数日かけて読んでいたのはこれです。
「ツリーハウス」 角田光代著。
戦時中に一旗上げようと満州へ渡った祖父母から、
現代をあてなく生きる孫へと、
茫々としかし着実に流れる家族の時間の話でした。
私の母は終戦間近い大連で生まれました。
祖父は駐在先の彼の地で徴兵され、
ロシアの捕虜となった後、
引き上げ船で一家で日本へ戻りました。
境遇は違っても、物語の中で進む時間は、
私たち家族と重なっています。
引き上げ船の中で命を落とす幼児は、
病気でやせ細って帰国の航海が危ぶまれた私の叔父。
ママは私が幼い頃、中国残留孤児が報道されるテレビを見ては泣いていた。
祖母と共に大連へ旅した孫は、
一緒には行けなかったものの祖父から預かった住所を頼りに街を歩き、
写真をたくさん撮って帰ったあの日の私。
著者の作品はほとんど全部読みましたが、
いろんな形の世界が書ける人。
以前からその感覚におこがましくも近しいものを感じていたけれど、
この作品は自分の家族を振り返る、
重たくて大切なはじっこを教えてくれました。