DDR v. Priceline (Fed.Cir.24/12/9) Claim | The U.S. Patent Practice

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DDR Holdings, LLC v. Priceline.com LLC (Fed. Cir. 2024/12/9) 

 

クレームに記載された"merchants"により提供されるのは"goods"だけか、それとも"services"も含むか。仮出願の明細書には"products or services"と記載されていたが、非仮出願の明細書からは"services"の文言が削除されていたケースで、Incorporation by Referenceによる組み込みによっても、"services"を含むような解釈がなされなかった事案。

 

判決文原文:

https://cafc.uscourts.gov/opinions-orders/23-1176.OPINION.12-9-2024_2432361.pdf

 

特許適格性の問題で有名なDDR Holdings LLC v. Hotels.com L.P. (Fed. Cir. 2014) で争われた特許 7,818,399 号が改めて争点となりました。

 

解釈の争点となったクレームの文言は、以下の "commerce object" と "merchants" となります。

 

 "each of the first web pages displays at least one active link associated with a commerce object associated with a buying opportunity of a selected one of a plurality of merchants"

 
(i) "commerce object" は "goods" に加えて "services"を含むか
(ii) "merchants" は "goods" だけでなく "services" を販売する業者も含むか
 
ここで、'399特許の元となった仮出願では、(ここではgoodsではなく) "products" と "services" という文言が使用されていたものの、'399明細書では、"services" についての言及がなく、"products" と "goods" とが同じ意味で使用されていました。
 
地裁は、それぞれの解釈において "services" を除外する解釈をし、CAFCはこれに同意しました。理由は以下の通りとなります。
DDR は、特許明細書で "products or services" への言及を削除し、代わりに商人を "goods" の提供者としてのみ論じることを選択した。当業者であれば、仮出願と特許明細書の間のこの進展は、出願人が意図したクレーム用語の意味の進化を示すものであると理解できるだろう。
(Google Translate, 一部修正)
 
また、DDRは、仮出願の参照による組み込み (Incorporation by Reference) によって、仮出願と本出願との一つの文書が出来上がることにより、"services"に関する文言の削除はそもそも生じていないという主張を行っていましたが、CAFCは過去の判例を引用し、これを退けました。
ホスト特許が参照により別の特許を組み込む場合、「ホスト特許の開示は、参照により組み込まれた特許がホスト特許の請求項の解釈にどのような影響を与えるかを判断するための背景を提供する。」
Finjan LLC v. ESET, LLC, (Fed. Cir. 2022) 
(Google Translate)
先の出願で制限的な用語を使用した場合、たとえ先の特許が参照により組み込まれていたとしても、後の特許で意図的にその用語を削除した場合には、その用語は復活しない。
Modine Mfg. Co. v. U.S. Int’l Trade Comm’n, (Fed. Cir. 1996)   
(Google Translate)
 
パリ優先で日本出願を基礎として米国出願する際、基礎出願に記載されていた何らかの文言を削除した場合、Incorporation by Referenceにより、その削除された文言を後から復活させるように解釈することは難しくなる可能性があります。後続の出願で文言の定義を変える場合(特に何かを削除する場合)、細心の注意を払う必要があります。