週末の習慣になったウォーキング。
今週はふと思い立って、懐かしい町を歩くことにしました。
自宅から車で20分。
父方の実家があった町。
小学校の一時期、住んだ町。
駅前に新しくできた駐車場に停めて、すぐの所がもうかつての家。
空き地になっています。
知っていましたが、歩くのは初めてでした。
電柱、当時からあったものかわかりません。
木塀で囲われていたのですが、こうして見ると広かったんだとわかりました。
南側の道路は、記憶より狭い。
太い胡桃の木も跡形もなく、
材木工場はアパートになっていました。
周囲は余りにも変わっていて、スタート早々に涙ぐみそうになりました。
ここに住む前から、ここは祖父母の家だった訳で、近所中に思い出があるのに。
既に知らない町です。
北へ向かって歩き、新しいバイパスを東へ渡り、川へ向かいました。
新しい道は景観を変えるけれど、必死で記憶を辿って、どうやらこの道が当時の道。
農作業にしか使われない小道は、面影を残しています。
しかし、川へ下りることができませんでした。
かつては川原で遊び、川に入り、そして向こう岸の崖を登ったりしたのに。
忙しくてほとんど遊んでくれることのなかったパパと、この川へ散歩に来たことは、
嬉しかった思い出としてはっきりと覚えています。
芽吹き始めた桃の木の下に打ち捨てられた車に心を寄り沿わせる、重たい気持ち。
近所の友達の家は、変わり果てた風景の中で、あるはずの所にみつかりません。
変わらず残っていた店。
煙草も売る、何でも屋さんです。
今ならコンビニといったところでしょうか。
うまい棒、アイスクリーム、肉まん、洗剤、そして大きな瓶に入った蜂蜜がずらりと並ぶ店でした。
家から一番近い商店だったので、お店の匂いまで覚えています。
蜂蜜がなくなっていることを恐れて、中には入りませんでした。
何を買ったらいいのか、わからないし。
幼い頃は祖母に手を引かれて、住んでいた頃は飼い犬の散歩に何度となく通った線路沿いの道。
このお宅の昔風な門だけが、この通りで唯一面影を残すものでした。
散歩中、急に走り出した犬に引っ張られ、この門の手前にある水路に落ち、腕を切ったことがあります。
夏の夕方のことでした。
病院にも行かないささやかな怪我だったのに、今も左腕に傷痕が残っています。
私は覚えている風景を取り戻したくて、めちゃくちゃに道を進みました。
祖母とカゴを下げて卵を買いに行った養鶏場があった辺りへ、彷徨は続きます。