コロナの影響で個人事業者が保証協会付き融資の返済が困難になったとき、都の条例で債務整理が可能 | 尾崎あや子オフィシャルブログ「東へ!西へ!尾崎あや子の活動報告」Powered by Ameba

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 10月21日に、行われた2021年度各会計決算特別委員会・第三分科会「産業労協局 質疑」の一部を掲載します。

 コロナの影響で個人事業者が借入金の返済が困難になったとき、自己破産ではなく、都の条例に基づいて、債務整理ができることが明らかになりました。大変、重要な答弁ですが、都は私の質問にハッキリと答えない場面もありましたが、個人事業者にとって朗報です。

 

 

 

 

〇尾崎委員 2021年度は、東京の新型コロナの感染拡大があらゆる業種に影響があり、中小企業・小規模企業の経営は深刻な状況が続きました。

 「中小企業・小規模企業白書」に掲載されている、新型コロナ感染症による企業活動への影響についての東京商工リサーチのアンケート調査によると、2022年2月時点でも「影響が継続している」が73.8%という結果になっています。一方「影響はない」と答えたのは、わずか5.8%、「影響が出たが、すぐに収束した」が6.7%でした。

 このアンケート調査でも、コロナ感染拡大の影響の深刻さがわかります。

 

 同じく「中小企業・小規模企業白書」では、コロナ禍で、「積極的な融資が行われている状況がうかがえる」と述べています。同時に宿泊業をはじめとする各業種において、「借入金の返済能力が低下している可能性がうかがえる」とものべており、これらのことから、今後も中小企業・小規模企業の経営は厳しいということが見えてきました。

 

今の物価高騰や円安などによって借入金の返済の見通しが厳しくなっていることも、今後大きく出てくるのではないかと心配です。そして、ほとんどの中小業者の方たちの返済はこれからということです。

このことから、長期的に中小業者に東京都が寄り添って支援をしていくことが、ますます重要になっていると思います。

 新型コロナ感染症が地域の経済を支える中小業者にとって、経営者の努力だけではなんともならない問題であり、新型コロナの影響は「災害」と言っても言いすぎではないと思います。都は、「災害」ととらえて新たな支援策を実施すべきですが、どうですか。

 

〇戸井崎金融部長 コロナ禍の影響を受けた事業者の経営を下支えするため、制度融資によりまして金融機関が融資を行った上で、経営改善を一定期間サポートすることといたしました。

 

〇尾崎委員 引き続き、中小業者のみなさんは厳しい状況が続きます。コロナ禍前の状況に回復するには、長くかかるのではないかと心配しています。コロナの影響で廃業しないための支援策の拡充を求めるものです。

 

 次に「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」を新型コロナ感染症に適用する場合の特則について伺います。

 2020年10月30日、一般社団法人東日本大震災・自然災害被災者債務整理ガイドライン運営機関を事務局とする「自然災害による被災者のガイドライン研究会」において、「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」を新型コロナ感染症に適用する場合の特則と、その運用に当たっての実務上の指針と、Q&Aが公表されました。

 

 これは、新型コロナ感染症の影響を受けたことによって、住宅ローン、住宅リフォームローンや事業性ローン等の本特則における対象債務を弁済できなくなった個人事業者を含む、個人の債務者であって、破産手続き等の法的倒産手続きの要件に該当することになった債務者が、法的倒産手続きによらず、特定調停手続きを活用した債務整理を円滑に進めるための準則として策定するものだと説明しています。

 

 一言でいうと、法的倒産手続きではなく、最終的には債務者が特定調停を申し立て債権者との間で調停が成立すれば、終了するというものです。いわゆるブラックリストには掲載されないので、事業を再建したいと考える人や、再チャレンジしたいと考える人を応援することができるというものです。

 

このような内容で、金融庁は、「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」を新型コロナ感染症に適用する場合の特則を公表しました。都はこの特則について、どのように受け止めていますか。この特則によって、どのような効果があるのか伺います。

 

〇戸井崎金融部長 個人事業主が融資を受けて、その債務を返済しながら、経営を継続する取組を下支えすることは重要だというふうに考えております。

 

〇尾崎委員 東京都内では、開始から約1年半で322件の申請がされたと弁護士の方たちから聞いています。

金融庁の説明では、今年の6月末時点で、弁護士などの登録支援専門家に委嘱した件数はコロナ案件で1971件、うち手続き中が774件、そのうち、特定調停の申し立てにいたったのは56件ということでした。また、債券整理成立件数はコロナ案件で188件ということです。

  

 私は、自然災害債務整理ガイドラインの新型コロナに適用する場合の特則は大変、重要な取組だと思います。法的倒産手続き以外の道があるということだけでも、どれほど、中小事業者に希望を与えるか、生きる希望につながると感じます。

ガイドラインは、個人事業主の経済的再生・再チャレンジを後押しするための制度として運用されていますが、個人事業主の多くは、地元の金融機関などから保証協会付きの制度融資の借り入れを行っているのが現状です。

 弁護士の方からは、「個人事業主の方は、コロナで大変な事態となっており、個人の住宅ローンなどは話し合いが整っても、保証協会の保証がついている制度融資を借りている場合、ガイドラインによる債務整理ができなくなり破産に追い込まれてしまう。これでは、コロナの感染拡大の被災者といえる個人事業主の経済的再生・再チャレンジが著しく困難な状況になっている。改善が必要だ」との声が寄せられています。

 そして、弁護士の方は、「各都道府県が対応しないことになると、破産を余儀なくされ、ガイドラインの趣旨はなくなってしまうということになる」と話しています。

 

 実は、熊本県では、熊本地震時に「熊本県中小企業融資制度の損失補償に係る回収給付金を受け取る権利に関する条例」を改正しています。債権放棄することができるように変更したことは知っていますか。

 

〇戸井崎金融部長 熊本県の対応につきましては承知しております。

 

〇尾崎委員 熊本県の対応も承知しているということでした。県が本気になれば、できるということです。

 

 弁護士の方からは、「新型コロナ感染症の影響を受けたことによる個人事業者の債務整理について、整理の対象となる債務は、金融機関からの借入ですが、個人事業者の場合の相当の割合で、債務のなかに東京信用保証協会の制度融資を利用した借入が存在しているところ、東京信用保証協会では、都の補助事業との関係で、元金を減免することに同意できないとの取り扱いがなされている。具体的には、都の条例「東京都が東京信用保証協会に対し交付する補助金に係る回収納付金を受け取る権利の放棄に関する条例」の解釈・運用等から免除できないとされている」。そして、「今のままでは、ガイドラインの運用においては、全債権者の合意が必要であるため、東京信用保証協会が同意しないと、ガイドラインに基づく特定調停が成立できない。そうなれば、債務者である中小事業者は、全額の返済を行うか、破産するかの選択しか残さないことになる。結局、破産を選ばざるを得ない状況に陥っているんだ」と、話しています。

 

 そこで、確認したいのですが、国は、2022年1月11日付けで、内閣府・金融庁・総務省・中小企業庁より、各都道府県に対し、制度融資損失補償条例の改正・整備に関する協力依頼の通知が出されたと聞いていますが、東京都はこの通知を受け取り、どのような議論を行ったのですか。

 

〇戸井崎禁輸部長 都では、「東京都が東京信用保証協会に対し交付する補助金に係る回収納付金を受け取る権利の放棄に関する条例」を既に制定しております。

 

〇尾崎委員 ただ今のご答弁では、「既に条例がある」ということです。これだけでは、理解できないので、大事なことなので確認します。

 私は、東京都はこの通知を受け取ってどのような議論を行ったのかと聞いたのです。これだけの答弁では理解できないので、大事なことなので確認したいと思います。

 いま、ご答弁があった「東京都が東京信用保証協会に対し交付する補助金に係る回収納付金を受け取る権利の放棄に関する条例」に基づいて、東京信用保証協会付きの融資であっても、条例の目的にある「事業の再生の促進を図る」ことに資するなら、保証協会付きの融資の債権放棄もできるということで、いいんですね。そういうことでいいのかどうか。お答え下さい。また、これを活用して実績があるのかど伺います。

 

〇戸井崎金融部長 都では「東京都が東京信用保証協会に対し交付する補助金に係る回収納付金を受け取る権利の放棄に関する条例」に基づきまして、中小企業者等の事業の再生を促進しております。

 

〇尾崎委員 促進しておりますということは、この条例で東京都信用保証協会の保証づきの融資が債権放棄できるということですね。イエスかノーでお答えください。

 

〇戸井崎金融部長 繰り返しになりますが、都では、「東京都が東京信用保証協会に対し交付する補助金に係る回収納付金を受け取る権利の放棄に関する条例」に基づきまして、中小企業者等の事業の再生を促進しております。

 

〇尾崎委員 私が聞きたいことにきちんと答えていただきたいんですけれども、できるということでいいですね。いいんですね。実績はどうでしょうか。

 

〇戸井崎金融部長 実積はございます。

 

〇尾崎委員 ございます?

 

〇戸井崎金融部長 はい。

 

〇尾崎委員 すみません。ちょっと語尾が最後まできちんと聞こえなかったものですから失礼しました。

実績はあるということで、大変重要な答弁だと思います。この答弁を中小事業者や弁護士が聞いたら、どれほど喜ぶか。そして、どれほど明日への希望につながるか。中小事業者の安堵する姿が目に浮かびます。

 しかし、条例を何度読んでも、理解しにくい内容です。今回のガイドラインに基づいて新型コロナ感染拡大の影響を受けて借入金返済が困難になっている個人事業者にも債権放棄ができるとわかりやすい条例に改正すべきだと強く要望するものです。

 

 先ほど、弁護士の方たちの発言を紹介しましたが、法律の専門家である弁護士も、都の条例で保証協会の債権放棄ができるとは理解できない状況であり、実際に、特定調停の準備の中で、東京信用保証協会そのものが、都の条例、今回のガイドラインにもとづく新型コロナ感染拡大のなかでの債権放棄について理解していないということが明らかです。

 

 制度融資は都民の税金が原資に運用されているわけですから、中小事業者が法的破産手続きを行えば、都の回収額は少なくなるわけです。特定調停できちんと債務整理を行うことができれば、都の回収額は破産よりも多くなります。都としてもその方が有利になると思います。

 

 都としても、東京信用保証協会はもちろん、中小事業者に対しても理解できるように丁寧にお知らせすることが必要です。

 大事なことなので、周知に力を入れていただくよう強く求めておきます。