幼児期に、聴音、ソルフェージュ等の専門教育を受けた方が多いです。
5~6歳頃にピアノを習い始め、並行してこれらのレッスンを受けます。
例えば、
先生がピアノを弾くのを聴きながら1小節遅れて歌う。
(聴きながら、同時に記憶して歌う能力の形成)
右手で3拍子、左手で2拍子を打ち合図で交代する。
(異なるテンポ・拍子を同時に別々に処理する能力の形成)
右手で3連、左手で2連を打ち、合図で交代する等々
(違うニュアンスのリズムを同時に処理する能力)
今は昔、某音大附属幼児教室を見学した私の母が言うには・・・
「そりゃ、たまげたの何のって!」




幼児期に専門教育を受けた方と、一般の方は思考法に違いが生じます。
特殊な脳の回路が形成されます。
同時に複雑な事を、切れ目なく連続して処理する能力です。
ピアノの先生は専門教育を受けた方が多く、生徒さんの多くはそうではありません。
思考法に、大きな違いがあります。
バッハ等の対位法の曲、とりあえず弾くだけでも、本来大変難しいです。
始末の悪い事に、幼児教育を受けた先生には、それ程難しくないのです。
例えばバッハのインヴェンション。
本来は右は右、左は左、と同時に歌えなくてはなりません。
2つの声が同時にそれぞれ歌い、たまたま合う所で合うのです。
そこで合わせる、という発想ではありません。
けれどそこで理想論を振りかざすだけでは、手がつけられません。
まず手をつけられる様、生徒さんの思考法に合わせる必要があります。
時に、右手のこの音と、左手のこの音を一緒に弾く・・・でも良いのです。
左右、同時に切れ目なくきちんと歌うのは大変困難です。
ある時は右手を歌い、ある時は左手を歌い、行ったり来たり。
歌が途切れても、良いのです。
要所を押さえ、両方歌えている様に聴こえれば良いのです。
そういうアドヴァイスも必要です。
ショパン等でも、右手が4連や5連で歌い、左手は3連のリズム
よくあります。
それぞれが歌った結果として合います。合わせるという発想は間違いです。
けれど一般の方は、それでは手がつけられません。
こっそり合わせつつ、自然に歌えている様に聴かせる・・・
それで良いのです。
只、脳出欠等で脳の機能が失われても、リハビリで新しい神経回路を作る事ができます。
時間と手間をかければ、出来る様になると思います。
只、現実、練習時間が取れません。
理想に向かいつつ、不足している事を上手に妥協し、楽しく続ける事が大切です。
バッハを弾きたい、ショパンを弾きたい!
ご自身がきちんと弾ける先生でないと教えられません。
でもそういう先生と生徒さんの間に、大きな溝があります。
言語化して説明し、聴き手の耳を騙せる能力が先生には必要です。
「良い演奏家=良い先生」ではありません。
「良い演奏家の中に良い先生がいる」のです。