株式会社 丸信 社長のブログ

株式会社 丸信 社長のブログ

株式会社丸信 代表取締役 平木洋二のブログ
包装資材販売、シール・ラベルの印刷、紙器印刷加工業を営む株式会社丸信の社長のブログです。

今でも鮮明に思い出す「失敗」がある。

これまでこのブログでも触れたことはない。

 

20年以上前、私は地元・久留米市でフリーペーパー事業に参入した。

アメリカでは水曜日に新聞の購読数が増える。その理由は地域のお店のクーポンを集めた集合チラシが水曜日に入るからだとの真偽不明の情報がきっかけだった。

 

集客のお手伝いができるのでは??

当時の私は、丸信に戻って7〜8年経った頃で、お客様に恵まれて、ベテランのトップセールスマンの成績を凌ぎ始めてた頃。眼鏡して社内を肩で風を切るように醜い太った体で闊歩してた、そう、あの頃。誰からも反対されることなく参入が承認された。社内には営業もデザイナーも印刷機もあり、成功に必要なリソースはすべて揃っていると確信していたのだ。

ところが、いざ始めてみると、慣れない美容室、飲食店、エステサロンなどへの営業に大苦戦。不慣れな業界への不慣れな広告営業、そして激しい競合との争い。広告主からは何度も足元見られて、無料掲載や値引きなどを要求されることも度々。

結局、そのフリーペーパーはわずか1年で廃刊となり、撤退を余儀なくされた。

 

久留米に戻って最初の挫折。当時残ったのは「失敗した」「うまくいかなかった」という敗北感だけだった。苦しくて苦しくて、早く止めたかった。当時の社員さんには見通しの甘い事業に巻き込んで、負け戦で無理をさせ、申し訳なく思っている。私の黒歴史の一つだ。

 

 

しかし、今月の社内輪読会で選んだこの本を読み、考えが変わった。

 あの1年は決して無駄な時間ではなく、「丸信が進むべき道」を教えてくれた極めて貴重な失敗だったのだ。

「失敗」が教えてくれた「リピート性」の価値

あの失敗があったからこそ、先代が築き上げた現在も本業である包装資材、シール・ラベル、紙器事業の圧倒的な価値に気づくことができたのだ。

フリーペーパーのような新規広告営業は、毎月常にゼロからの積み上げだ。一方で、私たちの本業はお客様の商品の顔となるパッケージを支える仕事だ。これは一度採用いただければ、商品の販売が続く限り繰り返し注文をいただける「リピート性の極めて高いビジネス」、いわば現代で言うところのサブスクリプションモデルに近い。ここを中心から外さず、競合と差別化する為にソリューションと組み合わせる今のビジネスモデルに辿り着いたのもこの失敗のお蔭だ。


この本こそ今年最後にして、本年私が紹介した中のベストだと思う。初版は9年前のクリスマスなので新しい本ではない。このブログファンの皆さんにも、将来丸信を自分が担うであろうと自負を持つ君にも、読書が苦手な弊社の複数の工場長、品管部長のT君にも必ず読んで欲しい一冊だ。

 

(Geminiにて作成)

上の写真はすべての航空機の搭載されていて、ほぼ破砕不可能な「ブラックボックス」(飛行データと音声の記録装置)。AIが描いたので本当にこんな形してるのかは知らない。事故が発生すると、独立した調査機関がこのデータを分析して原因を究明し、その結果を全ての航空会社で共有して再発防止策を講じる。機体に問題があると分かれば世界中の同型機が改造が済むまで運行されない。だから航空業界は安全性を高め続けているのだ。

 

一方で医療業界には 航空業界のようなミスを病院全体で共有するような仕組みが無く、情報の多くは医師本人による事後報告に頼っている。

失敗が起きても「予期せぬ事態だった」といった曖昧な説明で片付けられたり、内部調査が行われなかったりすることが多く、真相が闇に葬られる傾向がある。なのでいつまでも医療事故は減らないのだ。米倉涼子の決め台詞「私失敗しないので」とほとんどの医師は本気で信じている。これは同じような権威職業の司法でも同じ傾向があるようだ。

 

医療業界に憤りを感じつつも企業経営者としては、航空業界に学ぶべきなのは明らかだ。

 

この本の結論に先に行こう。次のスライド1枚に集約できる。

 

(Geminiにて作成)

 

本書は、失敗を「才能がない証拠」と捉える固定型マインドセットから、「能力を伸ばす機会」と捉える成長型マインドセットへの転換を図ろうというもの。私がフリーペーパー事業で経験した「認知的不協和」(失敗を認めず正当化しようとする心理)を乗り越え、客観的にビジネスモデルの差異を分析できたことが、今の会社の安定成長につながっている。

失敗は「してもよい」ものではなく、成功のために「なくてはならない」ものなのだ。


(Geminiにて作成)

この本にはいくつもの経営への重要な示唆がある。

自分の為の忘備録として残しておきたい。

 

・非難の排除: 失敗が起きた際に個人を責めると、人は保身のためにミスを隠したり、記憶をすり替えたりする「認知的不協和」に陥いる。

 これまで自社ではクレームが起こると原因究明というより個人の責任を追及するような会議が行われていた。品管のメンバーからは減給とまではいかないものの、なんらかのペナルティを導入させて欲しいという声も多かったが、これはこの本の多くの事例から間違いだと分かる。個人を糾弾すればするほど貴重な情報が表に出なくなる。

 

・ オープン・ループの確立: 航空業界のように、ミスを報告しても処罰されず、そのデータを組織全体で共有・分析する仕組みを整えるべきだ。これにより、一人のミスを全社の「改善のための貴重なデータ」に変えることができる。

 


(Geminiにて作成)

 

・マージナル・ゲイン(小さな改善)の積み重ね

印刷工程やデザイン業務、採用支援などの各プロセスにおいて、劇的な変化ではなく1%の小さな改善を無数に積み重ねる手法が有効だ。

複利の効果: 1日1%の改善を1年続ければ、理論上は約38倍の成果につながる。

問題の細分化: 業務を細かく切り刻み、一つひとつの要素を最適化していくことで、将来的に大きな競争力を生み出す。

 

いずれも製造業の弊社には重要で有効な手法だ。弊社で今年から始まった改善提案がもっと機能して欲しいところ。

・ランダム化比較試験(RCT)

ランダム化比較試験とは、評価の偏りを避け、ある施策や行動が本当に効果があったのかを客観的に評価するための研究試験の手法だ。

私たちは、何か新しいことを試して結果が出たとき、「その施策のおかげで成功した」と考えがちです。しかし、実際には他の要因(季節、運、別の施策など)が影響している可能性もあります。RCTは、こうした「評価の偏り」を排除するために用いられる。

この手法の核となるのは、対象をランダムに2つのグループに分けることだ。

介入群: 新しい施策(例:ナッツを食べる、出社時間を早めるなど)を実践するグループ。

対照群: これまで通りの方法を続けるグループ

この2つのグループの結果を比較することで、変化が本当にその施策によるものなのか、あるいは単なる偶然なのかを検証する。

これは案外やられていない。ある施策をやってみようと思ったらまずは小さな二つのグループを作り、施策と成果との因果関係を確かめよという話。要は「ABテストせよ」だ。

 

 ・事前検死(プリモートム): プロジェクト開始前に、あえて「このプロジェクトは大失敗に終わった」と仮定し、その原因を前もって洗い出す会議を行う。これにより、計画段階では見落としがちなリスクを事前に潰すことができる。

京セラの故・稲盛名誉会長も経営CDの中で

「私が新しい事をやろうと提案すると必ず否定的な意見を言う幹部がいて、モチベーションが下がったが、このネガティブな指摘を事前に潰すことで成功の確率を高めた」

という主旨のお話しがあったと思う。懸念点を事前に挙げてもらうことも重要だ。

 

・量から質を生み出す: 完璧なものを一度で作ろうとせず、大量の試作や試行錯誤を繰り返すことで、最終的な品質を高めるアプローチを採用する(陶芸クラスの実験例より)。これは以前紹介した山口周氏の人生の経営戦略にも出てくる話だ。

 

 

上記ブログより引用

『質の高いアウトプットは、天才的な閃きから生まれるのではない。「質」は、膨大な「量」の実践から生まれるのだ。これは、私が本書で最も感銘を受けた視点の一つである。ピカソも、エジソン、バッハも、例外なく驚異的な多作家・多産家だった。

アウトプットの量を増やす過程で経験する、無数の失敗や試行錯誤。その泥臭い積み重ねこそが、誰にも真似できないユニークで深みのある経験やスキル、すなわち「模倣困難」な人的資本を形成していく。完璧な一打を狙ってバットを振らない選手になるのではなく、打率を気にせず、とにかく打席に立ち続けること。その勇気こそが、結果として自分だけの強力な内部資源を築き上げることにつながるのだ。山口氏は失敗のリスクよりも1本のヒットから得られるベネフィットがいかに大きいかを説いている。』

 

企業や様々な個人や組織にも通ずるお話しである。


読み終えて、早速、会社の仕組みを変えて行こうと思ってる。(良いと思ったら小さな事でも即実行するのだ)来年の大きなテーマになりそう。せめて5年前には読みたかった。

 

このブログにまとめる過程で、この本はまさに我々が学んでいる公益財団法人モラロジー道徳教育財団の創始者である廣池千九郎博士が説かれた

「慈悲寛大自己反省」

に通ずるお話しだと思った。

 慈悲寛大自己反省とは自分だけでなく他人にも思いやり(慈悲)と寛大な心(寛大)を持ち、常に自分自身の行いや考え方を深く見つめ直して改善(自己反省)する姿勢を指し、最高道徳の根本原理の一つだ。これは単に失敗を後悔するだけでなく、仏の心にたとえられる深い慈悲心をもって、自分の至らなさを自覚し、より良い人間・社会を目指すための実践的な態度や心づかいだ。 

 思い返すと、大きな間違いを起こす時はいつも、他人を責め、自己反省しない時であった。尊敬する経営者が「何も色んな勉強会に行かなくても経営に必要なことはすべてモラロジーに答えが書いてある」と仰ったが、最近になってその意味を少しづつ理解できるようになった。

 

今年も沢山失敗したが、封印せず、情報に変換して来年の糧としたい。

年末の夜のオフィスにて