The U.S. Patent Practice -4ページ目

The U.S. Patent Practice

米国での特許実務に役立つ情報を発信しています。

先日の知財実務情報Lab.のセミナーでは、生成AIを使用して従属クレームを生成することにより、出願時クレームを充実させ、早期権利化・コスト削減する方法を提案させていただきました。

 

その後、手元にある素材を使って色々と試しているのですが、この従属クレーム生成については、体感的に、概ね85-90%以上の出来で、使えるクレームが出力できることを確認しています。残りの10数%は、不要な限定の削除、個人的経験から避けたい表現の修正、サポート個所の確認などになります。

 

秘密保持契約と同等のセキュリティが確保されるライセンス(Geminiの場合は「エンタープライズグレードのセキュリティとプライバシー保護」)の下で生成AIが使用でき、出願済・未公開の翻訳明細書をモデルに入力することが許される環境であるならば、実務に十分組み込めるレベルだと思います。

 

セミナーでは、デモ用の明細書 (US 7,657,849 B2の出願時明細書を一部デモ用に変更) に対して、従属クレームを追加する例をご紹介しました。その後、いろいろなプロンプトで試しているのですが、セミナーでご紹介したような複雑な要件を組み込まなくても、以下のポイントを抑えて指示をすることにより、効率的にクレームの追加と確認作業ができるという結論に至りました。

 

・明細書と図面に基づいて従属クレーム X-X を追加して欲しい。

・従属クレームで使用する文言は明細書に記載されているものを使用すること。

・サポート箇所を段落番号と図面で示すこと。

 

プロンプトの作成に時間がとれない場合や、手っ取り早く従属クレーム案を検討したい場合などに使えると思います。

 

上記デモ用明細書は、スマートフォンのロック画面の解除方法に関する発明で、クレーム1は以下のようになっています。ほとんどの人が経験している操作だと思いますので、直感的に理解できると思います。

 

 

デモ用明細書のクレーム1-3の原文は以下の通りです。

1. A method of controlling an electronic device with a touch-sensitive display, comprising:
     detecting contact with the touch-sensitive display while the device is in a user interface lock state;
     moving an image corresponding to a user-interface 5 unlock state of the device in accordance with the contact;
     transitioning the device to the user-interface unlock state if the detected contact corresponds to a predefined gesture; and
     maintaining the device in the user-interface lock state if the detected contact does not correspond to the predefined gesture.


2. The method of claim 1, further comprising, while the device is in the user-interface lock state, preventing the device from performing a predefined set of actions in response to detecting any contact with the touch-sensitive display that does not correspond to the predefined gesture.


3. The method of claim 1, further comprising, while the device is in the user-interface lock state, displaying on the touch-sensitive display one or more visual cues of the predefined gesture.

 

これに対し、従属クレームの生成指示を入力すると 、私の環境 (Gemini 2.5 Pro) では以下のような従属クレームが出力されます。(紙面の都合でclaims 4-6 のみ転載)

 

 

なお、私は英文でプロンプトを入力しているため出力も英語ですが、日本語で指示を行うとクレームも日本語で出力されると思います。この場合、「英文で従属クレームX-Xを追加する」という指示を行うとともに、「英文クレームの後に日本語訳をつける」という指示を入れるとよいと思います。

 

クレーム数が少ない(10個以下)日本出願を基礎として米国出願をする際、米国代理人に翻訳文を送付する前に、当手法によって従属クレームを追加しておくとよいと思います。