自明型ダブルパテント (Obviousness-type double patenting, ODP)との関係で、限定要求と継続出願/分割出願のプラクティスについて考えてみます。
日本発の米国出願を考える際に、コスト削減の観点から、限定要求を回避したいというご要望をお聞きすることがあります。後々、継続出願をするつもりがなく、一つの出願で完結したい場合には、この戦略で問題ないと思います。
一方、この出願が重要なもので、将来複数の子出願をする可能性が予期できるのであれば、むしろ限定要求が出されるようなクレームドラフティングを行うことが有益となる可能性があります。
どういうことかというと、限定要求が出されないまま子出願をすると、これは継続出願(continuation application)となります。この継続出願/子出願は、親出願に記載された主題のバリエーションと考えられ、権利化後も親特許との関係でODPのリスクを負い続けることになります。
一方、親出願の審査過程において限定要求が出されていれば、その子出願は分割出願 (divisional application)になりますので、この子出願はODPによって拒絶/無効とされなくなります(第121条、 "safe harbor" と呼ばれたりします)。
第121条 分割出願
1の出願によって2以上の独立した別個の発明がクレームされた場合は,長官は,当該出願をその内の1発明に限定すべき旨を要求することができる。他の発明が第120条の要件を満たす分割出願の主題とされた場合は,当該分割出願は,原出願に係る出願日の利益を受ける権原を有する。
本条に基づいて限定すべき旨を要求された出願又はその要求の結果としてなされた出願に対して付与された特許は,分割出願が他の出願に関する特許の付与前に行われている場合は,USPTOにおいても又は裁判所においても,分割出願に対して,又は原出願若しくはその何れかに基づいて付与された特許に対して引用されないものとする。特許の有効性は,長官が出願を1発明に限定させる要求をしなかったことを理由として問題にすることはできない。
(日本特許庁訳) https://www.jpo.go.jp/system/laws/gaikoku/document/mokuji/usa-tokkyo.pdf