リインフォース | 株式会社 丸信 社長のブログ

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株式会社丸信 代表取締役 平木洋二のブログ
包装資材販売、シール・ラベルの印刷、紙器印刷加工業を営む株式会社丸信の社長のブログです。

ちょうど30年前、小さな生保に入社し、新宿での2ヶ月の研修を経て熊本支社に配属。5月末には羽田から熊本に飛んだ。

 赴任した6月の15日には最初の賞与が出たが、その日に上司からゴルフショップに連れて行かれ、ゴルフ道具を揃えさせられた。

その日の夜に練習場で100球ほど打った後、今週の土曜日にはコースに出るからと命じられる。

スタート時に「ハンデ30な」と一方的に宣言され、プレー後、「ま、上限1万円にしておこう」と言われ、支払いを命じられる。

休日にゴルフに付き合わされた上、お金まで取られるのだ。

その後も度々これが続く、、たまに私が勝ちそうになると、ハーフが終わった時点でまさかの

 

「ハンデ修正!」

 

と一方的に宣言。結局いつも1万円支払っていた。

これが現代の丸信で起こったら、上司は処分の対象になるだろうが、30年前のことだし、今でも地方の営業拠点長はローカルルールを設定するなどの治外法権を持つ。

しかし私のゴルフ嫌いはこの新人時代に決定づけられた。

 

この上司からは今もたまに連絡を頂く。

半年で同期入社の半分が退社するような厳しい会社だったが、この上司の庇護のお陰で私は離職率の最も高い1年目を生き延びた。

ゴルフは差し引いても、かなり可愛がってもらったと言って良いだろう。

たった一年で他の営業拠点に異動されたが、別れの際には涙が出た。

 時は流れ、27歳で家業に入り、40歳で社長に就任した。就任披露パーティを催したのだが、なんと!まさにその同じ日にこの上司の定年退職のお祝いの会を催すと前職時代の先輩からお誘いを受けた。

博多で開催するから必ず来いと。こちらの事情は説明したが、

 

「お前、Aさん(上司)には世話になったよな」

 

と、取りつく島もない。悩みに悩んで、こちらの2次会は先代や幹部社員に任せて、パーティ終了後、遅れて博多に駆けつけることにした。

私の突然の来訪はとても良いサプライズとなった。

皆さんの表情を眺めていて、サラリーマンも悪くなかったなーと思った。

 

さてさて、社長業には定年はないが、統計上、社長の年齢と企業業績には負の相関がある以上、もう後継者育成に軸足を移す時期に来ている。

それで後継候補者に読んでもらいたい本を紹介しているのだが、一切強制はしていないが、欠かさず読んでくれている人もいるようだ。

これまでの本は結構、難しい本だった。今回の本は比較的易しい。しかもすぐに効果を確認できる。

なので、これまでで挫折しそうになった方もこの本は読んで欲しい。

工場部門の方も今回は特に読んで欲しい。

 

 

行動科学の本である。経営だけでなく、セルフマネジメントにも有用な本だ。4年前にこの本から得たセルフマネジメントの知見をブログにしている。

 

 

怠惰で肥満だった私がなぜ、ダイエットに成功したのかを理論立てて解説した。

 

企業の業績は社員の行動の総和で創られる。

良い行動が多ければ企業業績は上がり、悪い行動が多ければ悪化する。

とすれば経営者や幹部の仕事は

「いかに業績向上に繋がる社員の良い行動を増やすか」

に尽きる。ここで言う社員はセルフモチベートできるパフォーマンスの高い上位2割でなく、その他の8割の社員のことだ。

行動科学の観点からこの手法を分かり易く解説しているのが本書だ。

仕事ができない社員がいるとすると、仕事ができない原因は概ね二つだ。

 

①そもそも何をしたら良いかが分からない

②何をすべきは理解しているが、実行継続できない。

 

まずは理解していない社員には①を伝えなけばならない。

マネージャーは元来仕事ができるからマネージャーに選抜されている。どういう行動すれば業績が上がるかを経験から知っている。

自分を客観的に内省でき、自分のどんな行動が過去好業績につながったのが、理解し、伝えることも重要だ。しかし、自分だけの経験に頼るのは危険だ。そこで社内の複数のハイパフォーマーの行動を観察し、ヒヤリングし、業績向上に直結する行動を特定しなければならない。そして、それらを部下に理解させる。

 

その上で②を実行し、継続できるように励まし続けなければならない。

ここで重要になるのが「リインフォース」(強化)だ。行動を増やす手順のことだ。

 

部下が良い行動をしたら、即座にポジティブなフィードバックを与えなければならない。時間を空けたらだめだ。悪い行動をした場合でも即座にネガティブなフィードバックを与えなければならない。

 

忠犬は行動を誉められたら、その行動を繰り返す、行動を叱られたら、その行動をしなくなる。これによってお利口な忠犬に育つ。

これが1時間後に誉めたり、叱ったりしていたら躾にはならない。忠犬もどの行動が誉められたり、叱られたりしたのか理解できないからだ。

 

即時のフィードバックが行動を増やしたり、止めたりすることに繋がる。

 

人はなぜ禁煙できないのか?

 

喫煙が身体に悪いことは誰でも知っている。肺がんのリスクを高めることも。それでも一定の人が喫煙する。

喫煙することで即座に得られるのはリラックスできたり、味が美味しかったりであろうか?(吸わないの知らない)

肺がんや心臓病、ヤニで歯が黄ばむなどのネガティブフィードバックが得られるのは、ずっと後だ。しかもそうなるのかさえ不確定だ。

喫煙したら即座に肺がんになったり、歯が黄ばむのであれば喫煙者はぐっと減るはずだ。リラックス感や味の美味しさは即時得られるから、それらが勝り、禁煙できないのだ。

禁煙外来に通い、イケメン医師や美人医師から来院毎に誉められたり、1日禁煙できたら、何らかのご褒美を得られるなら、比較的容易に禁煙できるはずだ。これらがないからほとんどの喫煙者は晩年体調を崩し、医者から

「喫煙か死かどちらかを選べ」

と言われるまで止めない。

 

話をビジネスに戻そう。

 

我々が犯しがちな過ちは売上○○%UPなどといった求める結果だけを提示し、達成した上位者を誉めて、報酬や昇進で報い、未達成なその他を責める。

これでは何も変えられない。

 

ハイパフォーマー(業績の良い社員)の行動に着目し、業績向上につながる行動を特定し、それを社員に伝え理解させ、その行動を繰り返したくなるようなフィードバックを与える。

 

それを一個人だけがやるのではなく、幹部社員全員で行えば精度が上がる。より精度高く、業績向上につながる行動を特定できたり、よりスピーディーに適切なフィードバックを与えられる。

 

ゴルフが取引先との人間関係構築や健康増進に有用なことは否定しない。私とてやろうと思えばどれだけでも「お客様からのお誘い」を口実にしてゴルフに興じる自由くらいはある。

 幸か不幸か私は若い時にゴルフする度にネガティブなフィードバックを与えられたことでゴルフ好きにはならなかった。

 

あの上司のお陰だと感謝している。


朝のオフィスにて