一連のエントリーでは、「警察と検察の関係」に基づいて「現職警察官の内部告発」の信憑性について議論してきました。まあ、最後はちょっと締まらない感じになってしまったのですが、次に述べる結論は断定できるので、一応の成果を上げたとしたいと思います。


下記の2つの命題(1)、(2)のいずれかは真である:


(1)瀬戸センセーが2008年11月16日に開催する「政治と宗教を考えるシンポジウム」第三弾の講演者乙骨正生先生は、矢野穂積氏が流したデマをそのまま著作に載せてしまういい加減なジャーナリストである。


(2)瀬戸センセーが「100%の確信をもって今回この事件を取り上げ、そして検察庁への捜査のやり直しを要望する理由」となった現職警察官の内部告発はガセネタである。


 まあ、どちらが「真」なのかは私には判断できません。本音としてはどちらも「真」だと思うのですが、そこまでは断定できませんので。私としてはどっちが「真」でもいいのですが、できれば、11月16日のシンポジウムにおいて、どちらが真なのかを瀬戸センセーと乙骨先生の間で話し合って頂きたいと思います。話し合いの結果を、まとめWikiに掲載しますので。


 11月16日のシンポジウムに参加される皆さん、意義あるシンポジウムになるといいですね。

 先のエントリーの続報です。


 先のエントリーの補足で紹介した、「検察が警察に再捜査を指示したという情報が、矢野穂積氏のデマである」という情報は、断定はできませんがどうも本当のようです。当方が情報源から得た話は、概略、次のとおりです。

 

 東村山署は、故朝木明代市議の自殺後も万引き事件のアリバイを証明せよと矢野市議らに言っていたらしいが、矢野市議がそれを拒否。でも嫌ですじゃ済まないから、東村山署は矢野市議に張り付いて「証明を~証明を~」と言い続けたらしい。で、矢野市議がその辺を理解して故意に捻じ曲げたのか、それとも本当にそう思い込んだのかは分からないが、いつしか「再捜査の指示があって警察がまた調べ始めた」という話にしてしまった。


 すみませんが、約束により情報源は明かせません。くどいようですが、断定はできませんので念のため。


 そういえば、11月16日の「「政治と宗教を考えるシンポジウム」第三弾に「怪死」を執筆された乙骨先生がいらっしゃるようですので、瀬戸センセー、白黒をはっきりさせるために、乙骨先生に直接聞いてみて頂けないでしょうか?そうすれば、こちらも色々調べる手間も省けるので手っ取り早いですし、瀬戸センセーとしても、「現職警察官の内部告発」の信憑性を確かめるいいチャンスじゃありませんか。


 まあ、何といいますか、東村山市民新聞、乙骨氏の著著「怪死」、及び矢野氏の著書「東村山の闇」は、どの一行も疑ってかからなければならないということが、身に染みて分かりました。これは、まとめWikiを作成する上で非常に参考になりました。まとめWikiでは、これらがソースである部分には特別な注を付けることにします。


 ちなみに、私がだまされた(かもしれない)「怪死」の記載部分は、以下の通りです。


 昨九五年十二月二十二日に朝木さんの死には「事件性はない」と断定、その捜査結果を記した報告書を東京地検八王子支部に送った東村山署だが、東京地検八王子支部の事件担当検事は、報告書の内容がずさんであることを理由に再捜査を指示したとの情報が今年三月に入って流れた。


 この情報は、三月二十日付『東村山市民新聞』第73号が報じたもの。「議員殺害事件 警察に捜査やり直しを指示」「あんな『報告書』は通用する方がおかしいのです」との見出しの記事には次のようにある。

「昨年十二月二十二日、東村山警察署は、『朝木議員殺害事件』で東京地検に、『事件性は薄い』とする『報告書』を提出、捜査を打ち切る発表をマスコミに行った。

 ところが、東京地検はこの東村山警察の『報告書』をうけとったが、疑問点があるので、再捜査を指示していたことが判った。

 しかも東村山警察は、『自信をもって、書類送検した』と豪語した昨年六月の『万引き』捏造事件についても、検察庁から再捜査を命じられている。

 東村山警察の刑事課長は、今年三月に、草の根・矢野議員に『捜査に協力して欲しい』とすがりつくような態度をとっている。

 フタをすることができるような『事件』ではない」


 矢野氏によれば、東村山署から矢野氏に再度の事情聴取の要請があったのは、三月五日のことだという。

「建築紛争の件があり、東村山署を訪問、警備課長と話をして、帰ろうとしたところ、鶴見刑事課長と白石課長補佐がドアの外で待ち構えていて、『矢野さん、ちょっと上に来てくれ』という。議会中で多忙だったし、アポイントもなしの突然の申し出だったこともあり、断ると、『なんとかお願いします』と、まるですがりつくような態度。仕方がないのでついていくと、白石課長補佐が、『これから調書を取るので、六月十九日の足どりについて話してほしい』と切り出してきた。七月十二日の書類送検前には、いくらでも時間があったのに、事情聴取をしようともせず、『矢野はアリバイ工作をしている』などと『潮』に話しているにもかかわらず、突然、話を聞きたいという。そこで、『万引きを苦にして自殺と報告したんだろう、なんでいまごろ話を聞きたいんだ』と質したら、言葉を濁したが、地検から再捜査しろといわれているような口ぶりだった」


 この東村山署の事情聴取の申し入れと、ほぼ時を同じくして矢野氏は、東京地検八王子支部の事件担当である信田昌男検事を取材した全国紙記者から、同検事は、東村山署の報告書には疑問があるので調べさせるというニュアンスの発言をしていた事実を知らされる。

 この全国紙の記者は、二月初旬に地検で信田検事と次席の千葉検事に取材を行っているが、その際、「十二月二十二日の東村山署の報告書には、疑問点がある」との話を聞いている。


「東村山署の動きと、担当検事の発言を根拠に、『東村山市民新聞』に『再捜査』との記事を掲載しました。これに対し東村山署は、『東村山市民新聞』が発行された翌二十一日に、刑事課長が電話をかけてきて、『こんなこと書かれては困る』と抗議。議会最終日の二十二日には、市役所の出口に刑事課長と新任の課長代理、そして刑事が待ち構えていて、『署にきてほしい』という。なんとか訂正させたいという感じでした」(矢野氏) 


 さて、本来は、前回のエントリーで関連のエントリーを終結するつもりだったのですが、この期に及んで、重要な情報を発見してしまいました。今回のエントリーでは、発見した情報を基にして、現職警察官の内部告発の信憑性について議論します。


 前述のように、現職警察官の内部告発には、

  「検察側からの圧力があって捜査を断念せざるを得なかった」
  「創価学会の信者と見られる検察官からの捜査打ち切りによって」
という内容が含まれています。しかしながら、これらの内容と、真っ向から対立する情報を発見してしまったのです。というのも、件の信田検事が、検察官送致の後に、転落死事件について前回のエントリーの一般的指揮権(刑事訴訟法第193条第2項)を行使して警察に再捜査を促しているんです


 具体的には、乙骨正生氏の著書「怪死」のpp.237-240によりますと、「東村山市民新聞」の第73号(平成8年3月20日発行)には、「議員殺害事件 検察庁、警察に捜査やり直しを指示」「あんな『報告書』は通用するほうがおかしいのです」という見出しの下、次のような記事が掲載されています:


 昨年12月22日、東村山警察署は、『朝木議員殺害事件』で東京地検に、『事件性は薄い』とする『報告書』を提出、捜査を打ち切る発表をマスコミに行った。

 ところが、東京地検はこの東村山警察の『報告書』をうけとったが、疑問点があるので、再捜査を指示していたことが判った。

 しかも東村山警察は、『自信をもって、書類送検した』と豪語した昨年六月の『万引き』捏造事件についても、検察庁から再捜査を命じられている。

 東村山警察の刑事課長は、今年三月に、草の根・矢野議員に『捜査に協力して欲しい』とすがりつくような態度をとっている。

 フタをすることができるような『事件』ではない。


 背景としては、この東村山市民新聞第73号は、矢野市議が、信田検事が創価学会員であることを知る前に発行されたものであることは知っていてよいと思います。東村山市民新聞第73号が平成8年3月20日発行であるのに対し、信田検事が創価学会員であることをスクープする週刊新潮は、平成8年4月26日号(注:矢野穂積著『東村山の闇』による。せと弘幸blog『日本よ何処へ』によると平成8年5月29日発売号)です。矢野市議は、東村山市民新聞第73号の発行時点では、信田検事が創価学会員であることを知らなかったので、信田検事が警察に再捜査を求めたという事実が自分に有利なことであり、積極的に公表すべきであると考えていたわけです。


 さて、上記の事実を前提として、現職警察官の内部告発との関係をみていきましょう。


 まず、検察官送致の前に検察(又は信田検事)が警察に圧力をかけて捜査をやめさせたのだとしたら、せっかく圧力をかけて「事件性が薄い」という報告書を作成させたのに、わざわざ、警察に再捜査を要求して問題を蒸し返したことになります。再捜査させずにそのままスルーしたら、不自然なことを何もせずに不起訴にできるんですよ。


 一方、検察官送致の後の捜査において検察が警察を圧力をかけたのなら、かの信田検事は、警察に再捜査を要求した後、捜査の進展がやばい方向になったから警察に圧力を加えて捜査をやめさせたってことになります。この場合でも、せっかく圧力をかける前に警察が事件性がないという報告書をあげているのに、わざわざ警察に再捜査させて問題を蒸し返す理由が見当たりません。


 このように、私は、現職警察官の内部告発の「検察側の圧力によって捜査を断念せざるを得なかった」という内容は、信田検事が、検察官送致の後に転落死事件について指揮権を行使して警察に再捜査させたという事実と真っ向から反していると思います。正体も不明な現職警察官の内部告発の内容が真実で、信田検事が指揮権を行使して警察に再捜査させたという情報が虚偽なのか、それとも、現職警察官の内部告発がガセネタなのか、どちらが適正であるのかは、自明だと思いますがね。


 というわけで、P2C的には、転落死事件についての現職警察官の内部告発の内容のうち、

  「検察側からの圧力があって捜査を断念せざるを得なかった」
  「創価学会の信者と見られる検察官からの捜査打ち切りによって」

というのは、うそ臭いと判断します。

 また、検察官送致の前の警察の捜査において信田検事が指揮をとったっていうのもガセだと断定してよいと思います。だって、検察官送致の後に、わざわざ警察に再捜査を命じているのですから。自分が指揮した捜査の再捜査を命じる人っていないでしょう。


 ところで、私は、検察官送致の後、矢野市議が信田検事が創価学会員であることを知る前に発行された東村山市民新聞の号には、信田検事がまじめに仕事をしていたという論拠がたくさん掲載されているのではないかと思っています。即ち、創価学会員である信田検事が捜査を捻じ曲げたと言うのがデマであることを、他ならぬ東村山市民新聞が証明しているのではないかと思ってます(もちろん、上記の第73号もその一つですよね)。もし、手元に東村山市民新聞を保存している方がいれば(以前、C.I.Lの荒井さん が取材した人は東村山市民新聞を保存してましたよね)、情報を下さい。

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 さて、これまでのエントリーでは、瀬戸センセーが朝木市議転落死事件に取り掛かってから、現職警察官の内部告発の存在を公表するまでの事象について分析してきました。本当は、次に、洋品店「表敬訪問」事件までの分析を行っていくつもりだったのですが、しばらくは「朝木市議万引き事件・転落死事件 まとめWiki 」の作成に注力したいと思います。というのも、ここまでの記事を書くときに、様々な情報が様々な場所に分散して存在するために非常に苦労したからです。例えば、万引き事件や転落死事件について「千葉副署長が捜査の指揮をとっていた」という事実を裏付ける裁判の判決を探しだすことだけでも、結構な苦労だったことを告白します。ですので、今後いい記事を書くために、まずは、情報の整理をしたいと考えています。


 このブログについては、しばらくは、リアルタイムに発生している事象について「軽く」突っ込みを入れることに使います。というのも、今までブログを作成していてストレスを感じていたことの一つは、リアルタイムでは瀬戸センセーは次々と色んなことをしでかしていて突っ込みを入れたいのに、内部告発について延々と書いていたせいで突っ込みを入れられなかったことです。過去の事象を振り返るのも大事ですが、リアルタイムの突っ込みもやってみたいので。


 そして、最後に、まとめWikiの作成について協力をお願いしたいと思います。まとめWikiの作成は、一人でやるにはあまりに大規模なプロジェクトです。折角、様々な方々が様々な資料を作成しておられますので、その転載についてご協力を頂ければ助かります。とりあえず、ブログを作成している方には、コメント欄やその他の方法で、転載の許可をお願いすると思いますので、宜しくおねがいします。また、自発的に、自分のブログの資料は転載を許可しますと宣言して頂ければ、非常に助かります。


【補足】

 この記事をアップしたあと、検察が警察に再捜査を指示したという情報が実は矢野穂積氏のデマであるらしいという情報を「ある筋」から入手しました(情報源は明かせません)。したがいまして、皆様方には、「現職警察官の内部告発」がガセネタであると断定することは早計であることをお知らせいたします。次のエントリーでも釈明いたします。


【補足2】

 上記の「検察が警察に再捜査を指示したという情報が、実は矢野穂積氏のデマであるらしいという情報」の信憑性を確認するのに多少時間がかかりそうです。少し猶予をください(11/12 22:15)。


 ちょっと疲れてきたのでこのブログの更新をすこしサボろうと思ってたら、「3羽の雀」さんのブログ「3羽の雀の日記」の11月8日のエントリー に、関連エントリが紹介されてしまったので、このトピックについて早く完結させる必要が出てきてしまいました。更にいうと、前回のエントリーで触れた朝木市議万引き事件・転落死事件 まとめWiki が「3羽の雀の日記」のリンクに載ってしまったので、少しずつでも作業を進めないと怒られてしまいそうです。「3羽の雀」さんは、このような手口で色んな人々を動かしているのでしょうか?


 本題に入ります。今回のエントリーの主題は、検察が警察に圧力をかけて転落死事件の捜査をやめさせるということがあり得るのか、ということです。まず、法律論からはじめます。下記は、刑事訴訟法第193条の条文です。


第193条 検察官は、その管轄区域により、司法警察職員に対し、その捜査に関し、必要な一般的指示をすることができる。この場合における指示は、捜査を適正にし、その他公訴の遂行を全うするために必要な事項に関する一般的な準則を定めることによつて行うものとする。

2 検察官は、その管轄区域により、司法警察職員に対し、捜査の協力を求めるため必要な一般的指揮をすることができる。

3 検察官は、自ら犯罪を捜査する場合において必要があるときは、司法警察職員を指揮して捜査の補助をさせることができる。

4 前3項の場合において、司法警察職員は、検察官の指示又は指揮に従わなければならない。


 刑事訴訟法第193条第1項は、「一般的指示権」と呼ばれる権限を規定しています。これは、書類の作成方法や、どのような事件を検察官送致に付すべきかを指示するものです。いわゆる「微罪処分」というのは、第1項の規定に従い、ある条件を満たすような事件については、検察官送致に付さなくてもよいという「準則」が定められていることを根拠として行われるます。朝木明代市議が「微罪処分」の判断基準を知っていたら、でっち上げだなんて言い出さなかったかもしれないですね・・・。もっとも、「微罪処分」の判断基準は未公表です。


 同条第2項は、「一般的指揮権」と呼ばれる権限を規定しています。これは、特定の事件について、もっと詳細に捜査すべきである旨を指揮するとか、複数の警察署が捜査を行うときの方針を定める、といった一般的な指揮をするための根拠となっています。


 同条第3項は、「具体的指揮権」と呼ばれる権限を規定しています。これは、検察官が特定の事件の特定の捜査において警察官に対して具体的な指揮を行う根拠となっています。


 同条第4項は、警察官が、上記の検察官の指示又は指揮に従う義務があることを規定しています。警察官が指示、指揮に従わない場合には、刑事訴訟法第194条の規定により、懲戒・罷免の訴追をすることができます。

 

 検察官が、具体的な事件の捜査において警察を指揮する際の根拠となるのは、刑事訴訟法第193条の第2項と第3項です。しかしながら、第2項、第3項の規定は、あくまで、「公判の提起・遂行を行う」という観点で設けられているものであることに留意すべきです。すなわち、第2項、第3項の規定により、検察は、公判の提起・遂行を行うための捜査を警察に行わせるという権限をもっています。しかし、これらの規定は、警察に捜査をやめさせるという権限にはなりません。法律上、警察が検察と独立して捜査の権限をもっていることは明らかなのです(刑事訴訟法第189条第2項)。


 実際問題としても、検察が警察に圧力をかけて捜査をやめさせるということは困難であると思われます。先のエントリーに述べましたように検察と警察とは独立した機関です。詳細に述べますと、検察庁は法務省の「特別な機関」であるのに対し、(東村山署が属する)警視庁は、東京都公安委員会の管理下にあると共に、(特定の所管事務について)警察庁の指揮監督下におかれます。警察庁は、国家公安委員会の管理下におかれています。法務省のトップは法務大臣であり、国家公安委員会のトップは国家公安委員会委員長(閣僚の一人)です。検察が警察に圧力をかけるというのは、法務大臣を飛び越えて、最高責任者が別の大臣である機関に圧力をかけるということです。そのような事実があったら、これは大変なことで、一大スクープになることは請け合いです。


 さらに言えば、検察庁は、慢性的に人不足であるため、捜査について警察に協力を仰がざるを得ないという実情もあります。例えば、平成20年の検察庁の定員は、検事2,578人(検事1,679人,副検事899人)、検事総長秘書官1人、検察事務官等9,062人の合計11,641人である一方、平成18年における検察の新規受理人員は、206万4,406人、公判請求された人員でも13万8,029人です。単純計算で、一人当たり年間200人近い人員の処遇を決めないといけないわけです。これはなかなかハードワークであるように思います。


 確かに、検察は、法律上は警察に対して優位な立場にあるかもしれません。しかしながら、実際の力関係としては、検察は、警察の協力がなければ充分な捜査ができません。このような実態なのに、警察に圧力をかけて捜査をやめさせることができるのでしょうか?


 さて、次のエントリーで、関連エントリーの最後としたいと思います。

 ここまで、内部告発について色々書いてきましたが、やはり、万引き事件や転落死事件について、情報を1箇所に集約する必要性を強く感じています。そこで、まとめWikiを立ち上げることにしました。


 朝木市議万引き事件・転落死事件 まとめWiki


 しばらくは、ブログよりもまとめWikiに注力したいと思いますので宜しくお願いします。

 ご要望があれば、コメント欄にお願いします。