

金融機関さんも協力的で建屋の減価償却期間に近い長期返済を認めてくれた。これなら多少の事があっても返済はまず問題ないだろう。

今後大幅に増える固定費をいかに回転させるかに会社の主要課題がまた移るのだ。

怖くないと言えば嘘になるが、他に手もなく、私としては当然の意思決定だ。

 

ただ、自分の寿命を超える返済期間を設定してもらった可能性が高い。少なくとも経営の最前線にいるのはせいぜい後10年だろう。本来そんな私が長期の借金をできるはずがない。

そうなると、後継者育成とガバナンス強化がこれから最も重要な課題になるし、ステークホルダーから求められるのは当然の帰結だ。

 

 後継者育成の為に既に子会社社長に数名就いてもらっているし、中小企業診断士資格の社内講習も実施し、合格者も出し、社会人経営大学院へも今春2名入学する。そして何よりも若い頃から経営に参画できるシステムが社内にはある。

 ガバナンス強化には外部からのコンサルティングをお願いしている。

結論から言うと、ここ数年力を入れてきた労務面以外は、全くお粗末だというご指摘を頂いてしまった。そこで、この規模に見合ったガバナンスを備えるべく、動き出している。

 コンサルの方々との議論の中で今回の新工場への投資が問題となった。

 

コ:こんな大型投資に見合うリターンが本当にあるのですか?

  あるのだったら計画書を見せてください。

 

私:あ、ありません、、

 

コ:本当に計画書も無しでこんな金額貸してもらえたのですか?

  よく貸して頂けましたね、、

 

私:貸して頂けましたよ。

   中長期の計画書など作ったことがありません。

   その必要性を感じたことがないんです。

 

コ:この状態を「ガバナンスが効いてない」と言うのです。

 

私も素人ではない。

多少のリスクは承知の上だが、この工場の必要性も、返済はまず問題がないことも、将来のリターンもその為にこれから力を入れるべきことも、自分の頭の中にはある。

しかし、これらを外部のステークホルダーにも明確に説明できなければならないというのだ。

なんだか不自由だなー、と思いつつも、自分が第一線から身を引いた時に次の社長となる人がこんなこと(無計画での大型投資)しでかしたらどう思うだろうか?

 

いやー、不安、というか、あり得ない。

大怪我するから止めておけとブレーキをかけるかもしれない。

 

長年、社長をやると自分に甘くなる。

私こそが、いつしか忌み嫌ってたはずの「勘ピューター経営」を地で行っているのだ。

 

お客様への提供価値向上を考えるのは楽しい。

実際にお役に立てたと聞けば社長冥利に尽きる思いだ。

だから、多少お金が掛かっても先行して人を採用したり、高額なコンサルを雇ったりして、提供価値向上の為の投資を積極的に行ってきた。

M&Aも守秘義務があるからと、独断してきた。

経営会議には事後報告ばかり。シビアな予実管理も行ってないから、それら投資によりボトムラインが変化することも度々だ。

それが会社のスピードにつながっていることは間違いないのだが、もちろん失敗も多数。しかし前向きな失敗は経験値となって自分の経営能力向上に資するものだと信じてきた。(事実、M&Aなどはそうだ。)

 

一方でこれからはこれら投資の効果や蓋然性やリスクを外部に説明できなければならない。中長期の経営計画やシビアな予実管理も必要だろう。製造業経営の肝ともいえる原価計算も自分なりに精緻に行ってきたつもりが、計算方法は誰にも伝えていない。自分が明日飛行機事故で死んだらどうなるか、、

そう、今のままではリスクだらけだ。

 

もう54歳。しかし、まだまだ自分には「伸びしろ」あると信じたい。

なのでお客様への提供価値を高める活動を弱めるつもりは全くないが、よりガバナンスの効いた組織にして行きながら、経営の引継ぎを始める時期でもあるのだ。