VDPP v. Vizio (Fed.Cir. 22/3/25) MPF | The U.S. Patent Practice

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VDPP LLC v. Vizio, Inc.  (Fed. Cir. 2022/3/25)  MPF

 

当ブログの別エントリでご紹介した WSOU Investments LLC v. Google LLC (Fed. Cir. 2023/10/19) より前の判決で、こちらでは"processor"と"storage"を含む前提が means-plus-function形式の限定ではない (第112条(f)の適用なし)と判断されていたケースになります。

 

判決文原文:https://cafc.uscourts.gov/opinions-orders/21-2040.OPINION.3-25-2022_1926745.pdf

 

US Patent No. 9,699,444

1. An apparatus comprising:
   a storage adapted to:
      store one or more image frames;
and
   a processor adapted to:
      obtain a first image frame from a first video stream;

      expand the first image frame to generate a modified image frame, wherein the modified image frame
is different from the first image frame;
      generate a bridge frame, wherein the bridge frame is a non-solid color, wherein the bridge frame is
different from the first image frame and different from the modified image frame;
      blend the modified image frame with the bridge frame to generate a blended modified image frame; and
      display the blended modified image frame.

 
上記クレームでは、"means"という語が使用されていないため、112(f)が適用がないという推定が働きます。これに対し、当業者により明確な構造が理解されないことを示すことにより、推定を覆すことができます。
 
本事件では、Vizio社による主張が結論的で、推定を覆すのに不十分だと判断されました。残念ながら、storage, processorという用語そのものについてのCAFCによるお墨付きは与えられていません。
 
ただ、CAFCは、地裁が"processor"や"storage"が当業者に構成を表すという内部証拠、すなわち、明細書中の「"processor"と"storage"は既知である(well-known)」という記載を見落とした点を指摘しています。
 
US 10,021,380 (上記444特許の一部継続出願) , col. 62, ll. 48-52
 
この記載により、当業者であれば、"processor"や"storage"が機能を実行するための単なるブラックボックスであるとは理解しないだろう、と述べています。(このブラックボックスに関する件はZeroclick, LLC v. Apple Inc., (Fed. Cir. 2018)からの引用)
 
当業者が具体的なプロセッサの構成を理解できればよいのであれば、日本の明細書であれば大抵はCPUという用語が入っているでしょうし、これによって開示されたアルゴリズムを実装するコードが実行されることが書いてあれば、裁判になった時の内部証拠としては十分ではないかと思います。
 
問題は、クレームの文言上、どうするか、というところですが・・・。今のところ、私の現在の方針は以前のエントリと同様です。
筆者が扱う案件はこの"processor"をクレーム要素とするものも多いのですが、審査の過程では、第112条(f)の観点から"processor"が問題となったケースは現時点(2024/11/17)でもほとんどありません。個人的意見ですが、ソフトウェア開発者であれば、ふつう"processor"と聞いたらCPUのことを想起する気がしており、"processor"の使用を完全に封印するのはどうかなとも思います。いずれにしても、今後の判例や特許庁の審査動向をウォッチしておく必要があります。