Immunogen, Inc. v. Stewart (Fed. Cir. 2025/3/6)
判決文全文
https://www.cafc.uscourts.gov/opinions-orders/23-1762.OPINION.3-6-2025_2477708.pdf
卵巣がんや腹膜がんを治療する方法に関するクレーム(以下参照)において、クレームに記載された投与物質そのものが既知であり、クレームに記載された投与量(赤字部分)が新規であったところ、引例の組み合わせによって自明と判断されたケースになります。
クレームは以下の通りとなります。
U.S. Patent Application 14/509,809
1. A method for treating a human patient having an FOLR1-expressing ovarian cancer or cancer of the peritoneum comprising administering to the patient an immunoconjugate which binds to FOLR1 polypeptide,
wherein the immunoconjugate comprises an antibody or antigen-binding fragment thereof that comprises the variable light chain (VL) complementarity determining region (CDR)-1, VL CDR-2, VL CDR-3, variable heavy chain (VH) CDR-1, VH CDR-2, and VH CDR-3 of SEQ ID NOs: 6-9, 11, and 12, respectively, and a maytansinoid, and
wherein the immunoconjugate is administered at a dose of 6 milligrams (mg) per kilogram (kg) of adjusted ideal body weight (AIBW) of the patient.
(*immunoconjugate: 免疫抱合体、以下実施例に即してIMGN853)
引例は、(1) Adjusted Ideal Body Weight ではなく Total Body Weight を使用し、IMGN853 を投与することによって卵巣がんや腹膜がんを治療する方法 (同一出願人) や、(2) Adjusted Ideal Body Weight を使用して他の薬物を投与する方法などを開示していました。
出願人は、発明時点において、IMGN853 が眼毒性(角膜炎や目のかすみなどを引き起こす)を有することは知られていなかったため、この眼毒性に対処するという動機により引例を組み合わせることは不適切と主張していました。
これに対するCAFCの判断を以下に列挙しておきます。
- 「問題が当該技術分野で知られていない場合、その問題の解決策は自明ではない可能性がある」 Forest Lab’ys, LLC v. Sigmapharm Lab’ys, LLC (Fed. Cir. 2019))
- 一方で、未知の問題に対する解決策が常に自明でないとは限らない
- 「クレームの主題が自明であるかどうかを判断する際には、特許権者の特定の動機や公言した目的は関係がない。重要なのは、クレームの客観的な範囲である」KSR Int’l Co. v. Teleflex Inc. (2007)
- 「先行技術で認識されている問題やニーズを特定することは動機を証明する1つの方法であるが、動機の分析は発明者が認識している問題やニーズによって制限されるものではない」Janssen Pharms., Inc. v. Teva Pharms. USA, Inc. (Fed. Cir. 2024)