株式会社 丸信 社長のブログ

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株式会社丸信 代表取締役 平木洋二のブログ
包装資材販売、シール・ラベルの印刷、紙器印刷加工業を営む株式会社丸信の社長のブログです。

やっと梅雨が明けそうだ。

地元は毎年のように線状降水帯やそれに伴う河川の氾濫等に悩まされてきたが、今年は幸いにも心配したほどではなかった。

この時期は中々、早朝や休日のランニングも儘ならない。

この連休中もまさに「晴走雨読」であった。雨のない時間には散歩したり、軽いランニングしたり、雨の間は読書。

この連休でシリーズ3冊を読み切った。

 

 

 

休日に自宅でこんな本を読むものだから、時折、アイスコーヒーを差し入れてくれる家内から

 

「会社危ないの?」

 

と真顔で心配されてしまった、、

家では会社の事はあまり話さない。

 

な、なんとか大丈夫です(^-^;

 

中小企業の経営者向けの雑誌、日経トップリーダーに「破綻の真相」というコーナーがある。この本はその長年の連載からの抜粋と、元経営者や関係者への追加取材などで真相に迫っている。

 

1冊目の冒頭に、成功事例は再現性が低いが、失敗事例は再現性が高いとある。この点には激しく同意だ。

 成功はいくつかの要因の組み合わせで成り立つので、顧客基盤、地域、業界、人的資源、保有技術、財務状況が異なる企業の成功事例を自社にそのまま移植することはできない。チューニングが必要だ。

 しかし、失敗は究極的には一つか二つの判断ミスが原因となることが多い。なので、あれが、あそこが転換点だったかと客観視できる。

読みながら、これら企業の中に多くの共通点を発見できる。

本書では

 

「成功には定石がないが、失敗には定石がある」

「成功はアート、失敗はサイエンス」

 

と表現している。

サイエンスである限りは再現性があり、因果関係が明確なので、学べば避けることができるのだ。

 

倒産と言えば4年前にもこの本を読んでブログにまとめている。

 

 

 

この本からも多くを学べたが、コダックやシアーズなど大企業の破綻の話が多かった。大別すると以下に分類された。

 

・昔成功したビジネスモデルや前提が通用しなくなっていた

・昔の成功がたまたま(あるいは傑出した経営者の嗅覚)であった

・業績挽回への焦りからリスクの高いモノや不正に手を出していた

・現場と経営の一体感がなく、関係が悪化していた。

・生産性や品質などの問題点が放置されていた。

・メインバンクとの間に強固な信頼関係が構築されていなかった

 

今回の3冊は国内の中小企業の事例なので、よりリアリティを感じながら読むことができる。上との共通点も多い。

事例には旧ジャスダック市場ながら上場企業も数社あったし、当社も認定を受けている「地域未来牽引企業」もあった。

 多くの企業が最後はリーマンショックとか、東日本大震災、為替変動、コロナ等によって止めを刺されるのだが、それはあくまで最後のきっかけに過ぎず、その前から運命が決まっていたようにも感じた。

 

本書を大きく分類すれば、倒産の原因は以下ではないか、

 

・市場変化への対応の遅れ

・過剰投資

・特定市場や特定企業への依存

・無理な急拡大

 

・市場変化への対応の遅れ

 

これこそが企業衰退の本質だけど、いざ対応するとなれば、これが一番難しい。

これから人口減少が顕著になり、多くの企業が既存市場の縮小に直面する。遅かれ早かれ、ほとんどの企業が、従来のビジネスモデルや成功事例が通用しなくなる。

経営者は「ゆでガエル」にならないよう、変化の兆しに敏感でなければならないし、まだ余裕があるうちに次の成長の芽を探し、手を打てるかどうかに掛かっている。

 

土俵の真ん中で相撲をとる

 

故・京セラの稲盛名誉会長のお言葉だけど、この本に取り上げられた破綻企業の多くが、土俵際に追い込まれてから「まずい手」を打っている。新事業、新業態ならまだ良いが、銀行に進められるままにデリバティブに手を出して損失出したり、謎の投資話になどに引っ掛かり、致命傷になったりなど。「貧すれば鈍す」なのだ。

 

では中小企業の経営者はどうすれば良いか?

 

まずは世の中の流れ(時流)を知ることではないか、、

日経新聞、日経ビジネス、トップリーダー等には様々な事例が取り上げられている。またタナベ経営、船井総研、合理化協会などのセミナー等で時流を感じることはできる。また業界の会合にもヒントがあるし、お客様の声から大きな流れを掴むこともできるだろう。

その上で新たな取り組みを、まずは小さくやってみる。

 エリア拡大も可能ならチャレンジする。今の製品やサービスを違う市場(層)に提案してみたり、今の顧客層の問題を解決できそうな商品やサービスを付加して販売してみる等、まずは比較的リスクの少ない試みだろう。

それをまだ余裕があるうちにできるかが鍵なのだと本書から教えられた。

 

・過剰投資

 

弊社もかつては自己資本比率も低く、借入の大きな会社であった。

成長の為に投資は必要だけど、ここまでは借りて良いという定石があるのだと思う。有名なコンサルの方が著書の中で

「経験上、借入が年商の1/3を超えると資金繰りが苦しくなる」

と仰っていたし、もっと単純に

 

税引き後利益+減価償却

 

の範囲でしか返済できないのだから、大型設備投資をする際はそれによる減価償却+多少業績悪化しても最低出せるであろう税引き後利益を足せば、可能な返済額は自ずと算出される。そこから返済可能な借入額(投資規模)も決まる。投資によって税引き後利益が増える予定で将来の返済可能額を多く見積もることは危険だ。予定通りに行かないことも多い。

 また個人的な見解を言えば、貸した銀行も悪い。本来銀行こそ、過剰投資に陥りそうな経営者にストップをかけるべきだろう。貸さなければ不幸を生み出すこともなかったのにと思える過剰融資が多い。

また破綻を起こし易い経営者の特性として、「数字に弱い」という共通項が浮き彫りとなった。原価計算していないとか、身の丈以上に投資してしまうなどは数字の勉強してれば避けられる。

 

・特定市場や特定企業への依存

 

これは経営者なら誰しも憂慮しておられるだろう。いつか突然取引打ち切られることもあるだろうし、その市場が変化に急速にシュリンクすることもある。中小企業の中には営業部隊を持たない下請け型の企業も多い。それでも販路を常に広げる努力を怠れないのだ。

 経営を引き継いだ際、1社様の売上比率が10%を超えていた。このお客様からの売上を下げることなく、15年かけて新規開拓に注力することで、今は5%~6%くらい、やはり3%以下が理想だろう。

 

・無理な急拡大

 

私は一度も経験ないのだが、特定の商材やサービスが当たって、大ヒットしたり、新業態の飲食店などが大繁盛することがあるらしい。本書でもいくつかあった。それで気の利いた経営者は多店舗化を考えるのだが、組織や仕組みが整ってなかったり、立地選定の目利き力がなかったりで行き詰まるケースも散見された。出店にも退店にも大きなコストが発生する。今は人の確保も大変だし、教育には時間が掛かる。

 再現性高く2店舗目、3店舗目を出せるかは結構難しいのだ。しかも繁盛店が飽きられることもある。

 東京に営業所を出す際にご挨拶にいった銀座のお客様に言われた事を今も覚えている。

 

「東京では行列のできてる繁盛店も沢山見るけど、数か月後には閉店していることはザラだよ。東京の人は飽きっぽいから気をつけな」

 

ホントそうなのかも、、

 

上記以外で本書から学べた事は、会社を破綻させた元経営者の経験談である。特に粉飾の怖さについては胆に銘じたい。

 

3冊目の冒頭に、日経トップリーダー編集部は結論として

 

失敗を隠すことが最大の失敗。

 

倒産を30年取材してきた結論、破綻の法則がこれだと断じている。

本書によれば、経営者は一度粉飾すると、それを正しい決算書だと思い込むようになり、4年、5年も続けば、本来の業績への興味も失うものらしい。

しかし粉飾こそが経営者が一番避けたい企業破綻への最短ルートだというのが編集部がこれまでの取材から出した結論なのだ。

 

幸いなことに一度もその誘惑に駆られたことはないが、新工場の建設で会社の歴史上最大の借り入れを金融機関にお願いし、実行された。

もちろん年商の1/3を超える規模ではないし、新工場からのCFが仮になくても返済できると確信した上での投資だ。

しかし未来に絶対はない。

未知の大災害や疫病に見舞われることだって無いとは言えないし、いつか苦しい場面が来るかもしれない。それでも粉飾だけは絶対やるまい。


失敗に学ぶってMBAで学ぶより、ずっと重要かも、、丸信の後継候補者の皆さんは必ず学んでおくべき内容と思う。

 

朝のオフィスにて