シングル・ループ・ラーニング | 株式会社 丸信 社長のブログ

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株式会社丸信 代表取締役 平木洋二のブログ
包装資材販売、シール・ラベルの印刷、紙器印刷加工業を営む株式会社丸信の社長のブログです。

 昨年マンションをフルリフォームした。築30年以上のマンションだから新しいマンションを買えば良いのにとの声もあった。

しかも施工期間中、なんと4カ月もの間、狭いワンルーム暮らし。

 

かなり辛かった。

 

夏が過ぎ、秋も深まり、寒くなり始めた頃にようやく完成。家電も半分以上入れ替えた。中でもテレビは4Kの大きなものに。同時にNetflixと契約したので膨大なコンテンツに飽きることがない。間取りも4LDKから2LDK+収納部屋みたいに大胆に変更して広々とした印象になった。お風呂も広く快適だし、キッチンは家内がショールームでお気に入りを見つけた。偶然とも言えるタイミングで自宅を充実させていたことが、コロナ禍のせめてもの救いだ。

 もうWEB飲み会も3回やった。今週末にもう1回予定している。

結構楽しいものだ。しかし飲み過ぎる。

これまでの飲み会だと事前にヘパリーゼ(しかも高いやつ)を飲んでいたが、さすがに宅飲みでは必要ない。事実、これらの二日酔い防止飲料はWithコロナの下では全く売れていないらしい。

 マスクを縫う為にミシンが売り切れとか、、、何が売れ、何が売れなくなるのか読みは難しい。

 

さて、非常時の経営者として毎日「酒とNetflix」という訳にもいかず、GW明けからは読書量も増やしている。Amazonの中古マーケットで昔の「私の履歴書」を買い集めた。最近のエリートサラリーマン社長の履歴書より、昭和の名経営者のものが断然面白いし、戦前、戦中、戦後という今よりも遥かに困難な状況にあって、名経営者はそれをどう切り抜けたのかヒントが欲しかった。まだすべて読めていないが、どれも高杉良の小説並みに面白い。その他、積読になっていた本を読んだり、昔読んだ本を読み直したりして、アフターコロナに向けて力を蓄えている。

 ブライアン・トレーシーによれば、アメリカの成功者は一日に2時間は読書をするとか。実際、良書を読書する際はいつも新しいアイデアが湧く。

 少し前に知人のコンサルの方がSNSに感想を上げいて買っておいたが、読まなかった本の中に

「世界倒産図鑑」

という本があり、これをGWに読破した。

 25の日米の大企業の倒産が分類され紹介されている。

古いものでは鈴木商店(かつて三井、三菱とも並ぶ大商社であった)、学生時代に通った英会話のNOVA。自分が生保勤務していたこともあり印象深い山一證券、千代田生命、北海道拓殖銀行等のバブル後遺症の金融破綻、丸信でも一部お取引のあったコダック、ビジネススクールでケーススタディのテーマになったエルピーダメモリなど馴染みのある企業の倒産に改めて学べた。

 倒産の種類をこの本では大きく次の5つに括っている。

 

・過去の亡霊型

・脆弱シナリオ型

・焦りからの逸脱型

・大雑把型

・機能不全型(経営と現場の乖離型)

 

読んでみて、要は「攻め」と「守り」のバランスおよび「時流」の読みが大切なのだと思った。

 倒産の多くは最期はオイルショック、バブル崩壊、東日本大震災、リーマンショックなどに止めを刺されるが、実際は

 

・そもそも昔成功したビジネスモデルや前提が通用しなくなっている

・昔の成功がたまたま(あるいは傑出した経営者の嗅覚)であった

・業績挽回への焦りからリスクの高いモノや不正に手を出していた

・現場と経営の一体感がなく、関係が悪化していた。

・生産性や品質などの問題点が放置されていた。

・メインバンクとの間に強固な信頼関係が構築されていなかった

 

そこに大災害や不況が起こって万事休すのパターンが多い。

これは自らを省みて肝に銘じておきたい。

 

私的にはコダックのチャプター11が最も考えさせられた。

世間ではデジタルカメラの時代への対応の遅れと認識されている。

本書では「希望的観測を抑え込めず倒産」と断じられている。


カメラ→フィルム→現像→プリント


という強固は収益モデルをゼロから創り上げ、世界中でその地位を確立したかつての「ザ・ベンチャー」で「巨人」だ。その後も医療用フィルムにも進出するなど決してイノベーションに鈍感だった訳ではない。

 事実、デジタルカメラの普及版と言えるカシオのQV-10が世に出る20年前にデジタルカメラの試作品を完成させている。しかしカメラ→フィルム→現像→プリントという強固な統合的なモデルで長期間潤ったことが、デジタル化の出足を止めてしまい。急速なデジタル化の進展が統合モデルを急速にアンバンドル化した。

(アンバンドル化とは、一括してあるいは一連の流れで提供されていた商品やサービスを、解体あるいは細分化すること)

 

その過程において経営陣も悩んだのではないだろうか?

 

当時一流の人材を多数内包していたはずだ。一方で従来の統合モデルに浴していたのは社内だけでもフィルム関係の研究者、技術者、製造ライン等多数、社内だけでなく、街の現像所など多くの人々がこのモデルの中で生活の糧を得ていたわけで、それが長く続いた時に、デジタル化した未来(今の状態)を完全に読み切り、レガシーを捨て、ドラスティックに舵を切れるだろうか?

 

私は容易でないと思う。

 

状況が刻々と変わる中で、色んな事実が出てくる。

どこかで気づいて、舵を切れば良いのだが、簡単ではない。

人には「見たいものを見る」という習性がある。デジタル化によりフィルムが一切不要になり、デジタルカメラが標準となる未来が来ることを示すような可能性が目に入らなくなるものなのだ。するとプラスシナリオばかりが目に入り、その思考は一層強化される。

これを「シングル・ループ・ラーニング」というらしい。

 余談ながら、印刷業界も無縁ではない。このデジタル化によるフィルムの消滅により製版業という周辺業界が消えてなくなった。あっという間だった。

 

先日、ラベル印刷業界の業界紙に飲料メーカーがラベルレスでペットボトルを発売したとの記事があった。しかも複数の飲料メーカーがだ。

https://www.asahiinryo.co.jp/company/newsrelease/2019/pick_0130_2.html

最初にこの記事を読んだ時、

 

「あーこれは通販や宅配などの特殊用途だけだ、大丈夫。ラベルがなくなる未来が来るなんてある訳ない、ラベルは必要だもん」

 

と心の中で思ったのだ。本当に。

私は自分が見たい未来を見ようとしていないだろうか、、

 

朝のオフィスにて