裏銀座の朝  極上の景色。
 
 
 
【2019.05.25(土)-26(日)】
 
 
快晴予報が出たこの週末は
北アの稜線歩きを楽しみに裏銀座へ。
 
土曜に高瀬ダムからブナ立て尾根を上がり
野口五郎岳まで行ってテント泊。
 
日曜は水晶岳まで足を伸ばし
ピストンして高瀬ダムに戻ろうと計画。
 
但し、水晶岳まで行けるかどうかは
残雪の状況次第。
 
例年であればこの時期は殆ど雪は解け
ほぼ夏道が出ているとのことだが
今年は残雪量が多い。
 
踏み抜きやアイゼンの付け外しで時間をとられると
なかなか距離を伸ばすことができない。
 
とりあえず行けるところまで
ということで
土曜の朝、チビさんと七倉ダムへ向かった。
 
七倉ダムから高瀬ダムまでタクシーで上がり
7時過ぎに山行スタート。
 
先ずはブナ立て尾根を上がる。
 暑い! まるで夏
 
 
 
今回は山行装備を夏用に変えた。
 
ウェア、靴、テント、ザックなど
夏用装備は軽量コンパクトでいい。
 
アイゼン、ピッケル込みで
40Lザックで10kgで収まった。
裏銀座への入口
 
 
 
 
まるで真夏のような暑さの中
順調に標高を上げて行く。
 
例年であればこの時期は
ブナ立て尾根上部の少しだけ雪が残り
その他はほぼ夏道とのこと。
 
だが今年は尾根を半分ほど登ったあたりから
道が雪に覆われ始めた。
 
急傾斜のブナ立て尾根に雪が残ると
登るのは容易ではない。
 雪壁で踏み抜き木の枝にしがみつく
 
 
 
距離は短いながら
雪が壁となって道を塞いでいる。
 
アイゼン、ピッケルを出して雪壁を登った。
 
壁をひと登りすると再び夏道となったが
しばらく進むとまたもや雪の壁。
 
これを何度も繰り返していると
その後は全部雪道となった。
 滑って落ちたら、高瀬ダムからやり直し!
 
 
 
オール雪道の方が
アイゼンの付け外しがなくて楽なのだが
急傾斜の雪壁を上がるのは大変だった。
 
トレースもなくルート表示もないので
ルーファイしながら雪の傾斜を登らなければならない。
 
まるでバリエーションルート。
 
だけどそんな緊張感ある山行が面白かった。
 シャバシャバの雪なのでアイゼンの効きがイマイチ
 
 
 
 
雪壁登りに苦労しながらも
なんとか稜線まで登り詰めた。
 
烏帽子小屋やテン場周辺は
まだ雪がたっぷり残っていたが
テン場から先は稜線ルートには雪はなく
気持ち良く爽快な山行となった。
 
 
 
ブナ立て尾根を上がってきた苦労など
吹っ飛ばしてくれるほど極上の稜線歩き。
 
乾いた風、ハイマツの香り、強い日差しは
まるで夏山。
 
さすが裏銀座、景色も素晴らしい。
 
 
 
三つ岳への登りで再び雪壁が現れた。
ここは例年遅くまで雪が残るところ。
念のため再びアイゼン、ピッケルを出して
雪壁を登った。
 
 
 
三つ岳を過ぎると野口五郎、水晶が現れる。
ここも素晴らしい景色。
 
だが、水晶岳は想像以上に雪がたっぷり。
果たして、明日は水晶まで行けるのだろうか。
 残雪の水晶はバルタン星人に見えてしまう
 
 
 
明日、野口五郎から水晶岳をピストンし
ブナ立てを下って高瀬ダムまで戻るには
CTで12時間ほどかかる。
 
今日のブナ立て登攀では
アイゼンの付け外しやルーファイなどで時間を要し
ほぼCT通りの時間がかかった。
 
 
 
それに明日の下山の際、
あの雪壁を下るのは結構緊張する。
 
そういったことを含めて考えると
水晶岳まで行くのは時間的に厳しそうに感じられた。(←早い話、ビビってる)
 
 
 
とりあえず
今日の宿泊地の野口五郎岳まで行って
荷を下ろしてから明日の山行について考えることに。
 
 
 
野口五郎岳周辺は風の通り道で
強い風が吹くことが多い。
 
風が強ければ冬季小屋に泊まろうと考えていたが
最新の天気予報では
今日から明日にかけ快晴無風とのこと。
 
ならばテント泊だ。
 
ということで
今夜は野口五郎岳の山頂でテント泊することに。
 
 
 
山頂からは勿論360度ぐるりの大展望。
予報通り快晴無風、しかも誰もいない。
 
因みに今日はスタートから誰にも会う事なく
裏銀座は丸ごと我々だけの貸切。
 
 
残雪のブナ立てを上がってくるのは大変だったが
その見返りとして得られたこのシチュエーションは最高!
 
夏山のように気温は高いので
気持ち良く山頂テント泊ライフを楽しむことができた。
 
 
 
夕刻の景色もまた見事。
 
ここでこれだけの景色が望めるなら
明日は頑張って水晶まで行かなくてもいいか。
 
そんな風に思えてきた。(←やっぱビビってる)
 
 
 
朝はじっくり北アのモルゲンを楽しみ
その後のんびり稜線歩いて下山してもいい。
 
水晶岳へ行くかどうかは
明日の朝起きた時の気分で決めることにし
陽が落ちると同時に就寝。
 
 
 
 
翌朝は3時に起床。
 
素晴らしい星空をしばらく眺めた後
暖かいシュラフに再び潜り込んだ。
 
これでこの日の水晶岳登攀はなくなった。
 
たまにはのんびり山行でもいいよね。
と、二人で納得。
 
水晶岳へ行けなかったのは
野口五郎の山頂テント泊が快適過ぎたせい。
 標高2900mでの山頂テント泊、最高!
 
 
 
 
空が明るくなるにつれ
昨夜の大絶景の続きが始まった。
 
 
 
素晴らしいモルゲン。
 
 
 
燕岳の上に陽が昇り
鷲羽、水晶、薬師、立山の頂きを赤く染め始めた。
 3週前に登った鷲羽岳
 
モルゲンに染まるバルタン星人
 
 
 
野口五郎の山頂を右へ左へ動き回り
30分ほどモーニングショーを楽しんだ。
 
 
 
陽が上がるにつれ気温はどんどん上がり
気持ち良い朝となった。
 
これまでの雪山でのテント泊とは違い
寒くないのがいい。
 
 
 
槍ヶ岳ビューのテントの中で
パンとスープとコーヒーの朝食を取る。
 
 
 
今日も天気よし、展望よし
最高の一日になりそうだった。
 
ただ一つ気がかりなのは、ブナ立ての下り。
 
あの雪壁を下ることを考えると
落ち着かない。
 
ということで、朝食後に一休みした後
テントを撤収し下山開始。
 
 
 
とりあえず烏帽子小屋までは
極上の稜線歩きを再び楽しむ。
 
 
 
前方には立山や白馬
振り向けば槍に水晶。
 
ここはほんと最高の稜線。
 
 
 
のんびりじっくり
久しぶりに夏山っぽいアルプス山行を楽しんだ。
 
 
 
烏帽子小屋手前からは再び雪道。
アイゼンを装着し、いざブナ立てへ。
 
初っ端から厳しい下り。
傾斜がきついのでクライムダウンで。
ヤバイよヤバイよ~
 
 
 
気温が高く雪解けがどんどん進んでいるので
昨日登ってきたトレースも殆ど消えてしまっている。
 
なので、下りもルーファイしながら。
落ちるなよ~
 
 
 
上部は殆どクライムダウンでしのぎ
三角点ポイントまで下って一休み。
 
この先は夏道も多くなるが
時折現れる雪壁がいやらしい。
 
 
最後の雪壁を無事下り終え一安心。
後はひたすら夏道下り。
 
もう少しで登山口というところまで下って
この二日間で初めて人に会った。
 
といってもハイカーではなく
野口五郎小屋と烏帽子小屋の方々。
 
登山道を整備されていた。
こういうのってホント頭が下がる。
 
どちらの小屋のご主人からも
「小屋は潰れてなかった?」と聞かれた。
 
小屋や稜線上の雪の状況などを少し話した後
下山再開、そしてゴール。
 
二日間の裏銀座山行を終えた。
 
 
 
ブナ立ての雪壁には手を焼いたが
稜線に上がってからは
久しぶりに夏のアルプス山行を楽しめた。
 
結局のところこの二日間
ハイカーには全く会うことなく
静かな山行を思いっきり楽しむことができた。
 
残雪の裏銀座は素晴らしい。
 
 
この週末も
いい山行だった。
 
 
 
お次は
いずこの山へ...