遂にこの本を先月下旬に読破した。
楽しくも苦しい時間だった。この本で紹介・解説された30の経営理論を忘れないように記録に残しておかねば、この読書に投資した莫大な時間が無駄になる。読書はアウトプットしてこそ血肉になるし、記憶に定着し易い。
資源依存理論(以下RDT)
なんじゃそりゃ??
小企業が大企業と如何に伍していくかという話だ。
自社の顧客が仮に1社だけだったとしたら、当然顧客が力を持つ。
ほぼ言いなりになるだろう。生殺与奪権をお客様に握られてしまう。
反対に、自社の製造や販売に必須のある特定の材料や商品の仕入先が1社だけだったら、こちらが買う側といっても実際にパワーを持つのは仕入先になる。これまた生殺与奪権を握られてしまう。
弊社もかつて、ある事業の主要原材料は1社購買だった。
原価に占める割合も大きく、この原材料の仕入価格が事業の競争力を決める重要なファクターだった。にも関わらず値上げの案内などはFAX1枚で押し通され、「嫌なら他所から買えば」と言われる始末。これではこの事業の成長や黒字化も望むべくもない。
事実、赤字が四半世紀続いた。
そこでスイミーは考えた。
仕入先を増やそうと。
最初は海外製に目を向けた。価格は安い。品質は不安。
海外に出向き工場も見た。商社を通して輸入したり、コンテナで輸入したりもした。品質がどうしても日本のレベルではない。
供給もやや不安定で、運命を託す気にはなれなかった。
そこで、国内の競合メーカーにアプローチした。硬直化した統制された業界なので仕入ルートを拓くのは簡単ではなく、話がまとまるのに2年を要したが、ついに良い条件での供給が始まった。これにより当該製品の競争力が高まり、売上も増えていった。
これを受けて、かつて1社購買だったメーカーも態度を軟化。
なんと!営業に来て頂けるようになった。
大企業相手にパワーバランスを少しだけ好転させたのだ。
斜陽なこの事業で弊社が珍しく成長していたから可能になったことは否定できない。成長していなかったらまず無理だっただろう。
じゃあ単独での成長が難しい場合はどうすれば良いか?
共同購買という手もある。数十社、あるいは数百社で連合を組んで、共同仕入することで供給側の大手メーカーと交渉する。
まさに「スイミー」的戦略だ。
スイミー??モヤモヤしている方は↓
これまでは単純な自社の事例を書いたが、本書ではこの「パワー」の源泉となる資源を
①材料・部品・技術
②金銭(取引)
③情報
④正当性(著名企業との取引など)
と説明している。
③の情報について、先日、あるお客様のトップから弊社の競合企業について評され、
「あそこは切れない」
と言われた。お客様の業界に強い競合だ。
「情報もってるから」
怖いことだ。
弊社もメインバンクや準メインは地銀ながらメガ2行とも取引している。その一方で地元の信用金庫さんからも資金調達している。もちろん金利は信用金庫が最も高い。しかし地元大学との産学連携や企業マッチングなど地銀やメガとも少し違った角度から提案をしてもらえる。
自社でも情報を武器とすることを真剣に考えなければならない。
①で特長を出すことは中小企業には簡単ではない。大企業も欲しがる特殊な技術をもっているなら別だけど。弊社は完全なコモディティなので難しい。強いて言うならデザインの強化だろうか。
②は冒頭に書いた取引依存度の問題だ。
④は多くのITスタートアップが自社サービスのユーザーのロゴをHPでPRしているのをよく見かける。
ではパワーの弱い企業が大企業からのこれら外部抑圧にどう対抗していくべきか?
本書では
①抑圧の軽減
最も単純だけど、特定企業からの依存度を下げるしかない。
販路やサプライヤーの開拓がそれにあたる。
②抑圧の取り込み
依存度の高い企業の役員を社外取締役に迎えることで、その相手企業を味方につけるとある。また規制産業にいるなら政治家を取り込むことも一つの手だと。
日本の生保業界で外資が一定の市場を獲得できたのは、これが効いたからだと思ってる。アヒルのCMで有名なA社はかつて米国の元大物政治家を上級役員に迎い入れ、政治の力を使って日本政府に圧力をかけ、A社と競合する保険商品カテゴリーは日本の大手生保が販売できないように、長い間妨害し、成功を収めた。(属国か、、)
③抑圧の吸収
依存する産業にいる企業自体を買収するとある。
これは業界によるだろう。我々がお客様の産業をMAしたらお客様と競合になるだろうし、我々のサプライヤーは巨大で、MAなんてありえない。しかし日本有数の規模になったらサプライヤーのMAはあり得るかもしれない。
著者のメッセージはこれらを組み合わせて、外部抑圧を軽減させて、日本の中小企業に成長することを促している。
それが日本経済の躍進につながりますと。
様々な抑圧の軽減に今日も取り組もう。
よい週末を。