好きな曲Ⅷ ~山の娘~ | Pacific231のブログ -under construction-

Pacific231のブログ -under construction-

O, Mensch! Gib Acht! Was spricht die tiefe Mitternacht?


過去記事(北の息吹)でもほんの少しだけ触れているのだが、今回はこの曲集について少々。
もともとグリーグの「過ぎた春」(原題は「春」)が大好きで、昔、ウェルドン/フィルハーモニアのLPを愛聴していた。もちろんCDでも買い直し、今も愛聴盤となっている。
この「春」はもともと歌曲なので、原曲を聴くためにグリーグの歌曲集を、これもまた昔に買っておいた。20年以上前、CDがまだ1枚3000円のころで、ジャケット右肩に懐かしい3Dロゴが見える。

 グリーグ: 歌曲集/アンネ・ゾフィー・フォン・オッター(MS),ベンクト・フォシュベリ(P)

  Edvard Grieg: Lieder / Anne Sofie von Otter, Benkt Forsberg [DG 437 521-2]

店頭で偶然見つけたこの音盤、「春」(Våren)のほかに有名な「君を愛す」(Jeg esker Dig)も入っていたので即決購入したのだが、いざ聴いてみて冒頭に収められた歌曲集「山の娘」(Haugtussa)に釘付けになった。正確に言うと第1曲「誘い」(Det syng)の清冽な音の動きに耳を奪われたのである。




歌い出し、どことなく不安をかき立てるようなAllegretto con motoの第一句が音程を変えて繰り返される。これに続くPoco più lentoの第二句がこれぞグリーグ!な旋律なのだ。初めて聴いたとき、スーッとした感覚が体を吹き抜けて部屋の空気が一変したような気がしたものだ。

この第二句は後半が音程を変えて繰り返され、オクターヴの下降で一節が終わる。このときピアノのトリルが逆にオクターヴの上昇を見せるのが心憎い。

連作歌曲集としての筋立ては、どことなくシューベルトの「水車小屋」を思わせる。終曲で小川に安息を求めるところも似ている。しかし詩の出来栄えはミュラーよりガルボルグの方がいいと思った。この終曲「小川で」( Ved Gjætle-Bekken)もとんでもなく素晴らしい出来で、曲締めに相応しいと思う。

 

さて全曲を聴いてすっかりこの曲集の虜になったわけだが、しかしオッターの声質というか幾分籠った感じの発声が、この曲集には少しくそぐわない気もした。しかし、他にこれという音盤がなかなか見つからない。今はマイナーなmp3音源を見つけてそれを愛聴している。

Youtubeもいろいろ漁ったが、アップされているのはほとんどオッターとフラグスタートである。フラグスタートはお国物ではあるのだろうけど、この曲集にドラマティコはちょっと合わない気がする。固定観念かもしれないがプリュンヒルデが歌っているみたいだ。あれこれ探した中ではエレン・ウェストベリ・アンデルセンがまあまあいいかな、といったところ。

 "Det syng"/Ellen Westberg Andersen(S), Jens Harald Bratlie(P)

 

 

ただし上にも書いたように、今のところのマイベストは別にある。Youtubeにないので音源は貼れないが、mp3の手持ちで Kathleen Lotz(S),Milton Schlosser(P)によるもの。せめてジャケットだけでも。

 "Landsmål"/Milton Schlosser, Tanya Prochazka & Kathleen Lotz


グリーグの歌曲をまとめたアルバムではないし、相当にマイナーな音盤らしく少なくとも国内モノは見当たらない。手持ちのmp3音源はよく見つけたものだと思う。
このへん ↓ にあるのでご参考までに。
https://www.amazon.co.jp/gp/product/B00H9PB12A/ref=dm_ws_sp_ps_dp

聴き比べた感じでは、どうもこの曲集にはメゾ・ソプラノよりソプラノ、それもリリック・ソプラノが合うような気がする。若いころのシルヴィア・マクネアーあたりが録音してくれていればなあ。