手術室までは、エレベーターを乗り換えて、何にもない廊下を進み、壁一面が扉みたいな自動ドアを開けて入っていく。
私は、胸のドキドキがまめに伝わらないように、
「まめ!すっごいカッコいいんだけど!宇宙船に乗るみたいじゃない?今からちょーかっこいいお部屋に行きまーす!」
とか、ひたすら言い続けた。
ここは、私とまめにとってはディズニーランドで、スペースマウンテン乗り場までの道のりなのだ。
ただ、私は上手くドキドキを隠せずに「ちょー」「すっごい」「かっこいい」だけを繰り返していたけど。
何だか興味津々な感じで、周りの様子を見ているまめ。
手術室に入る前の控え室のような場所で少し待たされる。
看護師さん、先生方、ずらずらーっと勢揃い。
ヤバい、まめが圧倒される。
「まめ、見て!先生達、カッコいいね!いいですか?あれがプロでーす。私たちにとってのヒーローの姿でーす!」
「ほら、この大きな機械見て!何だろうね、カッコいいねー!」
…もう、カッコいいしか出てこない私のボキャブラリーの無さ。
看護師さんが渡してくれたおもちゃで楽しそうに遊ぶまめ。
この場所に恐怖感も無さそうだし、私も落ち着いてきた。
手術を受けられる人達が次々と入ってくる。
手術を受ける人達は、手術用のキャップと手術着。
あれ?
あの女の子…。
「○○ちゃん?」
昨日、まめの母斑を可愛い可愛いと言ってくれた女の子。
隣にいるお母さんが、あ、昨日の!という顔で会釈してくださった。
あぁ、あの子も手術だったんだ…。
昨日「私、幼稚園に行ってるんだよ!」って教えてくれた彼女。
手を振ってみたが昨日のように笑顔で応えてはくれない。
もう手術というものがどういうものなのか解っているのかな…。
ちゃんと解って、気持ちを手術に向けてここまで来たのかな…。
まめは、幼稚園生になってから受ける手術をどういう風に自分に言い聞かせて、ここにくるんだろうか…。
名前を呼ばれる。
「まめちゃん、イイコにしてますね。もうお預かりしていきますか?」
「いえ、一緒にいきます。」
さーあ、劇団まめママ、ここからが本番!!
オープニングテーマソングはスターウォーズを歌うつもりがうっかりジュラシックパークに。
「まめ、いいですか?これからママと一緒にとっても素敵な場所に行くんだよ。じゃあ、元気にパパに行って来まーすして!」
「まめ、行ってらっしゃーい!」
(劇団まめパパも必死。)
まめを抱っこしたまま、手術室まで一緒に行く手術用キャップを被った看護師さん達と
「ご紹介しまーす。宇宙船のキャビンアテンダントさんでーす。まめとママを素敵な旅に連れて行ってくださいまーす。宜しくお願いしまーす。給食当番じゃありませーん。」
「まめちゃん、宜しくねー。」
と、和気あいあい。
(劇団看護師さん有難うございました。)
手術室に着く。
麻酔科の先生と看護師さんが準備をされている。
「まめちゃん、初めてだね、宜しくねー。先生、ずっと外国にいて昨日日本に帰って来たんだよー。」
「えー、先生、お疲れなんじゃないですかー(笑)?」
(初対面なのにまぁまぁ失礼。)
「このくらい大丈夫、大丈夫(笑)!!」
「まめちゃん、世界で活躍する先生だよ、すっごぉーーい!よーく見ておくのよ!」
「泣かないね、えらいね。」
「この子、お医者さん志望なんです(笑)」
「そうなのー。お勉強大変だよー(笑)」
なんて、話している間に、
「じゃあ、カップをお口に当てるよー。そのままママの腕の中で眠って重くなりますよー。」
「まめ、先生が素敵な魔法かけてくれるってー。」
「魔法か、そうだね、魔法かけるよー。」
私まで麻酔を吸い込まないために
横を向いておくよう言われたので、まめがぐったりしていく様は見ていないし、だんだん重くなるというのもあまり感じられなかった。
あっという間にまめは寝たのだろう。
「はい、ではベッドに移動させます。」
先生達に抱き上げられてベッドに移動するまめを見ると、いつもの寝顔と何にも変わらないまめ。
その瞬間、私の涙腺は決壊した。
看護師さんに支えられ、
「お母さんのああいう言葉かけが本当に大切なんです。有難うございます。大丈夫ですからね。」とか、多分私よりも年下であろう若い看護師さんに背中なでなでしてもらってパパの元へ戻る。
パパの前では絶対泣くもんか。
どうせ私に優しい言葉なんてかけてくれないんだから。
よし。
今まめは私と宇宙旅行中!!
私はプレイルームに戻って、先輩ママ達とお話して時間を過ごそう!!
私の味方は、手術を乗り越えたママ達だ!!
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