Substitute Statement - 退職発明者のための代理署名 | The U.S. Patent Practice

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米国での特許実務に役立つ情報を発信しています。

良く問い合わせを受ける、プロセキューションにおける手続きについての質問について、FAQシリーズとしてまとめていきたいと思います。

 

本日は、発明者が退職したことにより連絡がとれず、宣誓書と譲渡証への署名が得られない場合のケースについての対応方法です。

 

まず、発明者は、USPTOのサイト(Forms for patent applications)にあるForm AIA/08のような宣誓書に署名をする必要があります。

 

また、日本企業で一般的な職務発明の場合、同じくUSPTOのサイト(Assignment Center)にあるサンプルのような譲渡証にも署名をする必要があります。

 

ここで、「~のような」と書いたのは、宣誓書と譲渡証とを一つにまとめたフォームが米国代理人や日本の代理人によって用意されていることが多いためです。

 

ここで、発明者が退職するなどして連絡が取れない場合について、MPEPは以下のようにガイドしています。

 

604 代用陳述書

特許規則1.64 宣誓書又は宣言書に代わる代用陳述書
(a) . . . 出願人は,

 発明者が死亡している,

 法的に無能力である,

 . . . 宣誓書又は宣言書の作成を拒絶する,又は

 真摯な努力にも拘らず,その居場所を見つけること若しくは連絡を取ることができない

場合は,特許規則1.63に基づく宣誓書又は宣言書に代わる代用陳述書を作成することができる。

(MPEP 604, 日本特許庁訳、改行・強調は筆者による)

 

すなわち、退職者に対して「真摯な努力」により連絡を試みるも、それが不成功に終わった場合、「代用陳述書」(Substitute Statement)を提出することができます。フォームは、上記のUSPTOのサイト(Forms for patent applications)にあります。

 

なお、この「真摯な努力」について、MPEPは以下のように補足しています。

USPTO宛に証拠を提出することが要求されないが,発明者の署名を確保するための企図に係る証拠は,出願人のファイルに保持されるべきである。

(同上)

 

従って、発明者へのコンタクトを試みたことが客観的にわかる態様で、何らかの記録を残しておくことが望ましいです。

 

その上で、

  1. (通常の宣誓書の代わりに)法人の代表者(代表または同等の権限を有する者、例えば部長)が署名した代用陳述書(Substitute Statement)と、
  2. (通常の譲渡証の代わりに)発明に係る権利が、退職済みの発明者から法人に移転されることが示されている文書(職務発明であることが示されている雇用契約書、発明提案書など)の英訳文

を提出することになります。

 

これらの書類は、必ずしも出願時に揃える必要はありませんが、出願後に提出すると手数料(1.16(f), 2025/1/19以降、$170 ($68 (small), $34 (micro))がかかりますので、可能であれば出願前に速やかに準備されることをお勧めいたします。