北アルプス2600mの稜線でテント泊、
するも...
【2019.04.13(土)-14(日)】
今シーズン予定していた雪山山行の中で
最後に残ったのが北アの黒部五郎岳。
残雪の黒五には過去二度挑んでいる。
初めて挑んだ一昨年は一泊二日で登頂成功。
二度目の昨年は
山行スタート直後に氷で足を滑らせ転倒、
骨折敗退となった。
今年は三回目となる。
毎年挑みたくなるほど雪の黒五はいい。
北ノ俣の稜線で大絶景に囲まれテント泊、
翌朝はモルゲンを眺めながらの黒五登頂。
この時期ここをやる人は殆どおらず
二日間まるっきり貸切の山行となる。
北アを独占したかのような優越感や
奥深き山に踏み入った孤独感を味わえるところが魅力だ。
そんな黒五に今年も挑もうと
好天のチャンスをずっと待っていた。
そしてこの週末、
土曜の朝から日曜の午前中まで
まずまずの好天予報が出た。
日曜は昼から天気が崩れるとのことだが
午前中のうちに樹林帯まで戻ってくれば
午後は多少天気が崩れても問題はない。
ここがチャンスと見て山行決行。
金曜の夜に東京のチビさんの家を出発し
途中で仮眠、
土曜の朝5時半に飛騨市神岡の和佐府橋に到着。
準備をし6時に山行をスタートした。
1時間40分ほど雪の林道を歩き
ようやく飛越新道の登山口に到着。
まだまだ雪たっぷり、登山口でこの状態。
初めのうちはBCスキーヤーのトレースが付いていたが
1時間ほど進んだところでトレースは消え
そこから先はノートレース山行となった。
黒五の楽しみの一つは、前述のとおり
山の独占感を味わうことにある。
トレースがあると冒険的雰囲気が薄れ
楽しみが半減してしまう。
ノートレースだからこそ黒五は面白いのだ。
赤テープなどの道標は殆どない。
進む先を見定めながら
天気は抜群。絶好の登山日和だが
テント泊装備の荷は重いし行程は長いので大変。
こまめに休憩を取りながら歩き進んだ。
広々とした尾根、所々で展望が広がる。後ろは白山。
スタートしてから6時間が経ち
ようやく樹林帯を抜けると
目の前に北ノ俣の大斜面が広がった。
ここがこのルートの最大の難所。
既に16kgの荷を担いで6時間歩いている。
そんな疲労困憊の体で
標高差600mを一気に登り上げなければならない。
大斜面の下部には避難小屋があるが
現在は雪で崩壊する危険が有るため
使用できないとのこと。
仮に使用できても小屋には泊まらない。
あくまで稜線上でのテント泊にこだわる。
重荷を担いでの登りはきつかったが
この上では大絶景が待っている。
そう思えば辛い登りも頑張れた。
ゆっくり大斜面を登り
スタートしてから8時間50分で北ノ俣の稜線に到達。
少し風が強かったが
望み通りの大絶景が広がった。
疲れ果てていたし
風が強くてすぐに体が冷えてきたため
早くテントを設営しゆっくり休みたかった。
広々とした稜線の真ん中に
風除けのイグルー(もどき)を作ったのだが
これがとんでもなく重労働だった。
やっとの思いでテントを設営し
テントに入ったらノックダウン。
寒さと疲労でシュラフから出られない。
テントの外では北アの大絶景が広がってるのに
そんなことお構いなしに体を横たえた。
北アの景色は明日楽しむこととし
少し体が落ち着いたところで
簡単に夕飯を済ませ、即寝落ち。
数時間後、
風でテントがばたつく音で目が覚めた。
時刻はまだ23時。
やけに風が強い。
天気が崩れるのは明日の午後だったはず。
外を見ると思いっきりガス、しかも強風。
見なかったことにして、また眠りについた。
さらに数時間経ち、再び目が覚めた。
風は収まらず
それどころか、さらに強まり雪も降り始めた。
いわゆる暴風雪状態。
北アの2600mの稜線上での暴風雪。
こりゃヤバイか?
だが、晴れるとの予報を信じて
再び眠りにつく。
そして2時半に目覚ましが鳴って起床。
外は相変わらずの暴風雪。
こりゃあかん。
予定では3時に黒五を目指してスタートし
山頂でご来光を拝み
戻ってテントを撤収し
天気が崩れる昼までには樹林帯に逃げ込む計画だった。
が、既に天気は崩れてるし...
風だけならまだしも
横殴りの雪まで降っている状態では
流石に日の出前の真っ暗な稜線は歩けない。
とりあえず辺りが明るくなる5時まで
様子を見ることに。
でもって5時。
雪は止み、風も少し弱まった。
が、相変わらずガスに覆われ
真っ白けのホワイトアウト状態。
これで今回の黒五敗退が決まった。
2年連続の敗退。
というか、登頂どころか
ここからの下山さえも心配になってきた。
昼から天気が崩れるとの予報だったが
どうやら天気の崩れが早まったようだ。
風が少し弱まった今のうちに
下山したほうがよさそうだ。
ということで、
温かいシュラフから気合で抜け出し
撤収作業に取り掛かった。
ホント真っ白、何も見えん
さっと荷を片付け、30分後には下山開始。
だが、相変わらずのホワイトアウト状態。
下山する方向さえ分からない。
この辺りから登って来たような・・・
ホワイトアウトでは地図やコンパスは役に立たない。
頼りになるのはGPS。
GPSのおかげで、白闇の中
方角を見失うことなく進むことができた。
ちなみにGPSがなかったら
この広い大斜面を正確に下ることはまず不可能。
バリエーションや雪山山行では
GPSは必需品。
YAMAP地図を表示できるPRO TREKが役に立った。
30分程下ると
ガスが消え視界が戻った。
と同時に、どんどん天候が回復し
もうちょっと稜線で待ってたら
大絶景が望めたかも。
まあ、結果論だけど。
いずれにしろ、天候回復は一時的なもの。
いずれ天気は崩れる。
今のうちに下っておいたほうが良い。
などと
一生懸命自分の判断を正当化しつつ
山を降りていった。
が、振り向けば北アの大絶景。
早く下山したことをちょっと後悔。
やっちまった感をひしひし感じながら下山。
黒五、行けたんじゃね?
4時間かけて山を下り林道に降りた。
最後の長い林道を歩いていると
雨が降り始めた。
やはり早く降りてきて正解だったか、
なんて思いながら
今年の黒五チャレンジを終えた。
黒五には3年連続して挑み
これで1勝2敗。
北アの深部だけに登頂もなかなか難しい。
ルート的な難しさはないが、
北ア北部の山はこの時期天候が安定しない。
残雪期の週末に
高気圧がドンとやってくるチャンスが
今年はなかった。
また来年チャレンジしよう。
残雪期の黒部五郎
登頂できなかったけど、今年も面白かった。
★林道情報(2019.04.14時点)
〈和佐府橋~飛越トンネル〉
今年は雪解けが早く、和佐府橋から1km先まで車で入れた。
ただし、和佐府橋から2.5kmほどのところで崖崩れで林道が崩壊。
この先、林道の雪が解けても当分車での通行は無理そう。