誰も悪くないよ。 | ありがとう。大好き。~巨大色素性母斑と生きる~

ありがとう。大好き。~巨大色素性母斑と生きる~

私だけじゃない。あなただけじゃない。
みんなが笑顔でいられるために。前を向けるように。
情報を少しでも提供できたら。
みんなの共通点は「命」です。
さぁ、笑おう!

飛行機の座席を、3席並んでいる窓際と真ん中が空きの通路側で取ったのだが、いざ乗ってみると窓際に女性が座っておられる。


あぁ、暴れん坊まめが迷惑かけちゃうかも…。だってそのマダム、まめをチラッと見ただけでニコリともしなかったもん…。
もしかしたら、「えー、子供が座るの…。」って思っているかもしれない…。



私はドキドキした。


まめと一緒にいると、マダム達には結構な確率で「あらぁ~可愛いわねぇ~」と言っていただけるのだが、世の中はそんな子供=可愛いと思っている人ばかりじゃない。子供が苦手な人もいることくらい解っている。


1番前の座席が1列空いていたのが見えたので、CAさんに移動出来るか聞き、まめがあまりにも騒ぐようなら移動しようと思っていた。


まめは、大好きなイヤホンでしばらく遊び、大人しいわけでは決してないが、周りに迷惑をかける程でもなかったのでなんとかやり過ごせる予感。


飲み物タイムにまめの大好きなアップルジュースを頼み、飲み終わったら紙コップで遊んでいる。


これなら、イケる…。


そう思った瞬間、まめが紙コップを落としてしまった。


その紙コップは窓際に座っておられるマダムの足元へ…。



ベルトを外して拾おうとすると、マダムがサッと拾われ「空(から)ね。」と言われる。


え? ど、どういう意味だ?

「あ、はい。すみません。」


空ね。ちょうど来たCAさんに渡しておいてあげるわ。という意味だったようなのだが、その紙コップは今のまめのお気に入り度MAXなので取り上げられると泣いてしまう可能性もMAX。


私の頭上を、マダムの手からCAさんの手に渡ってしまったまめの宝物の紙コップ。

「あ、あの…それ、まだ…、あ…。…あぁーーー…。」

(↑私の心の声。)



まめも、一瞬「…あれ…?」な表情をしたが、なんとなく空気を読んだのかマダムに気を使ったのか泣かない。


ふぅ。助かった。



「これ、どうぞ。」


突如!

マダムが私とまめの目の前に何かを差し出された。



唐突過ぎて、なにがなんだか理解するまで時間がかかったのだが、これどうぞとおっしゃられているということは差し出された物をくださるということだろう。


「あ、有難うございます!」

お礼を言いつつ、いただいた物をよく見ると…。

チョコレートバー。

よく見なくても、チョコレートバー。

ウエハースとナッツ入りのチョコレートバー。

海外の映画で、おデブちゃんが口元べったべたにして食ってるタイプの、チョコレートバー。



「・・・・・・・・。」




…ハッ!!

今の私のリアクションは正直過ぎた。





まめにチョコレートはまだ食べさせられない。

ナッツも。


これ、どうしよう…。



と、思いっきりフリーズしていたら「私は食べないからいいの。」とおっしゃるマダム。


「え…。いいんですか、すみません、有難うございます…。ほら、まめ、有難うございますって言って!」


もう、まめはいただけた物がお菓子だと解っているので「オープン!オープン!」の連呼。


「まめちゃん、あのね、さっきおやつ食べたばかりでしょう?(←嘘) ちょっと時間をあけて飛行機が着いてからおうちまでの車で食べようね!(←嘘)」


「ノー!オープン!オープン!」


「まめちゃん、ほら、これ(持参したオモチャ)で遊ぼうよ!」


「ノーーー、オープン!オープン!」



ヤバい。

グズり始めた。

(因みにマダムは、ひと席空けてすぐ横にいらっしゃる。)


「オープンーーーー!オープンーーーー!(泣)」



いやいや、1歳児に、こんなゴリゴリのチョコレートバーはあげられないっしょ。


「オーーープーーーーンーーーーーー!
オーーープーーーーンーーーーーー(泣)!」



もう、マダムの方を見られない。

子供が泣いてるのになんであげないの?
必要以上に躾に厳しすぎるのもどうかと思うわよ、あげたらいいじゃない!って、絶対に思われている…気がする…。


勿論マダムは、まめがチョコレートをまだ食べられないなんてご存知なく、ましてやご本人もこのチョコレートバーがナッツ入りだなんて解っていなくて、いや、解っていたとしてもナッツをまだ食べられないことだって知るよしもなく、完全なる善意でくださったことには間違いなく…



食べさせるしか…


ない…



よね…。





このチョコレートバー、まめにじゃなくて「母親業お疲れ様!これ食べてパワーつけて!」って私にくださった…


わけ



ない



ですもんね…。




「…解った。(←かなりの決心) まめ、ひとくちね!さっきいっぱいおやつ食べたから(←嘘)、ちょっとだけよ!」


包装紙をちょっぴり破くと…




まさかの、チョコどっっろどろ!!!!





ヒィィィィーーーーーーー!!!!

(↑楳図かずお風の私が子供を抱っこして絶叫している絵。)



こりゃヤバい!

間違いなく、こりゃヤバい!!!!



ウエットティッシュ!

手口拭き!


ベルトを外して、前の座席の下に置いているカバンからティッシュを取り出そうとすると…


「ポーン!」


まーさーかーのー

ベルトサインーーーーー!!!


オーーーー、マーーーーイ!!!!!!!



「ちょ、まめ!さわっちゃダメよ!ママが、お口に入れてあげるから、まめはさわっちゃダメよ!(なぜなら、ティッシュが取り出せない上に、私が白を着ているから。)まって!まって!まだ!待ってて!!!」


私に両腕を拘束されながら、やっと、やっと、チョコレートバーのかけらを口に入れてもらえたまめ。

「んんんー!ヤミーーー!!!」




そうだろう、そうだろう。

↑この言葉、マダムはしみじみ笑顔で、私はさめざめ涙ながらに心の中で言っているよ。





この話の登場人物、誰ひとり悪くないだけに、なんともいえずぐったりした私でしたとさ…。







チョコレートバー、お前も悪くないよ。






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