さらに続:選択要求 | The U.S. Patent Practice

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新年明けましてあめでとうございます。今年は積極的に活動する年にしたいと思います。引き続きよろしくお願いいたします。

 
2024年最後のエントリは選択要求についてでしたが、年初も最近受けた選択要求についてです。
 
案件が特定されないように書きますが、内容は以下の通りです。
 
・発明
ある媒体を一方向(A方向とする)に搬送し、媒体に画像を転写し、その後、媒体を逆方向(B方向)に搬送して位置合わせし、処理を完了する装置。ここまでで一連の動作が完結。クレームは、この装置の搬送機構に係る部品について列挙していますが、搬送動作の制御に関する記載(A, B方向への搬送など)は一切ない。
 
・選択要求
Species 1: 媒体をA方向に搬送する装置
Species 2: 媒体をB方向に搬送する装置
 
このようなケースでは、発明の実施形態としてどちらかを選択することはナンセンスです。そもそもクレームには搬送動作を規定する制御的な記載はありませんし、仮に搬送動作が列挙されるとしても、両方向への媒体の搬送が伴って初めて装置の動作として完了するためです。
 
このような場合の反論の方法として、MPEP 806.04(f) が使える可能性があります。
2 つ以上の実施形態がクレームされている場合、それらの実施形態が相互に排他的(mutually exclusive)であれば、単一の実施形態への制限の要件が適切である可能性があります。1 つのクレームが最初の実施形態について開示された制限を記載しているが 2 番目の実施形態種については記載しておらず、2 番目のクレームが 2 番目の実施形態についてのみ開示された制限を記載し、最初の実施形態については記載していない場合、異なる実施形態に対するクレームは相互に排他的です。これは、実施形態に限定されたクレーム間の制限を要求するには、クレームの範囲が重複してはならないと表現することもできます。
(Google Translate、一部筆者編集)
 
上の例では、Species 1, 2に記載された処理は連続して実施され、相互に排他的 (mutually exclusive) ではありません。
 
時々、理解に苦しむ選択要求がなされます。クレームの審査前(=発明をきちんと理解する前)に判断することに起因する問題と理解しています。私見ですが、限定要求と比べて、選択要求には反論の余地があることが多いと感じています。