北海道苫小牧市・あけの保育園での園庭環境を整えるワークショップ。

 

今回は2台のすべり台の座面交換などのメンテナンスがメインのワークショップでしたが、今回も子どもたちの様子から考えさせられることばかりでした。昨日見かけた二つの場、すべり台の板交換場所と高いブランコ、この2つで観たことを通して感じたことを綴ります。少し長くなりますが、ご容赦ください。

 

「やることが当たり前の感覚」

おとなたちが作業をしているところに多くの子どもたちがやって来ます。

何をやっているのだろう、とまずは寄って来て、そして一緒にその作業をやろうとする子の多いこと。

小さな子は途中で気が変わって、その場の面白さを見つけて遊び始めるのですが、これはこれでおもしろいわけです。

でも、時々気になってちらりちらりと様子を観ています。

たまに1歳児で、1時間くらい黙々と作業をしている子に出会うことがあります。

 

【ウッドロング・エコを塗る子たち】

 

さて、すべり台の板張替え場所では、土台の下の土を一緒になって掻い出す子、交換するビスをお椀に入れて持って廻る子など、自分の役割をその場を観察し、見つけて何かしらやるわけです。時折、自分のやりたい気持ち、他の子がその気持ちとアイディアを借りちゃおうとしたときなどにトラブルが起きますが、役割を果たそう!と思う気持ちにはびっくりします。

 

【ボウルにビスを集めていた子もひと段落、休憩中】

 

ところで、以前、宮崎県都城市の乙房こども園での様子をブログにアップしたのでリンクを以下に貼り付けます。

 

【参考:乙房こども園・5歳児の道普請】

 

ふと、マズローの「欲求の5段階説」を思い出しました。

これには、「生理的欲求」「安全の欲求」「社会的欲求」「承認欲求」「自己実現欲求」がありますが、このあけの保育園で観た子どもたちの様子は、後半の3つ、園という集団の場にいるからこそ叶う欲求なのだと思います。

 

いずれにしても、保育者が子どもの思い・行動を出来る限り尊重する姿勢があるからこそ観られる姿です。

 

まわりを意識して遊ぶ

座面の高いブランコに1歳児が寄ってきました。

上でブランコを漕いでいた子も気づいて少し気にしています。彼はだんだん近づいて来るこの子にもちろん気づいていて、万が一のことをおそらく考えていたのだと思います。しかし、そこに大きな子も付いてきていて、手を引いてここから離れさせようとしています。

座面が高く、1歳児のはるか頭の上を行ったり来たりするので基本的には当たることはないのですが、乗っている子も付き添ってきた子も、1歳児の「ここに行きたかった」思いも大事にしつつ、この子の身の安全にも気を配っているわけです。

 

 

なぜ、このような配慮ができるのでしょうか?

ひとはそもそも優しさを持っていると私は考えていて、特に自身よりも小さな子に対して「この子を守ろう」という意識が何もなければ働くと思っています(全国の園を歩きながら感じていること)。しかし、やってみたいことが見つかっていなくてモヤモヤしている、自分の気持ちを理解していくれるおとなが見つからない、など様々な理由からこころにゆとりを失っていくと、せっかくう持っているだろうその優しさが出せなくなっていきます。

 

このブランコ。座面が高く、小さな子が今回のように入って来てもぶつからない。地面はふわふわだから、乗り降りの時に手が滑って下に落ちたとしても大きなけがになる可能性は低い(マット等人工物は油断を生み易いので極力使いません)。そもそも、このブランコで楽しめる子は握力、筋力、腹筋などいろんな力が備わってきているから出来るわけで、ここに至るまでに判断力も含め、さまざまな能力が自身によって醸成されている。そしてこの場をつくったのは職員や保護者。このような理由などからおとなも近くにいる必要がありません。近くにいれば、つい子どもに声をかけてしまいますし、いろんな指示を出してしまい、子ども自身で学ぶ機会を奪ってしまう事にもなりかねません。だからと言って、ブランコ付近に近づくな、というわけではありません。遠目で観ていてはほしい・感じていてほしい。そこに気を向けておいてほしいと思っています。例えば、ブランコの後ろから誰かが来ても上で漕いでいる子はわかりません。もし手に虫取り網を持っていたら危ないことになります。また、スケーターなど金属製の乗り物をブランコ下などに置いて行った子がいたら、乗っている子は降りられません。そもそも、素敵なブランコライフストーリーを共有できません。おとなも乗っていいわけですから、自分自身のブランコライフもエンジョイしてほしいと思います。

「見ている」「見ていない」…。どうしてもマニュアル化してしまいがちですが、理想的には、今書いたような状況がいいかなと、今のわたしは思っています。しかし、入職したばかりのスタッフが多いなど、さまざまな理由もありますので、ここは弾力的にいろんな方法を相談しながら実践し、子どもたちの素敵な物語がここで生まれ続けていけるような状況を維持していってほしいなと思っています。

 

 

再度ブランコについてまとめますと、①寄って来た子とぶつかるケース、②乗り降りの時に失敗するケース、③失敗した時、硬い座面が自分に当たる、などがヒヤリハット・けがの可能性として想定できます。

このブランコは座面が高いので、小さな子が仮に入り込んでも、ぶつかる危険性はほとんどありません。

あるとすれば、足を座面にかけて逆立ち状態でこいでいる時くらいでしょうか?

地面はふわふわで登り降りの時のだいたいのミスをカバーしてくれます。座面も木で吊るしているものは鎖ではなくロープです。

 

上でブランコを漕いでいる子どもたちは、おとなが思う以上に下に気を配っています。周りの子も然り。

おとなの声掛けが多いと、子どもはそれに従うことに慣れ、自身での判断・行動を止めてしまいます。

 

このブランコの特質を理解していれば、多少距離を置いておとなは観ていられると思います。

 

 

それにしてもやっぱりすごいな、子どもたち。

でも、それが出せる環境を創造しようとしているのはおとな。

両者あってのものですね。

 

 

おしまい。

 

【あけの保育園関係YouTube動画リンク紹介(制作マイナビ)】