症例を交えて『舌痛症』と呼ばれる現代社会が生み出した【病】について書きます。
40代女性
【主訴】
舌痛症と診断
(ピリピリ・違和感)
&
ドライマウス
【問診】
『舌痛症』と診断されて2年が経過。
ドライマウスは今年から。唾液分泌が悪く、口が乾燥するという症状が続いている。
シェーグレン症候群と診断は受けていない。
口腔外科や歯医者、病院を回る。舌の症状はドライマウスが影響しているのでは?と言われている。
舌は右の奥・側面にピリピリ感。違和感がある。
ドライマウスが深刻で、口の中が常に乾いている状態。
舌の症状は波があり、最近は特に症状が強く出ている。
【視診・触診】
ストレートネック(++)
多汗(++)
皮脂(++)
頚部の緊張(+++)
顎関節周辺の緊張(+++)
【治療方針】
頚部緊張による交感神経緊張
顎関節周囲のトリガーポイントによる唾液分泌異常と判断し治療を行った。
【治療部位】
①咀嚼筋(咬筋・外側翼突筋・内側翼突筋)
②頭半棘筋
③後頭下筋群
④胸鎖乳突筋
【治療結果】
初回時から舌の違和感は消失。
3回目にはドライマウス症状も改善し、2年間悩んでいた口腔内の症状は改善した。
時々波があるそうで、現在は月に一度くらいの頻度(遠方の為)で治療メンテは継続している。
【舌痛症・ドライマウスなどの口腔内症状は首コリと関わっている】
数年前まで『舌痛症』はメジャーな【病】ではありませんでした。
最近よく聞くようになってきた理由も、やはり現代社会が生み出した『首コリ』に隠されています。
咀嚼筋(そしゃくきん)という筋肉があります。
これは噛む筋肉で、①咬筋②側頭筋③外側翼突筋④内側翼突筋の総称です。
いわゆる『食いしばり』が増えているのも首コリに隠されており、皆さん『食いしばるから首が凝る』と思っていますが実は逆で『首が凝っているから食いしばる』が正しいのです。
マウスピースを処方されることも多いかと思うのですが、マウスピースは『歯を守る為のもの』なので、逆に食いしばれてしまいます。マウスピースが割れた…という人も少なくありません。
つまり、食いしばれてしまうから咀嚼筋が余計にトリガーポイント形成して悪循環が起こります。
これが『盲点』です。
更に、首コリがあると副交感神経を圧迫するので身体が交感神経緊張に傾きます。
唾液には交感神経性の唾液(ネバネバ)と副交感神経性の唾液(サラサラ)があります。
寝ている時にヨダレが垂れるのはサラサラだからです。
この青い部位は咬筋と呼ばれる筋肉の付着部です。
下顎骨にベッタリと付着しています。
この部位にトリガーが出来ると今回の様に口腔内の症状が出やすくなります。
鍼先のコントロールで、この様に咬筋付着部を削ぎます。
トリガーポイントは『異構造接合部』に出来やすい為、この様に骨に筋が付着するところを削ぎます。
削ぎがポイントです。
頬骨付着部もこの様に削ぎ打ちする事もあります。
他、顎関節の前の穴を通して外側翼突筋・内側翼突筋の治療も必須です。
首から上の症状はとにかく生活の質を下げます。
現代社会が生み出す【病】は沢山あります。
その原因の多くは『首コリ』が関わっているのです。