コロナシリーズ⑨:防疫にも,縦深防御戦略(Elastic defense)が重要 | 下手の横好きの独白録

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毒説の日々。日本の村社会への批判,反日プロパガンダへの批判,反原子力への批判。

世界各国で,コロナ禍が猛威をふるっています。先月は日本のやり方をボロクソにけなしていながら,各国が自分の足元に火がついてから,評価し始めています。

 

日本のやり方は,いうならば,縦深防御(Elastic defense)戦略。縦深防御戦略というのは,もともと,軍事用語で,攻撃側の前進を遅らせることにより,反撃のための時間を稼くアプローチである。

 

この縦深防御戦略を,今回のコロナ禍に適用すると,以下のようになる。

① コロナウイルスに対する,最終的な反撃は,コロナウイルスワクチンを開発する以外にない。しかしながら,この開発には,1年以上時間を要する。

②ワクチン開発ための時間をどのようにして稼ぐか?

 (a)水際作戦

   ワクチンが開発されるまで,国内にウイルスを入れない。または,

   地域を封鎖してウイルスが広がらないように囲い込む。そのた  

   め,医療資源をPCR検査に重点的に配分する。

 (b)縦深防御

   国民全体の感染確率を下げ,ピークを遅くする。感染者の発生

   は,やむを得ない。医療資源は,死亡者の発生を可能な限り抑え

   ることに重点的に配分する。医療崩壊は何としても避け,ウイル

  ス感染に対する反撃力を温存する。

 

水際作戦は,損害を最小に食い止められるので,好まれることが多いです。しかしながら,歴史的にみると,この作戦は,成功したときは,非常に効果的ですが,齟齬が生じると,一気に防衛力が崩壊してしまいます。典型的な例は,フランスのがマジノ線の失敗。第二次大戦において,フランス軍がマジノ線を,新戦術であるドイツの機甲師団に突破され,一気に防衛力が崩壊してしまいました。また,旧帝国陸軍も,水際作戦に固執し,新戦術である艦砲射撃による上陸支援(従来は,艦船は陸上戦力と戦ってはならないとされていた)の後,米軍が上陸すると一気に占領されてしまいました(ただし,硫黄島と沖縄を除く)。

 

残念ながら,コロナ禍に呻吟している欧米各国は,水際作戦に固執したために,医療崩壊を起こし,一気に防衛力が崩壊してしまいました。常識的に考えれば,無症状な感染者に対するPCR検査の検出見逃し確率(偽陰性)は,30%~40%とされています。これでは,PCR検査による囲い込みは,実質的に不可能です。

 

他方,日本は,感染の発覚が早かったこともあり,早々に,水際作戦(囲い込み)による短期決戦を放棄し,長期持久戦(国民全体が感染確率を下げ,ピークを遅くする戦略)に移行しました。個人的な例を挙げると,知り合いから,メールで下記様なアドバイスがありました。

 

”2/16の礼拝も,「会堂に入る前に,手を消毒」,「聖水に注意」「平和の握手」なし、聖書朗読者にまで「マスクをしてどうぞ」という用心深さです。あなたもくれぐれもお気をつけて、タクシーには乗らないでね。もちろん、屋形船に乗ったり、病院へ行ったりしてはだめですよ。それから、日本ではマスクを売っていませんから、持ってこないといけません。マスクなしで出歩くと顰蹙を買うこのごろです”

 

と,教会の礼拝の参加まで,注意を受けるくらいです。

 

ただし,一般的に,縦深防御戦略は,防御側にも多大な負担を強います。今回のコロナ禍では,大規模イベントの自粛,外出の自粛,学校の休校などです。卒業式も中止,または,縮小&短縮を余儀なくされています。

 

今の日本では,何とか長期持久戦による縦深防御が機能しているようです。さらに,日本では,アビガンやシクソレニドによる,既存の薬による治療法を開発中。これも,ワクチンができるまでできるだけ死亡者の発生を抑制しようとするアプローチです。

 

結論としては,水際作戦が新戦術に対して脆かったように,未知のウイルスの防疫も,水際作戦は脆いようです。したがって,未知のウイルスの防疫には,縦深防御戦略(Elastic defense)が重要ということになります。